キビヤックの味や食べ方は?【イヌイットの海鳥とアザラシの発酵料理】

「キビヤック」という料理をご存知でしょうか?どんな料理なのか、どんな味がするのか知りたいけれど、日本では馴染みがありません。キビヤックはイヌイットの伝統料理で、アザラシの中で海鳥を発酵させる漬物料理なんです。そんなキビヤックの作り方や食べ方をご紹介します。

キビヤックの味や食べ方は?【イヌイットの海鳥とアザラシの発酵料理】のイメージ

目次

  1. 1キビヤックってどんな料理?美味しいの?
  2. 2キビヤックは伝統的な漬物の一種
  3. 3キビヤックの材料は海鳥とアザラシ
  4. 4キビヤックの作り方
  5. 5キビヤックの独特な食べ方
  6. 6キビヤックの気になる味
  7. 7キビヤックの臭いは日本のくさやの上
  8. 8キビヤックは日本のアニメにも登場
  9. 9キビヤックは日本で食べられる?通販は?
  10. 10キビヤックを食べてみたい?

キビヤックってどんな料理?美味しいの?

キビヤックという料理を知らない方や、名前はなんとなく聞いたことがあるけれど、どういう料理かまでは知らないという方が多いのではないでしょうか?

日本では有名ではないし、置いているお店も聞いたことがありません。そんな謎の多いキビヤックという料理の食べ方や作り方などを紹介していきたいと思います。

キビヤックは伝統的な漬物の一種

名前を聞いただけでは見た目も味も全く想像がつきませんが、日本でいうお漬物の一種で発酵食品です。キビヤックの作り方がなかなか凄いのですが、後々ご紹介いたします。

イヌイットの伝統料理

キビヤックは、実はグリーンランドのカラーリット民族やカナダのイヌイット民族、アラスカ州のエスキモー民族の作る、伝統的な料理です。

ビタミン豊富な発酵食品

キビヤックは、イヌイット民族などの極北地域に住んでいる人々にとって、貴重なビタミン源の一つであったと言われています。

発酵によって生成されたビタミンが豊富で、加熱調理で酸化・分解してしまった生肉中のビタミンを補う機能があるとされています。キビヤックは様々なビタミンを摂取することが出来る健康食品としても知られています。

滋養強壮にも良いとのことで、精力をつけるためにキビヤックを食べようとする人も少なくないようです。このキビヤックという食文化の発見によって、北極圏には発酵食品が存在しないという定説が覆ったとか。

キビヤックの材料は海鳥とアザラシ

気になるキビヤックの材料ですが、現地で「アパリアス」と呼ばれる海鳥の一種とアザラシです。もう一度言います。「海鳥」と「アザラシ」です。さっき漬物やら発酵食品やら言いましたが、一気にゲテモノ感が出てきました。

海鳥とアザラシを使った料理なんて作り方が大変で食べ方もなかなか骨が折れそうです。味が非常に気になります。イヌイット民族は凄いです。

キビヤックの作り方

ではさっそく、キビヤックの作り方をざっくりとご紹介していきます。作り方の動画もあるのでぜひ見てみてください。

まずは海鳥の捕獲

キビヤックの作り方は、アパリアスという海鳥を捕まえるところから始まります。北極圏の短い夏の間に飛来した海鳥を捕虫網のような道具で捕獲します。(多くのサイトではこの海鳥をウミツバメとしていますが、それは誤りです。正しくはウミスズメです。)

捕獲した海鳥の内臓が早く痛まないようにするために、直射日光の当たらない涼しい場所に一日ほど放置して冷やします。

アザラシの下処理

まず、アザラシを用意します。そしてアザラシのお腹を裂きます。お腹を裂き終わったら、皮下脂肪のみを残して内臓と肉を全て取り出します(ただし、皮下脂肪を残さないという説もあります)。

海鳥inアザラシ

空っぽの袋状になったアザラシの中に、海鳥の羽などを毟らずにそのままの形で数十羽から数百羽ほど詰め込んで、アザラシのお腹を縫い合わせます。縫合口には、ハエが卵を産み付けるのを防ぐために、日干ししたアザラシの脂(プヤ)を塗ることもあります。

アザラシの袋に空気が入らないようにぎゅうぎゅうに詰めます。空気をきちんと抜かないと、上手く発酵せずに腐ってしまうので注意しましょう。

アザラシの空気抜きと海鳥の発酵・熟成

海鳥入りのアザラシを地面に掘った穴に埋め、その上に石を積んで覆います。なぜ石を積むのかというと、キビヤックの日除けと空気抜きのため、キツネなどに食べられないようにするためです。

イヌイットだけでなくキツネもキビヤックを食べるようです。食べ方が気になります。石を積んだら、二ヶ月から数年間放置して発酵・熟成させます。

いただきます

発酵・熟成させたらキビヤックという名の漬物の完成です。地面からアザラシを掘り出し、アザラシの中から漬物になった海鳥(アパリアス)を取り出して食します。

キビヤックの作り方の動画もどうぞ

ここで書いたようなことが載っている動画ですが、画像で気分が悪くなる方もいらっしゃると思いますので、注意してご覧ください。

キビヤックの独特な食べ方

作り方がなかなか凄まじかったキビヤックですが、食べ方も結構凄いです。大きく分けると二種類になります。それでは、キビヤックの食べ方をご紹介します。

そのまま食べる

キビヤックのそのままの食べ方は、アパリアスの尾羽を毟り取ったあと、総排出口に口をつけて内臓をすすります。内臓は発酵して液状になっているようです。

もちろんアパリアスのお肉もいただきます。お肉の食べ方は首筋あたりにガブッと噛みつき、皮を引き裂きながらそのまま食します。皮もそのままずるずると剥ぎながら、口に含み食べていきます。

血液は心臓のあたりの血の塊を味わいます。脳みそも、歯で頭蓋骨を割って食べます。頭蓋骨を歯で割るなんて、イヌイットは歯も強靭です。

ちなみに、キビヤックの残りの部分は捨てるのか?と思いましたが、イヌイットはそんなもったいないことはしません。翼や背骨、骨盤などをガムでも噛むようにして楽しみます。

食べられる部位を全て食べつくしたら、骨盤などをチュッパチュッパ吸って余韻を楽しみます。日本人からすると、中々強烈な食べ方の漬物です。

調味料にする

キビヤックの調味料としての食べ方は、焼いたお肉に発酵して液状になったアパリアスの内臓をつけて食べます。

イヌイットの誕生日やクリスマス、結婚式や成人式などの祝宴の席では必ず用意されるごちそうの一つだそうです。日本でも調味料をお肉につけて食べることはあるので、こちらの食べ方は普通です。

キビヤックの気になる味

イヌイットのごちそう「キビヤック」ですが、食べたことのある日本人もいるらしいです。キビヤックの味や食感については、アパリアスの部位によって異なるそうです。

臭いは強烈ですが、とてもおいしいそうで、ブルーチーズや海苔を巻いたゴーダチーズ、ヨーグルトのような味がすると言われています。食感については、舌がヒリヒリするような刺激を伴うとされています。

キビヤックを食べた日本人いわく、どうしておいしいかというと、だんだん腐りかけてくるとアザラシの皮下脂肪がアパリアスの体の中に徐々に溶け込んでいくからだそうです。

それで独特のにおいと味が付くわけです。キビヤックのお肉は、とても濃厚な鶏肉の味だと言われています。

キビヤックの臭いは日本のくさやの上

キビヤックの臭いは強烈で、日本の「塩辛」や「くさや」に似ているそうです。なお、キビヤックの体液が手指に付着すると、石鹸で洗っても数日間は臭いが落ちないというので注意しましょう。

その強烈な臭いは世界第4位の臭さだそうです。漬物としてはかなり臭いです。世界の異臭料理として有名で大変臭いのキツい漬物キビヤックですが、上には上がいるということで、他の異臭料理も紹介していきたいと思います。

第4位!キビヤック

第4位は今回ご紹介してきたアパリアスの漬物「キビヤック」です。キビヤックは食べ方も作り方も強烈ですが、臭いも強烈です。臭いを数値であらわすと1370Au。

ちなみに、日本の「くさや」は第5位の1267Auでした。私はくさやを食べたことはありませんが、食べた人は臭いを気にしなければおいしいと言っています。食べる機会があれば食べてみようと思います。

第3位!エピキュアーチーズ(缶詰チーズ)

第3位はニュージーランドの「エピキュアーチーズ」です。臭いは強いですが、その分コクが深いことで人気です。臭い食べ物の中では珍しく人気な食べ物のようで、酷評が少ないそうです。こちらの数値は1870Auでした。チーズは大好きなので食べてみたいです。

ニュージーランドの最大企業であるフォンテラで作られた「エピキュアーチーズ」は、なんと36ヶ月も熟成させるそうです。約3年です。これは臭くて当たり前というか、臭いのもうなずけます。しかし、最近では臭くないエピキュアーチーズも販売されているようです。

第2位!ホンオフェ

第2位はお隣の国、韓国の食べ物「ホンオフェ」です。ガンギエイの刺身、あるいは切り身をツボなどに入れて発酵を促進させた食べ物です。

エイの肉をツボなどに入れて冷暗所に置き、10日ほど発酵させるとエイの持つ尿素などが加水分解されてアンモニアが発生し、ホンオフェが出来上がります。発せられる臭いがアンモニアなら、臭いのもうなずけます。

そのアンモニア臭から外国人や初心者には敬遠されがちですが、韓国では高級食品の一つであり、朝鮮半島南部の「ホンオフェ」の本場では結婚式などで振舞われるなど、冠婚葬祭には欠かせないごちそうだそうです。

臭いの数値は6230Auと、第3位のエピキュアーチーズと比べたら一気に数値が跳ね上がりました。

第1位!シュールストレミング

第1位はスウェーデンの「シュールストレミング」です。これは結構有名でテレビでも取り上げられたこともあるので、聞いたことがある人もいるのではないでしょうか?

画像はニシンを焼いたものですが、どういう食べ物なのかというと、ニシンを塩漬けにして缶の中で発酵させるだけという、いたってシンプルな食べ物です。

しかし臭いはかなり強烈で、「魚が腐った臭い」や「生ごみを直射日光の下で数日間放置したような臭い」など、散々な言われようです。数値にすると驚異の8070Au!間違いなく臭いです。

室内で食べるとなかなか消えないので、屋外で食べることが多いようです。場合によってはウォッカなどの酒類、または牛乳で洗うこともあり、アクアビット(北欧の蒸留酒)で洗うと3~4割臭みが減るといいます。

このシュールストレミングは日本の漬物のように発酵状態を保ったまま缶詰にされ、缶の中で発酵が進行するようです。シュールストレミングを調べていた時に読んだ、食べるときの注意事項が面白かったので下記に載せたいと思います。

①必ず屋外で、出来ればビニール袋(ゴミ袋)の中で缶を開けてください。発酵が進んでいると汁が噴き出す恐れがあります。周囲や風下に人がいないことを充分に確認してから缶を開けてください。

②衣服や室内に汁が飛ばないようにご注意下さい。汁がついた服は、洗濯してもシミや臭いは取れなくなります。あきらめましょう。

③食べ終わった後の缶、汁は適切に処理をお願いします。

どれだけ臭いのでしょうか?もし室内で開けていたら大変なことになりそうです。一生臭い部屋なんて嫌です。だから必ず屋外で開けるように注意されているのでしょう。

キビヤックの体液は、服についたら数日間は臭いがとれないといいましたが、シュールストレミングは洗濯してもずっと臭いがとれません。そんな臭いシュールストレミングを食べたいとはあまり思いませんが、正直興味はあります。

キビヤックは日本のアニメにも登場

実はキビヤックは、日本の漫画やアニメにも登場していたのです。「もやしもん」という漫画をご存知でしょうか?アニメ化やドラマ化もされている「もやしもん」。2007年10月から12月までフジテレビのノイタミナ枠で放送されました。

2010年には実写ドラマ化もされており、7月から9月までアニメと同じくノイタミナ枠で放送されました。そして、2012年7月から9月まで「もやしもんリターンズ」がアニメの続編として放送されました。

もやしもんの概要

作者の説明によると「農大で菌とウイルスとすこしばかりの人間が右往左往する物語」だそうです。東京にあるとされる「某農業大学」に入学した、「菌」の存在を肉眼で視認できるという不思議な力を持つ主人公・沢木惣右衛門直保をめぐる学園ドラマです。

直保に見える菌は、デフォルメされたキャラクターとして描かれています。作中で菌たちが度々発する「繁殖する」、「発酵・腐敗させる」ということを意味する「かもす(醸す)」は、作品のシンボル的なフレーズになっています。

デフォルメされた菌たちは可愛く、主に登場する菌類がデザインされたTシャツやぬいぐるみ、フィギュアなどのグッズも発売されています。

キビヤックはアニメ第1話に登場

それで、キビヤックは何話に登場するの?というと、アニメ第1話「農大菌物語」に登場します。農大の登場キャラクターが実験で土の中に埋めていたアザラシ(キビヤック)を、主人公が死体と勘違いをして大騒動になりました。

作中でも、教授がキビヤックを食べている様子を見ることが出来ます。イヌイットと同じように総排出口に口をつけてすすっています。やはりキビヤックは臭いらしく、食べている本人を除き、登場キャラクターたちは鼻をおさえています。

キビヤックは日本で食べられる?通販は?

キビヤックは日本で食べられるのか?と思い色々な検索ワードを入れて調べたところ、なかなかヒットしませんでした。「キビヤックは輸入が禁止されている」、「キビヤックを商売として仕入れるとなると、そんな冒険はできないと思う」などの意見が多数でした。

確かにキビヤックを日本で食べるとなると、臭い対策が問題になります。キビヤックは世界第4位の臭さですので、ご近所からのクレームが来ることもあるかもしれません。

通販サイトでも調べたのですが、キビヤックで検索をかけてヒットしたのは、何故かシュールストレミングでした。何故だ。どうやら、キビヤックは通販でも購入することは不可能なようです。とても残念です。

キビヤックを食べてみたい?

いかがでしたでしょうか?ここまでキビヤックの作り方や食べ方を紹介してきましたが、是非とも食べてみたい!と思った方はいるでしょうか?

このキビヤックは単なる一つの調理法というわけではなく、保存食としても機能しており、過酷な環境を生き抜くために生み出されたようです。

キビヤックの作り方や食べ方を知ると中々グロテスクな食べ物ですが、イヌイット民族にとっては大切な伝統料理なので、日本人もキビヤックという漬物に興味を持っていただけたら嬉しいです。

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