ライブドア事件の概要!ホリエモンの逮捕・野口氏の死の真相まとめ

IT時代の寵児と謳われながら逮捕され、実刑判決受けたホリエモンこと堀江貴文元ライブドア社長。大事件には必ずついて回る不審な自殺者も出したライブドア事件ですが、事件の内容を詳しく知る人は少ないようです。経済用語が頻出し分かりにくいライブドア事件を徹底解明。

ライブドア事件の概要!ホリエモンの逮捕・野口氏の死の真相まとめのイメージ

目次

  1. 1ライブドア事件とは?結局どんな事件だったの?
  2. 2TVなどメディア報道でも分かりづらかったライブドア事件
  3. 3ライブドア社はどんな会社?
  4. 4なぜ堀江貴文(ホリエモン)はライブドア事件で逮捕されの?
  5. 5ライブドア事件の真相!わかりやすく解説
  6. 6ライブドア事件の裁判!7人と2法人に有罪判決!
  7. 7ライブドア事件後の野口英昭の死因は?
  8. 8首謀者は誰だったのか
  9. 9ライブドア事件の問題点
  10. 10ライブドア事件の教訓
  11. 11その後の堀江貴文

ライブドア事件とは?結局どんな事件だったの?

ライブドア社の社長「ホリエモン」こと堀江貴文が、宮内取締役兼最高財務責任者(CFO)ほか3人の社員およびライブドアの会計監査をおこなっていた2人の会計士と共謀し、証券取引法に違反した罪で逮捕、起訴され、有罪判決を受けた事件です。

法人としてのライブドアとライブドアマーケティングも同じく証券取引法違反の罪で起訴され、有罪判決が下されました。

ライブドア社長の堀江貴文以外の6人は罪を認めましたが、堀江貴文は「何も悪いことはやっていない」と主張し続けています。

ライブドア事件の真相を知るキーマンだったライブドアファイナンス元社長で、エイチ・エス証券取締役野口英昭氏の不審な死も含め、事件発覚から10年以上がたった今も、真相が全て解明されたとは言い切れません。

TVなどメディア報道でも分かりづらかったライブドア事件

テレビや雑誌で顔を見ない日は無いくらい露出の高かったホリエモン。キーマンである野口氏の突然の死。当然メディアでもライブドア事件は大々的に取り上げられました。

ライブドア事件の概要は、自社株を売って得た儲けを会社の利益として計上し、業績がいいかのように装ってライブドアの株価を釣り上げたというものです。

ライブドア事件の中身は実に複雑です。経済用語や会計ルール、マネーロンダリングのようにいくつもの関連会社を経由して還元される現金の流れは、専門知識を持たない一般人が理解するには難解に過ぎはました。

ライブドアの株式交換で企業買収を繰り返す成長戦略は、どこまでが合法でどこからが違法なのかも不透明で、野口氏の死の真相と合わせて、事件の真相を知ろうとすればするほど混迷は深まるばかりでした。

ライブドア社はどんな会社?

堀江貴文は大学在学中の1996年4月、2人の仲間とともにインターネットサービスを手掛ける会社「オン・ザ・エッヂ」を立ち上げ、HP作成やプログラミングで業績を伸ばしました。

2002年、16億円の負債を抱え、民事再生手続きを始めた無料プロバイダー事業会社「ライブドア」を買収します。当初会名は「オン・ザ・エッヂ」から「エッヂ」になっていましたが、2004年2月、圧倒的な知名度がある「ライブドア」に変更しました。

一介のウェブ制作会社だった「エッヂ」は「ライブドア」を手に入れることでインターネット通信事業で躍進し、ポータルサイト運営も手掛けるようになります。

同時に堀江貴文は、プロ野球球団近鉄バファローズの買収を発表したり、新球団設立に名乗りを上げたり、フジテレビの主導権を握ることを目的に日本放送株を買い漁ったり、衆議院選挙に出馬したりと売名行為とも揶揄されるほどの活躍ぶりを発揮します。

ライブドアと堀江貴文の知名度は一気に上がり、タレント「ホリエモン」が誕生しました。すっかり人気者になった堀江貴文は、本業そっちのけでタレント活動にいそしみ、IT業界の風雲児はマスコミの寵児となりました。

生活も派手で、モデルやコンパニオンを集めた合コン三昧は有名です。この頃ライブドアの収益を支えていたのはインターネット事業ではなく、企業買収を専門にし、その後のライブドアの運命を握る、宮内CFO率いるファイナンス部門でした。

ライブドア社の社風

創業メンバーは2000年の株式上場の前にすでに会社を去っていたので、会社はほぼ堀江貴文のワンマン経営でした。そんなライブドアを財務の面から支えていたのが、宮内亮治氏と野口英昭氏でした。

宮内氏は税理士としてライブドア上場をサポートしつつ1999年、ライブドアにCFOとして迎え入れられました。野口氏は宮内CFOに誘われて一度はライブドアに入りましたが堀江貴文とそりが合わず、その後、エイチ・エス証券に移っていました。

事件が起こったとき、ライブドアは創業10年にも満たない若い会社でしたが、宮内氏と野口氏の編み出したアクロバティックな企業買収策で株価はうなぎのぼり、社長の堀江貴文はホリエモンと呼ばれてメディアで引っ張りだことまさにいけいけどんどんでした。

ライブドアにはITという新しい技術を武器に時代を切り開こうとする堀江貴文と自分の能力と技術を試したい若者たちの熱気が渦巻いていました。

一方で、金儲け至上主義を公言して憚らない堀江貴文の気質を反映し、とにかく利益を上げることに血道をあげ、ともすればモラルや常識を軽視しかねない危うさがありました。

ライブドア事件後、宮内氏は、自身の著書『虚構 堀江と私とライブドア』のなかで、会議で数字の出せない幹部に声を荒げて詰め寄る堀江貴文の様子を「堀江スパーク」と表現しています。そして、なんとか利益を出そうと知恵を絞ったことを明らかにしています。

堀江貴文(ホリエモン)の人柄

ライブドア社長としての堀江貴文とメディアではしゃぐタレント「ホリエモン」との間には大きな乖離があります。堀江貴文は基本的には人見知りで、好きなことにしか興味を示さない代わりに、のめり込むと驚異的な集中力を発揮するこだわりの強いタイプです。

「ホリエモン」の気さくな印象とはずいぶん違います。幼少期から常識的な判断より自分の直感を信じるので、周りとの軋轢を生むことも少なくありませんでした。

嘘か妄想かわからない言葉を平然と口にする厚かましさや、義理や人情、合理性のない規定のルールに縛られることを嫌うふてぶてしさ、時代の先を読む天才的なひらめき、IT時代を見据えた革新的な発想。

そういった堀江貴文の人柄は、旧態依然とした社会に新風を吹き込むみ、とても魅力的に見えました。

一方、経営者としての堀江貴文は、数字に細かくミスを絶対に許しませんでした。言い出したら引かない強情さ、思いつきで手を出してはすぐに放り出す飽きっぽさ、「金で買えないものはない」と言い切る傲慢さは決してつき合いやすい人物ではありませんでした。

メディアはライブドア社を好意的に捉えていた?

ライブドアとメディアの関係といえば真っ先に思い浮かぶのはタレント「ホリエモン」です。プロ野球の世界に首を突っ込んでから堀江貴文の知名度は急上昇しました。どんな時でもTシャツとジーンズで押し通す型破りな若い経営者にメディアは飛びつきました。

次々と話題を提供してくれるホリエモンをメディアが喜ばないわけがありません。テレビのニュースやバラエティー番組でホリエモンを見ない日はないくらい、ホリエモンはメディアの人気者でした。

しかし、それはホリエモンがメディアにとって便利な商品だったからにすぎません。ライブドア事件が発覚すると、メディアは一斉に激しい報道合戦を繰り広げました。

メディアは連日のようにライブドア事件を報道し、中には好意的なコメントをする人もいましたがそれも視聴率がとれるからにほかなりません。

ライブドアは日本放送株取得事件を巡ってフジテレビと対立しており、その後、表面上は和解が成立していましたが、メディアにとって堀江貴文は放送界に土足で足を突っ込んだ無礼者でした。

そうしたメディアがライブドア事件の真相を解明しようと躍起になるあまり、余計に真相の難解さ、不透明さを印象づけてしまい、一部での「ホリエモン」擁護の風潮を生んだのは皮肉なことです。

なぜ堀江貴文(ホリエモン)はライブドア事件で逮捕されの?

メディアに引っ張りだこだったホリエモンの逮捕は世間に衝撃を与えました。

しかし、殺人や強盗といった被害者がいる、わかりやすい事件とは違い、会計上の不正が問題になったライブドア事件は、事件の経緯が非常に複雑で、関心が高い割にどこに罪があったのか、ちゃんと理解している人は少ないかもしれません。

スイスの隠し口座やインサイダー取引、反社会的勢力との交際などいろいろな疑惑が囁かれましたが、事件としては扱われませんでした。逮捕容疑は証券取引法違反です。事件の真相は定かではありませんがホリエモンこと堀江貴文には有罪判決が下りました。

証券取引法等に違反

ライブドア、ライブドアファイナンス、堀江貴文ほか6名の関係者が起訴されたのは証券取引法違反の容疑です。証券取引法は1948年に制定された法律で、概要は投資家保護を目的とし、不公正取引の禁止、偽計取引の禁止、相場操作の禁止、インサイダー取引の規制などです。

その後、2006年3月に一部改訂の提案が国会に提出され、2007年9月30日からは「金融商品取引法」と改題されています。

堀江貴文は、「偽計と風説の流布」による証券取引法違反容疑で逮捕され、その後「粉飾決済」や「架空売り上げ計上」を用いた「有価証券報告書虚偽記載」による証券取引法違反の容疑で追逮捕されました。

偽計と風説の流布の概要

偽計の概要は人をだますような詐欺行為、風説の流布とは人を惑わせるような根拠のない噂を広めることです。

偽計も風説の流布も金融商品取引法(旧証券取引法)第158条「風説の流布・偽計等の禁止」で、禁止されています。この2点をもって堀江貴文は最初の証券取引法違反の罪に問われました。

偽計

堀江貴文が犯した罪の概要は実質的にライブドアの支配下にあった投資ファンドを使って、事前に買収していたにもかかわらず、「マネーライフ社」の企業価値を過大評価し、ライブドアマーケティングとの株式交換比率を勝手に決めてしまったことです。

いわば身内同士で不適切な取引をしてみせ、他の投資家をだましたことになり、これが偽計取引にあたります。

風説の流布

風説の流布に関する概要はライブドアの赤字決算を隠すために消費者金融会社の「ロイヤル信販」と結婚仲介サイト運営会社の「キューズネット」に対する架空の売り上げを利益に計上し、それを公表したことです。

本当は赤字なのに黒字のように見せかけて投資家に嘘の情報を流したことが風説の流布にあたります。「マネーライフ」に関しても、実際以上の企業価値があるかのように見せかけたこと風説の流布にあたります。

有価証券報告書虚偽記載

有価証券報告書とは、上場企業や株式を公開している会社、大会社などが事業年ごとに内閣総理大臣に提出することが義務付けられている、会社概要や事業内容、財務状況、監査報告などを記載した書類です。

報告書は投資家にとって重要な投資判断材料の一つで、財務局や証券取引所で開示されています。これに虚偽の記載をすることは、投資家や取引先をだますことになり、重大な証券取引法違反行為です。

堀江貴文は、赤字決算を隠す目的で「粉飾決算」や「架空売り上げ計上」を使い、有価証券報告書に嘘の記載をしたとして再び証券取引法違反で逮捕、起訴されました。

粉飾決算

ライブドア事件以前にはカネボウ、近年では東芝なども「粉飾決算」で大問題になりました。単純なケースでは子会社や関連会社の収益を本体の収益に付け替えたり、本体の損失を関連会社に押し付けたりして赤字を隠します。

実際にはもっと巧妙な手口が使われるので、財務諸表上の複雑な仕組みやルールを熟知していないと読み解くことは困難です。実は多くの会社が粉飾に手を染めているともいわれます。

ライブドア事件で問題とされた粉飾決算の概要は次の通りです。決算が赤字になることを知った堀江貴文は、本来計上できない収益を損益取引として処理し、あたかも事業で黒字が出ているかのように偽装しました。粉飾決算は社会的な影響も大きく、厳しく罰せられます。

架空売り上げ

実際にはありもしない商取引をでっちあげ、収益を得たかのように見せかけることです。ライブドアのようなインターネットサービス事業では、商品が物理的に存在しないので、架空取引の実態を証明するのが非常に難しいのが現状です。

堀江貴文は、買収したもののほったらかしにしていた「ロイヤル信販」と「キューズネット」に架空の発注を出させ、取引が成立して収益を得たかのように見せかけました。

ライブドア事件の真相!わかりやすく解説

ライブドア事件は2006年1月16日、特捜部と証券取引等監視委員会のライブドア本社の家宅捜索で幕を開けました。宮内CFOは中国に出張中、いきなりの捜査に堀江貴文も驚きました。そして1月18日、衝撃的な事件が起こります。

ライブドアのM&A戦略に欠かせない存在だった野口氏が沖縄で突然の死を遂げたのです。事件性なしと判断されましたが、メディアは熱狂しました。

その後もメディアが先行する形でライブドアの不適正会計が次々と暴かれ、「堀江主犯説」、「宮内主犯説」、「陰謀説」などが入り乱れました。

どんなからくりがあったのか、どこからが罪なのか、主犯は誰なのか、野口氏の死に不審な点はないのか、死の真相は何なのか。偽計と風説の流布、有価証券報告書虚偽記載という3つの容疑が複雑に絡み合ったライブドア事件の真相を追います。

ライブドア社が経営利益を黒字と偽る(粉飾決算)

少しややこしいですが、ライブドアが決算を改ざんするために駆使した、M&Aによる収益増のからくりを説明します。ライブドア事件の根幹となるスキームです。

ライブドア事件とは別に、このからくりを利用した「トライラン」買収に絡み、宮内氏に横領疑惑も浮かびあがりました。

横領事件として起訴はされませんでしたが、ライブドア事件では事件への関与と罪を認めたにもかかわらず宮内氏に実刑判決が出たのはそのせいもあったと考えられています。

M&Aを使った錬金術の概要

ライブドアは2003年10月、携帯電話関連事業をおこなう「クラサワ・コミュニケーションズ」の買収計画を進めていました。ライブドア側は株式交換による買収を希望しましたが、株価下落による損失のリスクを嫌ったクラサワ側は現金での取引に固執しました。

結局、ライブドアは買収金額8億円を株で支払い、クラサワに渡った株を直ちに野口氏の仕立てたファンドが8億円で買い取ることで合意しました。

ファンドは8億円を用意するため堀江貴文所有のライブドア株を一時的に借り、市場で売却。その後、クラサワから受け取った株の中から堀江貴文に借りた分を返却します。

同じような取引が消費者金融申し込みサイトを運営する「ウェッブキャッシング・ドットコム株式会社」の買収でも買収額8億5000万円で成立しました。

クラサワやウェッブに渡った株は株価を安く見積もっていたので発行株数が多く、現金捻出のため堀江貴文から借りた株数を大幅に上回ります。

ライブドア株は値上がりを続けていたのでこの差の分の株を売却することでライブドアは最終的に約37億6000万円の利益を得ました。

罪への第一歩

ここまでは企業買収の現場ではよくあることで違法性はありません。株を売却したファンドが元ライブドアファイナンス社長の野口氏に近いのでインサイダー取引が疑われましたが、立件されませんでした。

事件の発端は、本来なら資本取引として別会計にしなくてはならない「自社株売買によって得た利益」を、会社の収益として計上してしまったことです。

刑法には犯意がなかった場合は刑事罰に問えないとする原則があります。もしライブドアが粉飾決算を目的としたのではなく、ただ間違えて報告書に記載してしまっただけなら罪にはなりません。しかし、裁判所は被告全員に「悪意があった」と判断しました。

架空取引で泥沼に

クラサワとウェッブの買収によって37億もの利益を得た堀江貴文は、調子にのって2004年9月期の決算予想を20億から50億円に変更します。堀江貴文は何としてでも達成するよう幹部に圧力をかけ続けましたが、株による利益を除くと実態は3億円余りの赤字。

「時価総額世界一」を目指す堀江貴文としては、企業業績の悪化を印象付け株価下落の要因になる赤字転落や下方修正を絶対に許しませんでした。

追い詰められた宮内CFOは関連会社「ロイヤル信販」と「キューズネット」との架空取引を提案、16億円の収益をでっちあげようやく目標を達成しました。

自社株売買利益の連結経常利益計上はうっかりの可能性が無きにしも非ずですが、架空取引の売り上げ計上は明らかに違法です。こうしてライブドアは事件への道を転がり落ちていきました。

検察が事件を捜査!堀江貴文の家宅捜索なども

検察は2005年末からライブドア事件の捜査を始めていました。年が明けた1月16日、ついに強制捜索が入ります。

ライブドア本社がある六本木ヒルズの前には100人を超す報道陣が待ち構えていました。当日の午後4時ごろにはNHKニュースが「ライブドア強制捜査」を報道していました。

捜索が入ったのは午後6時半ごろ、社内にいた社員は事件に気づいておらず、一様に何事かと驚きましたが、深刻に考えずに談笑したり、仕事を続けたりしていました。

同じころ隣接するマンション、六本木ヒルズレジデンスの堀江貴文宅や野口氏のエイチ・エス証券にも強制捜査が入り、その後、野口氏の自宅にも捜査が入りました。電話で捜査の概要をきいた宮内CFOは翌日急遽中国から帰国しました。

ライブドアショック

ライブドア事件の影響で市場は大パニックに陥りました。強制捜査の翌々日にはついに東証のシステムがストップ。その翌日からは午後の取引が30分短宿される事態になりました。

ライブドアとライブドアファイナンスが上場していたマザーズへの事件の影響は凄まじく、IT関連株が軒並み売られる深刻な事態を引き起こしました。

事件の関係者が逮捕される

強制捜査から1週間後、証券取引法違反(偽計と風説の流布)容疑で堀江社長、宮内CFOほか2人の幹部が逮捕されました。ライブドア第一次逮捕です。このスピード逮捕の裏にはライブドア強制捜査を受けてパニッックに陥った証券市場の鎮静化の目的がありました。

その後の2月22日、堀江社長、宮内CFOほか2人を証券取引法違反(有価証券報告書虚偽記載)で再逮捕、24日には熊谷代表取締役も逮捕されました。これがライブドア第二次逮捕です。
 

裁判の結果が出る!堀江貴文は懲役2年6ヶ月

全員が逮捕容疑の証券取引法違反で有罪判決を受けました。堀江貴文は2007年3月、一審で懲役2年6か月の実刑判決を受け、控訴、上告しますが棄却され2011年4月に刑が確定しました。事件発覚から5年後のことでした。

宮内CFOは事件への関与を認めましたが1年8か月の実刑判決。控訴し、下された判決で1年2か月に減刑されるも上告します。しかし、その後の2009年に上告を取り下げ刑が確定しました。上告を取り下げたのは、一日でも早く社会に復帰したかったからです。

そのほかの3名も事件への関与を概ね認め、2名は懲役1年6か月、執行猶予3年の判決で刑が確定しました。熊谷代表取締役は懲役1年、執行猶予3年の有罪判決が下り、控訴しますがその後取り下げたため刑が確定しました。

ライブドア事件では監査法人の関与も追及されました。

在宅起訴された2人の会計士のうち1人は懲役10か月の実刑判決を受けます。これは公認会計士制度上初めての実刑判決でその後も実刑判決は出ていません。しかし、控訴して懲役10か月、執行猶予4年の判決を受け、刑が確定しました。

残る1人は一審で懲役10か月、執行猶予4年の判決を受けますが、無罪を主張して控訴、上告しますが退けられ刑が確定しました

ライブドア事件の裁判!7人と2法人に有罪判決!

2005年5月26日の堀江貴文を除く宮内CFOほか3人の初公判の概要は、ライブドアは上場以来順調な経営を演出し、株価を釣り上げ時価総額を増やすためならなんでもやってきたと断じるものでした。

堀江貴文は徹底抗戦の構えで最後まで無実を訴え続けましたが、結果として逮捕された全員とライブドア、ライブドアファイナンスに有罪判決が下りました。ライブドア事件は監査法人をも巻き込んだ初の企業犯罪として経済史に名を残すこととなりました。

裁判では堀江貴文は宮内CFOや野口氏の背任、横領を指摘し、責任を宮内CFOに押し付けようとして泥仕合になりました。早い段階から罪を認め、検察に協力していた宮内CFOとは対照的です。

検察による差し押さえ

検察による強制執行が月曜日だったため、翌日から市場は「ライブドア・ショック」と呼ばれる大混乱に陥りました。ライブドアとライブドアファイナンスの株価は大幅下落を続け、4月14日上場廃止になりました。

ライブドア事件のせいで被害を被ったライブドアの個人株主は、全国で22万人おり、彼らの一部はライブドアと堀江貴文らに対する集団損害賠償訴訟を起こします。2009年の判決で被告は76億円の支払いを命じられました。

この判決に差し押さえができる「仮執行宣言」がついていたため、2010年、6人の原告から申し出を受けた裁判所は、堀江貴文の自宅にあったゴルフバックやワインセラーなど33万円相当を差し押さえました。
 

日興コーディアル証券の経営幹部は逮捕されなかった

ライブドア事件が起こったのと同じ年、もう一つの粉飾決算疑惑が発覚しました。手口はライブドアより巧妙で、粉飾額も比べものにならないくらい巨額だったにもかかわらず、逮捕者は出ませんでした。実刑判決まで出たライブドアとトップの引責辞任で終わった日興コーディアルグループ。

両者の明暗を分けたのは何だったのでしょうか。

事件の概要

ライブドア事件の記憶も新しい2006年12月18日、以前から噂されていた日興コーディアルグループの不正会計処理が表面化しました。水増しした180憶円の利益を根拠に500億円の社債を発行していたため、証券取引法違反に問われ、5億円の追徴金が課せられました。

日興側はあくまで担当者の人的ミスで「悪意」はないと押し通しました。その後、日興コーディアルグループ会長と同社長が引責辞任しましたが逮捕者は出ませんでした。株は監理ポストに入りましたが2007年3月、東証は上場維持を発表、株価は反発しました。

明暗

ライブドア事件での粉飾額は50億円、かたや日興コーディアルグループは180億円、一部では300億円ともいわれる巨額粉飾決算です。しかし、その結果には明らかに違いがあります。

ライブドア事件では社長をはじめ7人が逮捕され全員に有罪判決が下りましたが日興の逮捕者はゼロ。引責辞任した会長と社長の後継も日興コーディアル証券からのスライド人事です。

ライブドア株は上場廃止に追い込まれましたが、日興コーディアルグループ株は上場を維持できました。日興コーディアル証券こそシティグループの子会社化されましたが日興本体はほぼ無傷と、何も残らなかったライブドアとは雲泥の差です。

日興コーディアルグループは潰すには社会への影響が大きすぎたというのが真相でしょうが、政治家や反社会的勢力との癒着がスクープされたこともあり、巨大な力が働いたと憶測されても仕方ありません。

事件化するのに丁度良いサイズだったから事件化されたといわれてはライブドアも浮かばれません。

ライブドア事件後の野口英昭の死因は?

大きな事件が起こると真相を解明するカギを握る人物が不審な死を遂げることがよくあります。ライブドア事件では宮内CFOと関係の深かったエイチ・エス証券取締役野口英昭氏が亡くなりました。強制捜査の2日後、1月18日のことでした。

野口氏は17日午後、妻との電話のあと自宅に戻らず、翌18日の午前の便で沖縄に向かいました。那覇空港に着いた野口氏は11時20分ごろカプセルホテルにチェックインします。そして午後3時ごろ瀕死の状態で発見され病院に搬送されました。

非常ベルに気がついて駆けつけたホテルの従業員に発見された野口氏は、手首や腹など複数個所に包丁による刺し傷がありました。睡眠導入剤を服用した形跡があり、野口氏が那覇で購入したといわれていますが定かではありません。

死亡時刻は3時45分。沖縄県警は事件性はないとし、自殺と断定されました。

野口氏の死はメディアによってセンセーショナルに報道されました。なぜ縁のない沖縄で死を選んだのか。司法解剖もおこなわれておらず、包丁の指紋も取られていないことから野口氏の死には未だ他殺説が根強く残っています。

野口氏はライブドア以外にも数多くの案件を抱えており、その中のどれかが理由ではないかとの見方もありますが、ライブドア事件がきっかけであることに変わりはありません。自殺なのか他殺なのか、その死の真相はライブドア事件の真相より深い闇の中です。

ライブドアの資金繰りのキーマンであった野口氏の死で、ライブドア事件の首謀者の特定が難しくなり、その後、宮内氏や野口氏にかけられた背任や横領の嫌疑を晴らすこともまた難しくなりました。

首謀者は誰だったのか

ライブドア事件では、逮捕をきっかけに一枚岩だったはずの幹部の間に亀裂が入ります。初めから罪の意識のあった宮内氏は堀江貴文に不利にならないように、できるだけ自分が罪を被ろうと考えていました。

しかし、堀江貴文は罪を犯した自覚が全くなく、全責任が宮内氏やほかの幹部にあると発言していました。
信頼関係は完全に崩れ、言った言わないの水掛け論になってしまいました。

有価証券報告書虚偽記載は指紋やナイフのような証拠があるわけではありません。虚偽記載の証拠はあってもそこから首謀者を特定することは不可能です。ですから自白が重要な証拠になるのですが、宮内氏の自白を堀江貴文は真っ向から否定しました。

ワンマン社長の堀江貴文が何十億もの決済にかかわっていないはずがありません。際どい財務運営を主導していたのは宮内氏ですがそれを良しとして煽ったのは堀江貴文です。罪を犯すことと金儲けを秤にかけたとき、堀江貴文はお金を選択していしまいました。

「儲かってるならいいじゃん」と気楽に考える堀江貴文は本当に罪の意識がなかったのかもしれません。事件発覚後も「何が悪いのかわからない」と何度も繰り返していました。

金儲けの前では罪を罪とも思わない堀江貴文の危機管理能力の低さと倫理観の欠如が招いた精神的未熟者たちの暴走、これがライブドア事件の真相です。

ライブドア事件の問題点

ライブドア事件の概要は、粉飾決算で業績を偽装しつつ株式分割や企業買収を繰り返して株価を釣り上げ市場関係者をだましたことです。法の目をかいくぐってでも儲けようとする堀江貴文のモラルの低さが事件を引き起こしました。

日本放送株取得事件でもそうですが、マナーや倫理観より利益を追求する経営姿勢は法律に対する認識の甘さにも通じます。

頭の回転が速すぎるがためにせっかちだった堀江貴文には事業経営者として事業をじっくりと育てる資質が欠けていました。カリスマ経営者と崇められながらも道を誤った堀江貴文。「ホリエモン」となって事業への熱意を失ったことも失敗の一因です。

堀江貴文の要求に応えるためには多少のルール違反には目をつぶる宮内氏や野口氏に支えられたライブドアには、事件が起きる土壌が十分に整えられていました。

時価総額至上主義が引起きこした問題

堀江貴文は、創業当時からインターネットの世界でナンバー1になることを宣言していました。「ヤフーを超える」と公言し、「時価総額世界一」を目標に、あくまで株価上昇にこだわりました。

しかし、東証マザーズに株式公開してからわずか6年足らずで時価総額8000億を超える巨大企業に成長したのは、堀江貴文の経営手腕というよりも宮内CFOや野口氏のトリッキーな企業買収スキームのおかげです。

株価上昇のためだけに繰り返された企業買収は本業のインターネット事業に実質的な貢献をすることは少なく、ライブドアは本質を欠いた焼け太りの企業でした。利益の70%をファイナンス部門が叩き出す異常な事業バランスに実態がよく現れています。

企業買収や株式分割で楽に大金を稼ぐことができることに味を占めた彼らは、本来事業内容が価値であるはずの企業の本質を見失っていました。法律すれすれのスキームを構築した宮内氏や野口氏。

それを咎めるどころか右肩上がりの黒字決算が演出できるなら何でもいいとばかりに大喜びで受け入れた堀江貴文。経営陣のモラルの低さ、社会人としての幼稚さ、企業理念の欠如。その結果起こったのがライブドア事件でした。

法令遵守!企業のあり方が問われる事件!

粉飾決算はどの企業でも起こりうる犯罪です。ほとんどの経営者は自社の業績をよく見せたいと思っているからです。ちょっとぐらいなら、みんなやっているから、バレなければいいから、そんな心の隙が法令違反を招きます。

ライブドア事件が発覚したとき、肝を冷やした経営者や財務担当者も少なくありませんでした。ライブドア事件はコンプライアンス軽視の傲慢さによって引き起こされました。

「見せしめだ」ともいわれますが、たとえ本当に見せしめであったとしても法を破ったことに違いはありません。検察は逮捕前に、「額に汗して働く人が損をするような世の中の風潮にメスを入れたかった」と語っています。

ライブドア事件の教訓

株価は投資家の期待値のあらわれでもあります。その判断材料を偽装した罪は詐欺罪にも匹敵します。ライブドア事件は人々の企業への信頼を失墜させ、ITやベンチャーに対する不信感を植えつけました。

ライブドア事件をきっかけに、企業のあり方、リスクマネジメント能力、コンプライアンスの徹底、ディスクロージャーの重要性が改めて問われることになりました。

ライブドア事件では監査法人との癒着も問題にされました。チェック機能が正常に働いていればライブドア事件は起こりようがなかったのです。監視する側の倫理観も強く問われた事件でした。

エンロン・ワールドコム事件

ライブドア事件から遡ること数年、アメリカでライブドア事件にそっくりな事件が起こっています。エネルギー事業関連企業エンロンとアメリカ長距離通信会社のワールドコムの粉飾決算が発覚し、大問題になってた事件です。

その後、アメリカ最大の会計事務所アーサー・アンダーセンとの癒着も発覚。財務上の監視体制の脆弱さが指摘されました。これを受けてアメリカでは企業の不祥事を未然に防ぐための法整備をおこない、SOX法(サーベンス・オクスリー法)が制定されました。

SOX法の概要は監視体制の確立と経営者の責任重視です。これにより経営者は財務報告や法令遵守に問題がないことを報告することを義務づけられ、違反があった場合は責任を負うことが明確化されました。

日本版SOX法

日本でも企業の不祥事が続々と発覚し、法の整備が求められている矢先にライブドア事件が起こりました。日本における証券取引上の基本的な法律は1948年に施行された証券取引法ですが、現代の社会の実状に追いついていませんでした。

そこで、証券取引法の一部改正に伴い、日本版SOX法が施行されました。ちなみに、日本版SOX法は俗称で、正式には金融商品取引法の一部です。

目的

日本版SOX法は、企業の健全な運営と、適正な財務報告、それによる投資家保護を目的とした法律です。

そのためのシステムとして、業務の運営や社内ルールの遵守、財務報告など、社内の様々な分野でそれぞれが管理、監視、保証する内部統制の構築が義務づけられています。内部統制は組織を細分化し、効率的かつ有効に管理、運営する手法です。

概要

投資家保護の観点から、情報の開示(ディスクロージャー)と財務報告の信頼性の確保に重点が置かれています。上場企業は、それまで取引所の自主ルールだった四半期ごとの事業報告書の提出を義務づけられました。

内部統制システムはその整備状況を報告するだけでよかったのが、システムの有効性を経営者が評価した内部統制報告書を提出することが法定化され、未提出の場合は罰則が加えられることになりました。

内部統制には監査人による監査が必要で、内部統制報告書には監査人による監査報告も記載しなくてはなりません。この制度の制定に、ライブドア事件が影響したことはいうまでもありません。

経営者としての資格

残念ながらたくさんの人が働く企業には悪いこと、ずるいことを考える人間もいます。社会的に責任のある企業はコンプライアンスを徹底し、違反者を許さないシステムを構築しなくてはなりません。

コンプライアンスは、「法令遵守」にとどまらず、社内ルールや個人のモラルや倫理観にも踏み込んで解釈されます。トップの意識が低ければその傾向は組織全体に広がります。ライブドア事件は、人間の欲深さと狡賢さ、弱さと甘えをまざまざと見せつけた事件でした。

どれほど法制度を厳しくしたところで責任者の意識が低ければ同じような不祥事はまた起こります。人の上に立つ人間としての誠意と覚悟の欠落は、どれほど優秀な頭脳を持っていたとしても経営者としては失格です。

その後の堀江貴文

20011年6月20日、堀江貴文は長野刑務所に収監されました。その後、2013年3月27日、刑期の74%を終えて仮出所、11月10日に刑期を満了し、自由の身になりました。

脇の甘いところはあったとしながらも、今でも堀江貴文は裁判に納得はしていません。ライブドア事件については書籍も出版し、反論を試みています。前を向いてまっしぐらに突き進んでいくバイタリティは健在で、今は前からの夢だった宇宙事業に力を注いでいます。

ホリエモン人気も健在で、以前ほどではありませんがメディアにも顔を出しています。ライブドア事件からは学ぶこともあったと口にすることもあります。

ライブドア事件は、突き詰めれば、調子に乗って世間をなめた若造集団に司法がお灸を据えたということにほかなりません。事件から10年余り経ち、堀江貴文も罪を償いました。

ライブドア事件は、当時も今も、無理やり事件化された事件だという人もいます。それでも、あの時発覚したからこそやり直す時間が与えられたのです。

堀江貴文もまだ40代です。ライブドア事件から得た教訓を胸に、持ち前の頭脳と時代の先を読むセンスを、今度こそルールの中で活かしてくれることを多くの人が望んでいます。

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