ロマ人とは？特徴や日本人との違い！昔から差別されてきた少数民族
日本では馴染みがありませんが、ヨーロッパやロシアなどの地域にはロマ人という少数民族の人々が生活しています。ロマ人は独特な生活様式、顔立ち、文化や音楽を持っています。美人が多く、有名人も多いロマ人の特徴や日本人との違い、昔にどんな差別があったのかを紹介します。
ロマ人とは？
日本人には馴染みの少ないロマ人。ロマ人とはロマという国に住んでいる人の事ではありません。それぞれヨーロッパ各地やロシアに転々と散らばって生活している民族の事を表します。その生活スタイルから、昔から迫害を受けていたという背景もあります。
元々は北インドのロマ二系の人々が東欧に移住してきたことが由来しています。移動生活者や放浪者のイメージが強いですが、定住しているロマ人も存在しています。日本では美人が多いという噂もあります。ロマをルーツに持つ様々な方面での有名人も存在します。
また、時にはジプシーと呼ばれることがあります。ジプシーとはロマ人を含む移動しながら生活している民族を表す言葉です。しかし、日本ではジプシーという呼称は物乞いや浮浪者という意味合いが強く含まれているという考えから、差別用語とされていますので、聞いたことがないという日本人も多くいるでしょう。
ロマ人の特徴
ロマ人は北インドをルーツとしています。ですのでエキゾチックな顔立ちで肌は褐色の人が多くいますが、中には北欧の人のような白人もいます。口は大きく、鼻は高く長い人が多いでしょう。また、筋肉は発達していますが、細身の人が多く、身長も高い人が多いのも特徴です。これが有名人が多く、美人も多いといわれる要因でしょう。
ロマ人の子供たちには金髪の子もいますが大人は暗い髪色の人が多いです。目は大きく、眉毛、睫毛などの体毛が濃いのもよく見られる特徴です。
また、音楽やダンスが得意で性格も大らかでポジティブシンキングな人も多いという特徴があります。音楽に造詣が深いことや放浪の生活をしていることが関係しているように思えます。
そしてロマ人の中にも12の種族に分類することが出来ます。その種族によってそれぞれ異なる文化や特徴を持ち、違うロマ語を使って生活しています。現在ではルーマニアに多くロマ人が住んでいるとされています。
ロマ人は少数民族で更に移動型の民族のため、はっきりとした人類分類は現在でも定説は決まっていないようです。その点からはまだ謎の多い民族と言って良いでしょう。
ロマ人は美人な人が多い？
ロマ人は有名人も多く、エキゾチックな目鼻立ちのしっかりとした顔の美人が多いです。彫が深く、特徴的なくっきりとしたアーモンド形の瞳は日本人から見れば美人と感じることが多いようです。また、白人のような髪色や顔立ちのロマ人もいます。
また男性も筋肉質で高身長の人が多いのでかっこよく感じることでしょう。民族的に美人が多いというのは魅力的に思えるでしょう。
日本人とロマ人の違いと共通点
世界各地で放浪の生活をしていることが多いロマ人。今では多くがルーマニアに住み、エキゾチックな美人も多く、顔も性格も日本人と似ても似つかない特徴的な部分のほうが多いです。
しかし一方で、ロマ人は家族や親戚をとても大切にする民族でもあるようです。少数民族で、他の民族からの迫害や差別など、辛い過去も関係しているのでしょう。日本人も家族や親戚のつながりを大事にする傾向があります。家族との強いつながりを持っているということは日本人との共通点の特徴であるといえます。
生活を続けていくため、子孫を残していくためには家族との関係はどの民族でも大切です。また、家族への無償の愛情や大切に思う気持ちは国籍を問わない普遍の感情といえます。
ロマ人の暮らしは？
美人や有名人の多いロマ人。日本で生活している日本人は、迫害の影響などで決まった場所で生活をしなかったり、定職につかない人がいるロマ人の生活スタイルを想像するのは難しいでしょう。
一体ロマ人はどのように生活を営んでいるのでしょうか。ロマ人にはあらゆる生活スタイルを持つ人がおり、全てのロマ人が同じ生活スタイルを取っているわけではありません。住んでいる地域もヨーロッパやルーマニアなど様々です。その選択の自由度の高さもロマ人の特徴といって良いでしょう。
ロマ人の生活スタイル
ロマ人の生活スタイルは自分たちで集落を作り、集団で生活することが多いのが特徴としてあります。自分たちの言語を使い、一般的な学校に子供たちを通わせない人も少なくないようです。ロマ人が多いルーマニアでもそれは変わりません。
また、定住しない人達の多くは路上パフォーマンスやタロット占い、物乞いなどで日々の生活費を稼いでいます。ロマ人は古くから霊能力が強いという噂があり、昔のロマ人はその噂に便乗してタロット占いしてよく稼いでいたそうです。その名残が今でも続いています。
しかし、中には定住して清掃員などの定職についている人、普通に学校に通っている子供や通わせている人もいます。ロマ人といっても一概に決まった生活スタイルを取っているわけではありません。
ロマ音楽・ジプシー音楽
ロマ人は音楽と切っても切れない関係にあります。ロマ人は音楽を作ったり、ダンスしたりすることが非常に得意で、その情熱的なパフォーマンスはロマ以外の様々な民族の音楽に影響を与えてきました。ロマ人の中には音楽家として生活している有名人も多くいるのが特徴です。
ロマ人は昔から虐げられた状態が多く、迫害や差別されたりと鬱屈とした生活の中に常にいましたが、自分たちの音楽を奏でることで安らぎや少しの満足感を得ていたのでしょう。
その心のこもったロマ人独特の民謡は、ロマ人が放浪の生活を続ける過程でヨーロッパやルーマニアをはじめとする国の文化と融合し、現代にいたります。
ロマ音楽の特徴
ロマ人の奏でる音楽は、テンポや強弱の変化が激しく、情熱的で叙情的であることが特徴です。細かいリズムや力強いボーカル、自由な修飾も加わり、非常に華やかな音楽です。音階も特殊な音階を持ち入り、オリジナル性の高い独特な雰囲気を醸し出します。
また、文字を持たなかったロマ人は歴史の継承や記録を歌やダンスで後世に残していったとされています。
各国の音楽への影響
ロマ人が各国を放浪することによって、ロマ音楽は世界中に広まり発展していきます。ロマ人が昔から住んでいるトルコではベリーダンスとしてロマ音楽が発展しています。
また、スペインではロマ音楽をルーツとしてフラメンコが生まれ、ロマ人からも多くのフラメンコアーティストを輩出し、フラメンコの発展をロマ人が大きく貢献してきました。
そして、ハンガリーの音楽はロマ音楽と混同されるくらいロマ音楽と強い接点があり、共通の特徴を持ちます。特にチャールダーシュという舞曲がロマ音楽の代表としてポピュラーです。
ロマ人が最も多いルーマニアでは、ロマ音楽奏者はラウタリと呼ばれ親しまれています。また、マネーレと呼ばれるルーマニアの大衆音楽は、ルーマニアを始め、バルガン半島で非常に盛んです。
クラシックへの影響
ロマ人の音楽はクラシック音楽にも多大な影響を与えています。特に19世紀のヨーロッパを中心に栄えた古典的な特徴のあるロマン派音楽はロマ音楽に強く影響されています。
ドイツやハンガリーなどの知られざる顔ぶれの作曲家がロマ音楽に触発されて曲を生み出しています。クラシック界での有名人にも影響を与えているのです。
ロマ人の宗教
宗教は時に戦争の火種となるように、人々には重要なものです。その民族の文化を形成するうえでも非常に重大な役割があるといえるでしょう。
ではロマ人はどのような宗教を信仰しているのでしょうか。その観点からみることで、さらにロマ人について深く知れるかもしれません。
主流の宗教
先述したとおり、ロマ人のルーツは北インドとされているため、宗教もかつてはヒンディー教が主流だったと考えられていますが、放浪の生活を経て、定住した土地の主流の宗教に改宗するロマ人も少なくありません。
ロマ人の中にもカトリックやプロテスタントといったキリスト教を信仰する人、またイスラム教を信仰する人など様々います。
独特な風習
ロマ人は宗教の他に様々な独特な習慣があります。ロマ人でない人、私たち日本人から見れば驚く習慣も多くあります。家庭では父親を中心に、男性の顔を立てる家父長制で、美人が多い女性は処女であることが重視されます。
そのため、結婚も早く、娘が12歳になると親の決めた相手に娘を誘拐させ、半ば強引に結婚させられるそうです。
また、一部のロマ人は一夫多妻制をとっている人たちもいるようです。
ロマ人に民族衣装はあるの？
民族衣装は、その民族の生活様式や宗教などが強く影響されるものの一つです。日本人からすればかけ離れた生活をしているように見えるロマ人はどのような民族衣装を持ち、普段はどのような服装で生活しているのでしょうか。美人が多いとされるロマ人の民族衣装は興味深いでしょう。
実際にロマ人の服装について紹介していきましょう。
ロマ人の女性の服装
ロマ人女性の民族衣装は非常に華やかです。ベリーダンスやフラメンコの衣装のように、踊ると舞い上がるような布をたっぷりと使ったサーキュラーロングスカートが特徴です。柄も花柄でカラフルなものが多く、くるぶしまである長いものが主流です。
髪型はロングヘアを固く三つ編みで固めることが多く、足元は編み上げ靴が多いです。ロマ人が多く定住しているというルーマニアでは普段でもこのような服を身にまとっている人を時々見かけることが出来ます。
ロマ人の男性の服装
ロマ人の男性は現在では一般的な服を着ていることが多いようです。その定住している国の文化にも強く影響され、イランやウクライナのロマ人は頭にターバンを巻いていたりします。
シンプルで動きやすそうな恰好をしているロマ人男性が多いです。
映画や小説など作品の題材になったロマ人
ロマ人はその独特な文化や放浪する生活スタイルから、迫害や差別を受けていた反面、あらゆる作品で題材とされています。日本人でも親しみやすい有名人がかかわっているものから、社会派のものまでそれは多岐にわたります。
映画や舞台になるとロマ人の衣装や踊りが印象的に使われ、エキゾチックな美人が多いロマ人は映像の中で美しく表現されています。
ロマ族が登場する映画
ロマ人は様々な映画に題材として使われています。日本でも人気な有名人が関わっているものもあります。
ジプシーのとき
ユーゴスラビアのジプシー村に暮らす少年の物語です。主人公の少年の成長を通して、ロマ人の流浪の生活をリアルに切り取り美しく描いた映画です。
監督はカンヌ国際映画祭でグランプリを受賞した「パパは、出張中！」で知られるエミール・クストリッツァ監督がしています。
スナッチ
イギリスとアメリカの合作映画である「スナッチ」はメインキャラクターの中にロマ人のボクサーが登場します。
キャストはブラットピットやジェイソンステイサムなど豪華で、犯罪に手を染めていく主人公たちをコミカルに描いています。
ロマ族を題材に描いた小説
ロマ人は度々小説にも登場します。時代背景を強く感じるものや、厳しい生活の中での物語が多いようです。
カルメン
フランスの作家、プロメスメリメの作品である「カルメン」はスペインの民族構成の複雑さや下層社会の困難などを背景に主人公が犯罪に手を染めてき、カルメンと呼ばれる美人なロマ人女性に振り回されていく悲劇のストーリーです。
この作品には派生作品があり、それらにはフラメンコや闘牛の華やかさも描かれています。
ノートルダム・ド・パリ
荒んだ15世紀のパリを舞台に、協会の弾圧などを描いた社会派の物語です。美人なロマ人の踊り子が登場し、聖職者の心を奪っていきます。
音楽に影響を与えたロマ人
音楽に造詣の深いロマ人。音楽家として成功した有名人も多いです。各国に影響を与えた顔ぶれを紹介していきましょう。
マリスカ・ヴェレス
オランダ出身の女性歌手です。ロックバンドのショッキングブルーでボーカルを務めていました。目鼻立ちのはっきりとした顔で美人のマリスカは、父親がハンガリー出身のロマ人とされています。
カルメン・アマヤ
スペイン出身のフラメンコダンサーです。ロマの家系に生まれ、父親の影響でフラメンコを始め、ハリウッド映画に出演するなど、美人な見た目と確かな技術で活躍を収めています。
ロマ人の有名人・芸能人は？
ロマをルーツに持つ人々は、迫害や差別的な目にさらされる中でも、あらゆる場面で活躍されている人がいます。中にはロマ人だったことに驚いてしまう世界的な有名人もいます。日本人にも馴染みの深い有名人もいます。
顔立ちでは判断が難しく、ロマ人の中でも千差万別色々な人がいることを思い知らされます。
チャールズ・チャップリン
世界的に有名なチャップリンも、ロマ人のルーツを持っています。ロマのルーツを持つ人の中で、一番顔のしれた有名人といえるでしょう。自伝によると、母方の祖母が半分ロマの血を引いているということで、遠いながら、ロマ人の親戚にあたります。
また、「浮浪者」というキャラクターはロマの人々を観察して創り出したという説もあります。
ボブ・ホスキンス
イギリスの有名人、ボブ・ホスキンスは母親がドイツに定住したシンティと呼ばれるロマ人だそうです。15歳のときからサーカスなどの仕事を経て、俳優の道を歩むことになります。
1986年の「モナリザ」という映画では、カンヌ国際映画祭や、ゴールデングローブ賞で賞をもらうなど活躍します。
差別や迫害を受けるロマ人
ロマの血を引きながら、様々な活躍を収める有名人がいる一方で、ロマの人々は大昔から様々な地であらゆる迫害や差別と闘ってきました。島国である日本に生まれた日本人からすれば、その生活は想像しきれないでしょう。
自由な放浪の生活や、物乞いなどでその日暮らしをする様子はあらゆる土地で異端とみられたのでしょう。現代でもヨーロッパやルーマニアなどではその生活スタイルや顔立ちを理由にロマ人は様々な迫害や差別の目にさらされています。
ギリシャで誘拐疑惑をかけられた家族
ギリシャでは白人の少女を誘拐したと疑いを掛けられたロマ人の夫婦がいます。その少女は2013年、ギリシャの中心部にある、ロマ居住地にて発見されました。
ギリシャの警察は麻薬などの捜索のため、ロマの居住キャンプを立ち寄りました。そのとき、周りのロマ人とは似ても似つかない顔立ちをした、金髪で青い目の4歳の少女を保護しました。一緒に暮らしていた夫婦とⅮＮＡ鑑定をした結果、血縁関係にないことが証明され、誘拐したのではないかとその夫婦は疑いにかけられました。
しかし、そのロマの夫婦は友人から引き取ったと主張していました。それでもその主張は認められず、正式に誘拐の罪で告発されました。
しかしその後、ブルガリアに住むロマの夫婦が、その謎の金髪の少女の実の親であることがＤＮＡ鑑定で明らかになりました。その夫婦によると、少女が生まれた頃はギリシャで生活していましたが、生活が貧しく、当時7か月の少女を養子にだしていたようです。このことから、告発されていたロマの夫婦は誘拐の罪からは逃れることが出来ました。
ではなぜ最初からロマの夫婦の言い分は通らなかったのでしょうか。ヨーロッパ各国では現在でもロマ人に対する差別や迫害が続いています。実際フランスでは不法移民の取り締まりの一環で、ロマのキャンプを強制的に排除し、ルーマニアやブルガリアに強制送還させられるケースもあります。少女の顔立ちから、ロマ人とは警察も思わなかったのでしょう。
このような差別や偏見の目、またはむかしから続く迫害の影響が、ロマの夫婦の言い分が通らなかった要因ではないでしょうか。
フランスでの女児埋葬騒動
2015年、フランス・パリではロマ人の赤ちゃんの遺体を市営墓地に埋葬することを拒否される、という騒動がありました。
パリの南方にあるシャンプランの市長は「空き区画がほとんどない、地方税の納税者を優先させるべき」と、ロマ人の埋葬を拒否しました。これに対し、フランス全土で埋葬拒否の真の理由はロマ人に対しての差別に基づくものだと批判が巻き起こりました。フランスの首相であるマニュエル首相も自身のツイッターで「差別的だ」と批判的な意見を発信しています。
後日、そのロマ人の赤ちゃんは数キロ離れた土地で、親族に見守られながら埋葬されました。
ヨーロッパからアメリカへ亡命
ここ数年ではヨーロッパからアメリカへ亡命するロマの人々も増えています。ヨーロッパでのロマ人に対する迫害や偏見から逃れるためです。
2007年にロマ人が多く住むルーマニアやブルガリアがEUの加盟国となりました。そのため、ルーマニアやブルガリアに住むロマ人がヨーロッパに移住しやすくなり、職を求めて国境を越えました。
しかしヨーロッパではギリシャ危機やテロの続発、またはシリア難民の増加により、移民の受け入れには反対する風潮が高まります。昔から差別的な目や迫害にさらされていたロマの人々も、一層敵意が向けられてしまうのです。ルーマニアなどから移ってきたロマ人も例外ではありません。
アメリカが公表したルーマニアに関する人権報告書では、ヨーロッパ各国でのロマに対する差別や迫害を「重要な問題」と指摘しています。具体的には警察からの暴行、嫌がらせ、公共の場所でのサービスの拒否、子供の学校の隔離などが挙げられています。
そんな迫害から逃れるために、ロマ人はヨーロッパからアメリカへ亡命する動きが目立ってきています。アメリカでは元々ロマに対する偏見が浸透しておらず、そもそもロマ人が少数民族であること、「ジプシー」が蔑称であることを知らない人も少なくありません。
また、アメリカでは元々移民の国であるため、ルーマニアなどから移住してきたとかロマ人だからといってその顔立ちや容姿で目立つことも少ないでしょう。
マイノリティであること
ロマの民族は移動を続ける少数民族として、常にマイノリティであることを余儀なくされてきました。元からその土地に住む人々から見れば、自分たちと容姿も言語も違うロマ人を受け入れることは難しかったことでしょう。異文化に対する不信感から、偏見や差別、更には痛々しい迫害での被害も生まれてくるのかもしれません。
現在の日本では難民の受け入れに対して非常に消極的です。異なる文化の人々が急に増えると、秩序が乱れることを懸念しているからです。しかし、インターネットの普及などから日本人の教育や日常的な価値観は国際的な広がりを見せています。いつまでも自分とは違う文化を避け続けることは困難といえるでしょう。
日本人も日本から一歩外に出ればロマ人のようなマイノリティになりえるでしょう。偏見をなくすにはまず、どのような文化が存在しているかを正しく知ることが大切です。そうすることで顔立ちや容姿などで傷つけたりすることは少なくなるでしょう。