方言「ずら」の意味や使い方!語尾にずらをつける地域|静岡/山梨/長野/名古屋
ずらという方言を聞いたことがあるでしょうか。ずらは主に静岡や山梨、名古屋、長野の方言です。最近では妖怪ウォッチのコマさんが語尾にずらをつけて話しており、子供達に人気の方言になってきました。ここでは、ずらという言葉の意味や各地域での使い方についてお話します。
目次
語尾につくと可愛い方言「ずら」が使われる地域は?
女性が方言を話している姿は可愛いと思われるものです。今回ご紹介する「ずら」という方言も、使っているとかわいいと思われる方言のひとつではないでしょうか。
この方言は「~ずら」というように、会話の語尾につくことがほとんどです。語尾に「ずら」をつけて方言を話す地域としては静岡や山梨、名古屋、長野が知られています。他にも宮城といった地域で使われることがあるようです。
これから、「ずら」という方言の由来や意味、各地域ではどのように「ずら」を会話にいれて話しているのかについてご紹介していきます。
方言「ずら」の意味と由来
語尾につける方言として有名なこの「ずら」という方言は、一体いつの時代から使われるようになったのでしょうか。また、その由来はどこからきているのでしょうか。
まずは「ずら」という方言が誕生した経緯について調べました。この記事を読んで、「ずら」という方言の意味や由来について知っていただければと思います。
方言「ずら」の由来
「ずら」の語源は実はまだ明らかになっておりません。しかし、いくつか説があります。ここでは有力な説をひとつだけご紹介いたします。
平安時代の貴族の言葉に推測を意味する「~むずらめ」という 言葉があります。会話の語尾に使う時は「~むずらむ」という使い方がされていたのですが、この語尾が「んずらん」となり、静岡や名古屋などの地域では「~ずら」となったと言われています。
ちなみに遠州ではこれが「~だら」という語尾へと変わり、そこから「~だろう」と変化したのが関東の言葉です。標準語はむしろ、「ずら」から派生してできてた言葉だっだようです。
方言「ずら」の意味
先ほどの「ずら」の方言の由来でもご紹介したとおり、「ずら」は「~むずらめ」という推測を意味する言葉からきています。
推測というのは何かを予想するという意味ですが、そのことから、「ずら」は「~だろう」や「~でしょう」という意味をもつ方言になりました。
そのため、「ずら」の使い方としては会話の語尾につくことがほとんどです。
方言「ずら」の静岡県での意味と使い方
同じ語尾につく方言であっても、地域ごとに「ずら」の使い方や意味が少しずつ違っています。ここからはそれぞれの地域での「ずら」の意味と使い方をご紹介していきます。
まずは、静岡ではどのような意味合いで「ずら」を使っているのか説明いたします。
静岡の方言は県全域で共通して使われるものと、東西で全く違うものとがあります。この「ずら」という方言は主に静岡県東部の人が使う方言として知られています。
静岡弁の方言「ずら」の意味
~ずら | ~だろう ~でしょう |
静岡では「ずら」は推測や同意確認で「~だろう」という意味の方言としての使い方をされています。そのため、会話の語尾に「ずら」がついてきます。
「ずら」は年配の静岡の方が使われている方言です。現在では「ずら」が「~ら」「~だら」に変化しており、若い静岡の方は「ずら」より「~ら」「~だら」という方言の使い方をします。
尚、「~ら」や「~だら」になると静岡県東部の人だけでなく全域で使われる方言になります。
静岡弁の方言「ずら」の使い方
静岡では会話の語尾に「ずら」をつけて「~だろう、でしょう」という意味合いの使い方をするとご紹介いたしましたが、それでは実際はどのように使われているのでしょうか。
静岡弁での「ずら」の使い方の実例をご紹介します。
スタバはどこずらか? ここずらよ。 |
スタバはどこにあるかな? ここですよ。 |
ラーメンが好きずら? | ラーメンが好きでしょう? |
また、北原白秋が作詞した「茶っきり節」という古くから伝わる歌の一節にも「ずら」が使われています。
その一節とはこのような歌詞になっています。
「きゃーるが泣くんて、雨ずらよ」
この歌詞の「きゃーる」はかえる、「~んて」は~なので、「ずら」はもちろん~だろうを意味し、静岡弁が使われています。よってこの歌の歌詞の意味は「かえるが泣くから雨だろう」ということになります。
方言「ずら」の愛知県での意味と使い方
愛知県には名古屋弁や尾張弁、知多弁などの方言があり、住んでいる地域によって方言も様々あります。
そんな愛知県の中でも「ずら」を方言として使っている地域があります。それは、愛知県東部の地域です。愛知県では「ずら」という方言を使っている地域は一部に限られているため、名古屋弁と表記されることが多いです。
それでは、愛知の名古屋弁ではどのように「ずら」を使っているのか、その使い方や意味合いを調べました。
名古屋弁の方言「ずら」の意味
~ずら | ~だろう ~でしょう |
名古屋弁の「ずら」は、静岡弁と同じで推測の「~だろう」や「~でしょう」という意味で主に使われています。よって、会話の語尾に「~ずら」とつけて話されます。
また、「~だろう」という意味では「ずら」だけでなく、別の方言を使うこともあります。この点も静岡県と同じで、「~ら、だら」などを「~だろう」の意味の名古屋弁の方言として使われています。「ら」は主に東三河の地域で多く使われています。
名古屋弁の方言「ずら」の使い方
それでは、名古屋弁では会話の中でどのように「ずら」を使っているのでしょうか。例をご紹介します。
今日は雨が降りそうずら | 今日は雨が降るでしょう |
今日、会社には来んずら | 今日、会社には来ないだろう |
やはり、だいたい静岡県と同じように「~でしょう」や「~だろう」のような推測の意味合いで使われていることが多いようです。
方言「ずら」の山梨県での意味と使い方
山梨県の方言といえば甲州弁が有名です。テレビ番組などで最近よく話題にされているのでご存知の方も多いのではないでしょうか。
そんな山梨県甲州弁も、愛知県と同様に山梨県の東西に分けて話される方言が地域ごとで異なります。しかし、「ずら」という方言は山梨県全域で使われているようです。
では、甲州弁での「ずら」は他の県と同じ意味や使い方をされているのでしょうか。ここでは甲州弁における「ずら」についてお話いたします。
山梨の甲州弁の方言「ずら」の意味
~ずら | ~だろう ~だよね |
山梨の甲州弁でも、静岡や名古屋の方言と同様に「~だろう」という意味で使われていますが、ニュアンスが少し違ってきます。
他の地域では推測の意味合いで「ずら」という方言を使っていますが、山梨では相手に確認をするときに使う「~だろう、だよね」の意味合いが強いです。
甲州弁の方言「ずら」の使い方
また、甲州弁が使われている山梨の方言は、さ行の言葉がは行に変換されて使われます。そのため、相手に確認を取る時に言う「そうでしょう?」という会話は、山梨では「ほうずら?」という方言になります。
その他にも山梨で使われる「ずら」の例をご紹介します。
あのカップル達はどうなるずらか | あのカップル達はどうなるんでしょうか |
早く帰ってこいってこんずら | 早く帰ってきてってことでしょう |
方言「ずら」の長野県での意味と使い方
本州の真ん中にある、大きな県として知られる長野県ですが、その大きさゆえに地域によって様々な方言が存在します。四方を他の県に囲まれているため、近隣の県の方言にも近いものがあります。
そこで、ここからは長野県の方言である信州弁での「ずら」の使い方をご紹介します。長野の「ずら」は他の地域とは違った方言の使い方なのでしょうか。
信州弁の方言「ずら」の意味
~ずら | ~ですよね ~でしょう |
他の地域の方言と異なる点と言えば、長野の信州弁では「ずら」を否定疑問文として使用するのが一般的だということです。
「ずら」という方言は長野県全域にわたって使われていますが、先ほども述べたように長野の信州弁は地域によって異なる意味合いがあることもあります。
信州弁の方言「ずら」の使い方
長野県では「ずら」が方言として使われるようになったのは、比較的最近のことのようです。そのため、「ずら」は静岡県では高齢の方が使っている方言なのに対し、長野県では逆に高齢の方には通じない方言です。
そんな長野の信州弁での「ずら」の使い方をご紹介します。
そうじゃねぇずら | そうじゃないでしょう |
うそずら | うそでしょう |
方言「ずら」の宮城県での意味と使い方
宮城県は東北地方ではありますが、関東地方に隣接しているため両方の方言が入り混じっているような方言になります。
そのため、意外かもしれませんが宮城県の方言にも「ずら」が存在します。ただし、宮城県の方言は他の地域とは違った「ずら」の使い方をします。
ここでは、宮城県仙台での「ずら」がどのように使われているのか、その意味や使い方について説明していきます。
仙台での方言「ずら」の意味
ずら | うそ いい加減であるさま |
仙台では「ずら」という方言を会話の語尾に使うのではなく、「ずら」という単語だけで意味が成り立っています。
仙台の方言におけるずらという言葉の意味は、いい加減である様を意味していたり、うそという意味合いで方言として使われています。
仙台での方言「ずら」の使い方
長野の方言である信州弁も否定疑問文と一緒に使うことが知られていますが、仙台の「ずら」もどちらかと言うとネガティブな意味合いで使われる方言です。
会話の語尾につけるのではなく、名詞として話される方言のため下記のように使われています。
ずらもん | とぼけている人 いい加減な人 |
ずらこがす | 手抜きをする ずるをする |
方言「ずら」を身近にした漫画・アニメ
ここまでは「ずら」の方言の意味や各地域での使い方についてご紹介してきましたが、実際「ずら」を使わない地域に住んでいる人たちにはなかなかなじみがないかもしれません。
しかし、NHK朝の連続ドラマ小説「花子とアン」の花子は地元の山梨県甲府市でのシーンではコテコテの甲州弁で「ずら」を話していたので、一度は耳にした人もいるのではないでしょうか。
最後に、「ずら」を身近にした漫画やアニメについていくつかご紹介いたします。
漫画「銭ゲバ」
日本テレビ系列でドラマ化され、松山ケンイチが主役をつとめた事でも知られる漫画「銭ゲバ」ですが、主人公の蒲郡風太郎(がまごおり ふうたろう)が話す方言に「ずら」が使われています。
風太郎の出身地は長野県松本市。そのため、本作中では口癖のように「ずら」が発せられています。
ドラマでも松山ケンイチさんが「ずら」というセリフを話されており、一躍世間で「ずら」に対する認知度がアップしました。気になる方は一度チェックしてみるのもいいかもしれません。
漫画・アニメ「妖怪ウォッチ」
「ずら」という方言を子供達の間でも有名にしたのは、妖怪ウォッチの第2のマスコットキャラクター的存在である「コマさん」によるものと言っても過言ではないでしょう。コマさんのおかげで多くの子供達が語尾に「ずら」をつけて話す話し方をマネするようになりました。
コマさんは田舎からきた狛犬の妖怪という設定です。明確な地域はしるされていませんが、ネット界隈では甲州弁ではないかと噂されています。
コマさんの使う「ずら」は「~でしょう」や「~だろう」の推測の意味合いの他に、「~です」という意味合いでも多用されているようです。
漫画「ドガベン」
「ドガベン」という昔人気だった漫画のタイトルを、一度は耳にしたことがあると思います。そんな国民的漫画の登場人物のひとりに、殿馬一人がいます。
殿馬一人の特徴と言えば語尾に「ずら」とつけて話すこと。しかし、彼の出身地は神奈川県横浜市です。また、ほとんどのセリフの語尾に「ずら」とつけて話していることから、どちらかと言うと正しい使われ方ではないかもしれません。
殿馬一人が使う方言は、架空の方言と理解していた方が良さそうです。
漫画・アニメ「Dr.スランプ アラレちゃん」
Dr.スランプ アラレちゃんに登場する、お尻のような顔をした緑色の宇宙人を覚えていらっしゃるでしょうか。彼の名前はニコちゃん大王と言って、宇宙人だけど名古屋弁を話すという設定です。
名古屋弁なので、ニコちゃん大王もまた「だがや」などの方言とともに語尾に「ずら」とつけて話をしているシーンがあります。
この頃のアニメでは方言を使って話すキャラクターは珍しかったため、印象に残っている方も多いのではないでしょうか。
「ずら」という方言を使う女性はかわいい
「ずら」という方言に対して馴染みのある方もない方も、ここまでご紹介してきた内容を読んで「ずら」について知識を深めて頂けたのではないでしょうか。
かわいい方言と言えば京都弁や博多弁が取り上げられがちですが、「ずら」という方言も妖怪ウォッチのコマさんのおかげでかわいいイメージが急上昇しています。
「ずら」という方言を聞いた際には、ぜひこの記事を参考にして話のネタにしてみてはいかがでしょうか。きっと盛り上がるかと思います。