高知白バイ衝突死事件の真相!内部告発が多数あった冤罪事件の真実は?
2006年に高知で白バイとスクールバスが衝突した「高知白バイ衝突死事件」は不可解な点が多く、警察の内部告発もあり冤罪事件ではと大きな注目を集めた事件です。高知白バイ衝突死事件とはどういった事件だったのかや事件後から現在までの経緯などについて解説します。

目次
「高知白バイ衝突死事件」とは?
2006年に起こった高知白バイ衝突死事件は今でも謎が残っている事件です。
どういう事件であったかをまずは紹介します。
白バイがスクールバスと衝突し巡査長が死亡
2006年の3月に高知県の高知市で「高知白バイ衝突死事件」と言われる事件が発生しました。
この事件は高知県の県道交差点で白バイと遠足中の中学生を乗せたスクールバスが衝突し、白バイを運転していた高知県警の巡査長が死亡した事件です。
スクールバスには運転手の他に、教員3人と中学生33人が乗車していましたが、全員怪我もなく無事でした。
スクールバスと衝突し死亡した巡査長は当時26歳で、双子のお子さんが生まれたばかりの時にこのような事件が起きてしまいました。
安全確認不十分としてスクールバス運転手を逮捕
この高知白バイ衝突死事件は道路の左側にあるレストランから出てきたスクールバスが大通りを横切って右折しようとしていたところ、大通りを走行していた高知県警の巡査長の白バイと衝突したというものです。
警察は、レストランの駐車場から大通りに出てくる際にスクールバスの運転手の安全確認が不十分だったのが衝突の原因だったとして、スクールバスを運転していた運転手を現行犯逮捕しました。
現行犯逮捕時は業務上過失障害の疑いということで逮捕されましたが、その後業務上過失致死罪へと切り替わってスクールバスの運転手は起訴されました。
「高知白バイ衝突死事件」は冤罪事件?
高知白バイ衝突死事件が大きな事件として注目を集めたのは、スクールバスの運転手(被告側)と警察、検察側の主張に食い違いがあり、冤罪事件なのではないかという疑いが出てきたからです。
被告側の主張
スクールバスの運転手は、レストランの駐車場から道路に入る時には一旦停止して十分に安全確認を行ってから道路に進入したと主張しました。
その後も安全確認を行いながら中央分離帯付近まで進入して再び一旦停止をし、対向車の有無など安全確認を行っている時に高知県警の巡査長が運転する白バイが衝突してきたと主張しました。
安全確認は十分に行ったということと、白バイと衝突した時はバスは走行しておらず停車していたというのが真実だというのがスクールバスの運転手(被告側)の主張です。
警察・検察側の主張
一方、高知県警の警察、検察側の主張はスクールバスの運転手の主張とは大きく異なる主張でした。
スクールバスがレストランから道路で出る時に一旦停止は行ったが、運転者の安全確認が不十分なまま道路に進入し、その後、時速10キロで走行中に6.5メートル先で高知県警巡査長が運転する白バイと衝突して跳ね飛ばし、巡査長と白バイを2.9メートル引きずってから停車したと主張しました。
安全確認が不十分であるということと、衝突時、スクールバスは走行中だったという点がスクールバスの運転手の主張とは全く異なるためどちらかが間違っている、もしくは嘘をついているということになります。
バスは停止していたと複数の証言
高知白バイ衝突死事件が冤罪事件なのではないかと多くの人が疑念をもつことになったのは、運転手側と警察、検察側の主張が異なっていたからというだけではなく、衝突時にバスは停止していたという証言がたくさんあったからです。
スクールバスに乗車していた女性教諭は「運転手のすぐ後ろの席に座っていたけど、事件があった時スクールバスは停車していた」と証言しています。
同じくスクールバスに乗車していた校長先生も「事件があった時、スクールバスが停止していたことは明確だ」と裁判所でも証言しています。
さらにバスに乗っていた33人の中学生たちもバスは停止していたと証言しています。
このようにバスの中にいた数多くの人たちがバスが停止していた、バスが走行していて衝突時に急ブレーキをかけたというようなことはなかったと証言しています。
これだけの数の人が同じ証言をしていることから世間も冤罪事件なのではと思うようになりました。
「高知白バイ衝突死事件」事件後の警察の対処に疑問
スクールバスの運転手は現行犯逮捕されましたが、その後の警察の対応には疑問が残ります。
取り調べもなく釈放
高知白バイ衝突死事件で逮捕されたスクールバスの運転手はまともな取り調べも行われないまま2日後釈放されます。
その後、在宅起訴されて裁判で安全確認が不十分が事故の原因であることを告げられます。
事故発生時に現場に誰もいなかった警察が、運転をしていた張本人に詳しい取り調べを行わないという高知県警の対応はあまりに不自然といえるでしょう。
「高知白バイ衝突死事件」スリップ痕の謎
高知県警の巡査長が運転する白バイがやってきた時にスクールバスは停車していたということは被告人本人以外にも、多くの人が証言しています。
それでも警察側はある証拠を出して、事故が起こった時にバスは走行中で衝突して急ブレーキをかけたと主張しました。
不自然なスリップ痕
警察側が証拠として挙げたのが事故現場に残っていたとされるスリップ痕の写真です。
事故が起きた時に停車していたというのが真実ならスリップ痕ができるわけがないというのが警察の言い分です。
その後、スクールバスの前輪の後ろに黒いスリップ痕が伸びている写真が裁判でも証拠として提出され、それが判決の大きな決め手となりました。
警察側の証拠偽装?
事故現場にスクールバスのスリップ痕が残っていたというのが真実であれば、バスは停車していなかったという可能性が極めて高くなりますが、裁判でも証拠として提出されたスリップ痕の写真が偽造されたものではないかと言われています。
スリップ痕の写真に納得がいかなかったスクールバスの運転手が自動車運転事故鑑定人に写真の分析を依頼しました。
自動車運転事故鑑定人が分析したところ、これが本当のタイヤ痕ならタイヤの溝の跡も残るはずだがそれが全くみられないということが分かりました。
また、道路の凹凸のへこんでいる部分まで黒くなっているので、タイヤ痕ではなく何か液体を塗ったものであると考えられることから、タイヤによるスリップ痕ではないという結論を出しました。
この結果によって、警察側が事故時にバスが走行していたということを主張するために証拠を偽装したのではないかと言われています。
「高知白バイ衝突死事件」裁判
スクールバスの運転手側と警察の意見は食い違ったまま裁判が行われましたが、結果はどうなったでしょうか。
判決は禁錮1年4ヶ月
高知白バイ衝突死事件が起きてから翌年の2007年に高知地方裁判所で初公判が行われました。判決から先に言うと、禁固1年4ヶ月の実刑でした。
裁判では、被告人の安全確認はじゅうぶんに行ったという証言や、事故時にスクールバスは停止という本人やバスの同乗者の証言などは信ぴょう性に欠けると判断されました。
また、判決の大きな決め手となったスリップ痕の写真の偽装ではないかと被告側が主張しましたが、警察が現場検証を行っている時はたくさんのマスコミや野次馬がいたため、そんな中で偽装するということは考えにくいということで主張は却下されました。
判決に納得がいかない元スクールバスの運転手はすぐに高知高等裁判所に控訴しましたが、高知高等裁判所は、新たな証拠が出たわけでもないため一審で審議された内容でじゅうぶんだということで控訴を棄却され再審は認められませんでした。
当然、被告側はその棄却に納得いかず、すぐに最高裁に上告しますが、翌年の2008年に上告も棄却され再審が認められず、禁固1年4ヶ月の実刑が確定し、元スクールバスの運転手は同年の10月から刑務所に服役しました。
「高知白バイ衝突死事件」の様々な疑惑
高知白バイ衝突死事件は裁判で禁固1年4ヶ月の実刑判決が下され、元スクールバスの運転手は刑期を終えて出所しています。本来なら高知白バイ衝突死事件は幕引きとなるところですが、いろいろな疑惑が払拭されず、冤罪事件の可能性は残ったままです。
違法な白バイの高速走行訓練?
数ある疑惑の一つが警察が公道で高速走行訓練を行っていたのではないかという疑惑です。
当時、警察が内密に公道で白バイの高速走行訓練を行っていて、高知でも公道でその訓練が行われていたと言われています。高知白バイ衝突死事件で死亡した巡査長も高速走行訓練中で、高速で走行していたため引き起こした自損事故では、という疑惑があります。
この疑惑が真実なら、高知県警の警察官が違法な公道での高速走行訓練の事実がその後の調査で表沙汰になるのを防ぐために証拠偽装を行った冤罪事件という可能性が考えられます。
裁判所の対応に矛盾?
裁判では、事故直前に高知県警の巡査長が走行しているのを見た高知県警の警察官がいて、時速60キロくらいで走行していたと証言しましたが、事故直前に事故現場近くで白バイがものすごいスピードで自分の車を追い抜いて行ったという目撃証言もありました。
それでも裁判では目撃した警察の証言が有効であると判断され、巡査長の高速走行が原因による自損事故という被告側の主張は却下されました。
スクールバスに同乗していた人達の証言はかばって証言している可能性があるので信ぴょう性が欠けると判断され、同じ高知県警の警察官が巡査長をかばうカタチとなる証言は信ぴょう性があると判断されました。
この裁判の判決には一貫性がなく、裁判所と高知県警がつながっているのでは?という疑問をもたれても仕方がありません。
遺族に支払われた1億円は保険金詐欺?
高知白バイ衝突死事件が冤罪事件ではないかと疑惑をもたれる理由の一つに保険金が絡んでいるものがあります。
高知白バイ衝突死事件によって死亡した巡査長のご遺族には、高知地裁の和解勧告によって殉職したご遺族に和解金1億円が支払われることになり、全国自治協会と保険会社によって支払いが行われました。
しかし、この保険金の支払いはあくまで巡査長が公務中の殉職とみなされたからであり、これが仮に違反の高速走行による自損事故による死亡だったとしたら、保険金は保険会社ではなく、警察庁が支払うことになります。
なので、警察が多額の保険金の支払いを避けるために、巡査長には原因がなかったということに真実をねじ曲げたのではという疑惑が出ているのです。
この高知白バイ衝突死事件がもし警察の手によって真実を曲げられた冤罪事件であるならば、同時に保険金詐欺も行ったことにもなります。
相次ぐ内部告発を報道しない各新聞社
高知白バイ衝突死事件にはいろいろな疑惑があったため、真実を知るために動いた人もたくさんいました。
その一人である高知市の土地改良換地士の男性は、真実を追求している自分のところに警察からの内部告発の手紙がたくさん届いたと公表しています。
内部告発の手紙には証拠ねつ造があった事実やねつ造に関わった人物も記されています。
この男性は会見でも内部告発の手紙をもらったことを公表し、高知白バイ衝突死事件が真実がねじ曲げられた冤罪事件であることを訴えました。また内部告発の手紙に記されているねつ造に関わった人物の証人申請も行いました。
大きな注目を集めている事件で、警察から多数の内部告発があったというのは大きな事件であるはずですが、高知の各新聞社はこの内部告発があった事実に関して全く触れませんでした。
警察の内部告発を新聞社が全く報道しないというあまりに不自然な行動によって、多くの人が高知白バイ衝突死事件に対する疑惑を深めることになりました。
「高知白バイ衝突事件」のその後
多くの疑問が残されたまま判決が下された高知白バイ衝突死事件のその後はどうなったのでしょうか。
2010年満期出所した元運転手が再審請求
高知白バイ衝突死事件で実刑判決となった元スクールバスの運転手は2010年2月に服役を終えて満期出所しました。
その後、元運転手は高知地裁に再審請求し、証拠のブレーキ痕の写真がねつ造であると訴えましたが高知地裁はねつ造の可能性はないと2014年に再審請求が棄却されました。
その後も高松高裁へ再審請求しましたが2016年に再審請求が棄却、さらにその後最高裁に再審請求しましたが、2018年の5月に再審請求が棄却されています。
真実はまだ明らかになっていない
2006年に起きた高知白バイ衝突死事件は長い年月が経った今でも真実は明らかになっていない状況です。
再審請求は棄却されても何度でも請求することができます。これまでの事件でも何度も再審請求が行われたケースがあり、10度の再審請求が行われたケースもあります。
よって、今回の高知白バイ衝突死事件も再審請求することは可能ですが、これまでに提出していない新しい証拠が必要となります。
現在、高知で夫婦二人で暮らしている元運転手は再審請求が棄却されたその後も無実を訴え続けていますが、第2次再審請求が行うかどうかは明言を避けています。
「高知白バイ衝突死事件」の真実
高知白バイ衝突死事件が冤罪事件だったということが仮に真実であるとするなら真実をねじ曲げることに関わった人物はたくさんの人たちを不幸にしていることになります。
冤罪が真実なら
冤罪によって禁固1年4ヶ月の実刑判決を受けて服役をし、その後の人生を大きく狂わされた元運転手が真の被害者であるのは間違いありませんが、被害を受けたのは元運転手だけではありません。
元運転手の身内も大きな被害を受けていますし、事件当日バスに乗っていた33人の中学生も大人によって真実をねじ曲げられたという過去を背負って成人になっていることになります。
勇気をもって内部告発をした警察官は同じ警察官の行為に大きく失望しながら内部告発をしたでしょう。
また、ねつ造されたのが事実であれば、死亡した巡査長は結果的にねつ造に加担しているかたちになってしまいますし、巡査長の名誉を傷つけ、巡査長の遺族も大きく傷つけることになるでしょう。
もしねつ造した人物がいるのであればこのように多くの人を不幸にした行為は許されるべきではありません。
事件発生から長い年月が経って多くの人の記憶から薄れていっているかもしれませんが、いつの日か高知白バイ衝突死事件の真実が究明されることが期待されます。