石女(セキジョ)の意味や語源とは?使い方を例文を用いて解説!
石女(セキジョ)とは何なのか、石女の意味や語源について解説します。石女(セキジョ)という言葉を聞いたことがありますか?昔はよく使われていた差別用語です。石女の使い方を例文を用いて解説しながら女性がいかに差別を受けてきたのか歴史を知りましょう。
目次
離婚の理由にもなった「石女」
石女(セキジョ)という言葉を聞いたことがありますか?昔はよく使われていた差別用語です。石女は、その昔は離婚の理由にもなりました。女性にとっては屈辱的な差別用語でもあったのです。
現在は、不妊の原因は男性にもあることが分かっています。また女性に不妊の原因があったとしても、さまざまな要因からそういった状態になっているだけであり、差別を受ける理由にはならないはずです。しかし古い因習で苦しめられた女性がいたのです。
この記事では、石女の使い方を例文を用いて解説します。例文として載せるのも憚られるぐらい、嫌な言葉ですが、昔の日本で、女性がいかに差別を受けてきたのか歴史を知り、これを機に偏見や差別をなくしていきましょう。
「石女」の意味とは?
ではさっそく、石女の意味から見ていきましょう。石女という漢字から想像すると「石頭のように融通が利かない人のこと?」と思うかもしれません。
また、石という漢字から想像する意味とは、「固い」「頑丈」「頑固」などです。しかし、石女、は、全く違った意味を持っています。
「石女」の読み方
「石女」は、「うまずめ」又は「せきじょ」と読みます。うまずめを漢字に当てはめると「産まず女」「不産女」となります。つまり「石女」の読み方から察するとおり、「石女」は不妊症の女性を表す言葉として使われていました。
昔は女性は結婚して家に入り、子供を産むのが当たり前でした。子供を産まなければその家の跡継ぎが途絶えてしまうので、子供が出来ないことは大問題だったのです。
子供ができにくい女性、結婚してしばらくたつのに子供が出来ない女性は「石女」とされて、離婚の正当な理由にもなっていた悲しい歴史もあります。
「石女」の語源
石女の意味とは何なのか?が分かったところで、石女の語源は何処から来たのか見て参りましょう。石女の語源には、さまざまなものがあります。
主な物を一つ上げると、「石」という漢字には元々「役に立たない」「劣っているもの」という意味があります。そこから「役に立たない女」「女として劣っている」「石女」の意味になったのでは?と言われています。
「石女」の類義語・対義語
「石女」の類義語・対義語とはどんなものがあるのか、について見ていきましょう。石女(うまずめ)が一番一般的で知られている差別用語ですが、他にも類義語は存在します。
類義語
石女の類義語ですが、不・生・女の漢字三文字を合わせて「不生女」や、「石婦(せきふ)」「木女房(きにょうぼう)」「カラゴ」などがあります。いずれの言葉も「子供を産めない女」「お嫁さんにもらっても役に立たない女」といった意味合いになります。
対義語
石女の対義語で明確なものはありません。強いて言えば「種なし男」「妊産婦」ぐらいでしょうか。子供を産めない女の正確な対義語は「子供を産める女」の意味となりますが、対義語として使えるかどうかは不明です。
「石女」の使い方《例文紹介》
次は、「石女」の使い方について、例文を交えて紹介していきましょう。例文として書くのも憚られるぐらい、ひどい言葉ですが、知っておくだけでも、以前は女性がいかに虐げられてきたか、わかると思います。
基本的には「石女」は、蔑みの気持ちを込めて使うものです。「せっかく嫁に貰ったのに子供も産めないなんて」といった気持ちが見え隠れする文章となります。また、この言葉を使う人は「姑」や「小姑」であることがほとんどです。
ただ、現代はこの言葉を使う人はほとんどいません。使われるとしたら昔の文学作品や文献、古い慣習から抜け出せない高齢の方でしょう。
例文①3年経っても子なしの石女は離縁の理由になる
3年経っても子なしの石女は離縁の理由になる、という理論は昔は当然の事として考えられていました。何しろ女性は「子供を産むための人間」であり、その家の重要な働き手でもあったわけです。女性の人権は著しく阻害されていたことが分かります。
例文②嫁が石女なので妾を取らせるしかない
子供が出来ない時には、妾を取って子供を設けるしかない、昔は堂々とこのような事もおこなわれていたようです。一夫多妻制だった時代は、石女かどうかに関わらず当たり前の事ではありました。
自分に子供ができないから、妾をもらっても仕方がない、と我慢を強いられてきた女性は本当に可哀想だったとしか言いようがありません。また、後で説明しますが彼女たちは、村人から酷い扱いを受けていたのです。
例文③石女を嫁に貰うと村が途絶える
子供が出来ない女性は、子孫を残せない事になるため「一人いるだけで村が途絶える」などと、言われていたこともありました。石女を嫁に貰った事自体が、先祖からの因縁であると考えられている古い因習も影響しているようです。
しかし、今では知られていることですが、不妊は女性側だけの原因ではありません。男性側に原因があったり、後でご紹介する小説に登場する主人公は、夫から性病をうつされたために不妊となりました。
それにも関わらず、子供が出来ない原因を全て女性側に押し付けられて、不遇な人生を歩んできた女性の歴史を思うと可哀想でなりません。
戦前まで日本各地で見られた「石女」の差別
次は、本来であれば何の非もないはずの子供を授からない女性が「石女」として、差別されていた歴史を見ていきましょう。戦前まで日本各地で見られた「石女」の差別を簡単に紹介します。
「石女」の原因は前世や先祖の悪業
現代のように、不妊の正確な原因が分からなかった時代には「石女」になってしまった原因は「前世や先祖の悪業」だと信じられてきました。
前世で殺人犯だった、とか、先祖が昔村人を生き埋めにした罰だ、など、石女自身の前世の行いや、石女の先祖のがやってきた悪行の数々が、今のカルマとなって石女を作り出したのだと、本気で思われていたようです。
日本各地の「石女」に対する差別とは?
石女は離縁されるだけでなく、さまざまな差別をされてきました。岐阜のとある地方では「穢れのある石女」が、用を足したところの草木は枯れてしまう、と言われました。また、「石女は、猫背で血色が悪く青白い顔をしている」と容姿を非難されました。
また、「石女」がその土地に住むだけで「神社の木が毎年一本ずつ枯れる」とも言われていました。鳥取では、月経のない女性を「木女房」、子どもを産まない女性を「竹女房」と呼び、村が途絶えるから、と追い出されていたそうです。
更に酷いのは、子育てをしない石女は「この世で楽をした」報いで死んだら地獄へ落ちると言われたり、石女は極楽にはいけない、と説いている村もあったそうです。
読んでおくとためになる渡辺淳一の「花埋み」
医師で作家の「渡辺淳一」さんを知っていますか?何年か前にお亡くなりになりましたが、渡辺さんは、「花埋み」という有名な小説を残されています。この小説は日本で第一号の女医となった「荻野吟子」の生涯を描いた伝記です。
吟子は18歳で結婚をしましたが、外で女と遊んでばかりいた夫から淋病をうつされてしまいます。その後遺症で子供が出来ない体となり離縁されてしまいました。夫から移された「淋病」が原因で不妊症になった。にも関わらず・・
彼女は、まさに今回のテーマでもある「石女」として扱われ離縁されてしまったわけです。その後、吟子は、淋病の治療で男の医師に診察される屈辱を味わい、「女医がいればこんな目に合わないのに」と女医になる決心をして見事に女医になったお話です。
不妊の原因は男性にもある
花埋みの主人公の女性のように、性病が原因で不妊になるケースや、中絶などの後遺症で不妊になるケース(現代では稀ですが)はあります。それ以外の女性の不妊の理由はさまざまですが、ホルモンの乱れで卵胞が育たなないなどが原因とされています。
では、不妊の原因は女性だけなのでしょうか?男性不妊の割合は少ないのでしょうか?実は女性側が原因とされる不妊の割合は「41%」で、男性側が原因の不妊は「24%」と言われています。男女共に原因があるのは24%です。
残りの11%は原因不明です。女性が不妊治療をしていても、男性に不妊の原因があれば、高い費用を払っても無駄になってしまいます。また、男性にも原因のある不妊の問題を、女性だけになすりつけられてきた歴史を思うといたたまれない気持ちになります。
石女は「差別用語」使うのはやめよう
石女(せきじょ・うまずめ)の意味とは何なのか?を解説し、石女の言葉の使い方を例文を用いて説明しました。
今の若い人で、不妊女性を特別視する人は流石にいないでしょう。でも昔の日本では、子供を産めない女性は、公然と差別されていました。草木が枯れる、とか神社の木がなくなる、など、よくそんなことが言えたものです。
しかし、共同体とは恐ろしいもので皆が差別をすると、それが当たり前のようになってしまい違和感を感じなくなり「差別されて当たり前」だと思ってしまうのです。これは本当に怖いことです。差別用語を平然と使うのは品性を疑われるのでやめておきましょう。