2018年11月07日公開
2018年11月07日更新
致し方ないの意味や類語・使い方とは?仕方ないとの違い/致し方ありません
「致し方ない」は、今はあまり使われません。若い人たちは聞きなれない言葉かもしれません。しかし、ビジネスの世界ではまだまだ常用されています。「致し方ない」の意味や正しい使い方を覚えて、周りの人をあっと言わせてやりましょう。
目次
「致し方ない」ってどんな時使うの?
普段、「致し方ない」という言葉を使うことはありますか?今はあまり聞きなれない言葉ですが、ビジネスの場やフォーマルの場、小説などでは使うことが多いです。
「仕方ない」と同じようなニュアンスで使うことが多いですが、その違いや意味はご存知ですか?この記事では「致し方ない」の意味や類義語、使い方や使う場面などをご紹介します。
そもそも「致し方ない」の意味とは?
「致し方ない」には、仕方ない・やむを得ないなどの意味があります。「致す」という、「する」の敬語を使うことで、さらに丁寧にした言い回しです。
避けることが不可能な場面や、他に方法がなくやむを得ない場面、どうあっても改善の見込みがないという場面で使われることが多いです。このような状況を受け入れるしかないという意味です。
「致し方ない」の類語
「致し方ない」の類語は、「仕方ない」、「余儀ない」、「不可避」、「しようがない」、「やむを得ない」、「他に打つ手がない」、「どうしようもない」、「方法がない」、「にっちもさっちもいかない」などです。
いずれも避けることができない状況を受け入れるしかないという意味を持ちます。
「致し方ない」と「仕方ない」の違い
「致し方ない」は「仕方ない」の敬語にあたります。語源が同じで、類語の項目であげましたが同義語といっていいでしょう。
「致し方ない」は小説でよく目にしますが、かしこまった場面やビジネスの場、フォーマルの場でもよく使われます。「仕方ない」は日常会話でよく使われます。「致し方ない」と「仕方ない」は同じ意味であるため、基本的に置き換えることも可能です。
「致し方ない」の使い方《例文紹介》
それでは「致し方ない」の使い方を紹介します。あまり聞きなれないという方も、例文を紹介しますので使い方をマスターして、然る場面で正しく使えるようにしましょう。
目上の人に対して「仕方ない」を使うのはふさわしくありませんので、「仕方ない」を敬語に言い換える必要があります。「仕方ない」という言葉をそのまま使うのではなく、敬語の表現に変えて相手に伝えましょう。
「仕方ない」の敬語表現としては、「致し方ない」、「致し方ありません」、「致し方ございません」、「他に方法がございません」などといった、別の言葉や表現を使った言い方があります。
例文1.力が及ばず致し方ない
こちらは「仕方なくあきらめる場面」での例文になります。勝負の世界で、実力がプロと素人ぐらいの差があったとき、素人の実力の人がプロの実力の人に勝つのは無理といっても過言ではありません。このような場合は、どうしようもないことなのであきらめの意味で用いることができます。
また、「商品Aが望ましいがコストがかかりすぎるので商品Bにせざるを得ない」という場合も、「致し方ない」を使うことができます。妥協の意味でも用いることができます。
例文2.これ以上は致し方ございません
こちらは、「自分たちの力ではもうどうすることもできない」という場合に使われます。
「大変申し訳ございませんが、弊社ではこれ以上は致し方がございません。これ以上のご要望に関しましては△△までお問い合わせください。」というように、お客さんがお店に対して無理な要求をしてきた際に、断る場面で用いられます。
また、「私どもでは対応しきれず、致し方なく連絡させていただきました。」というように、これ以上他にどうすることもできなかったので助けを求める文にも用いることができます。
例文3.この結果は致し方あるまい
こちらは、自分に言い聞かせるようなときに使われる例文です。時代の流れで世の中のニーズはめまぐるしく変わっていきます。
そのため、いままで黙っていても売れていた商品が、突然売れなくなってしまうこともあります。このような場合売り上げが減少するのは「致し方ない」といえます。
その企業の人は「このような結果になってしまうのは致し方あるまい」と、自分に言い聞かせるように使うことができます。
「致し方ない」を敬語で使う場合の使い方
前述したように「致し方ない」は「仕方ない」の敬語表現です。「致し」は「する」という動詞の敬語の謙譲語です。「致し」に方法を表す「方」が合わさって、「致す方法がない」が言い変わって「致し方ない」と言われるようになったことが語源です。
しかし、「致し方ない」だけでは、完璧な敬語ではありません。後ろにさらに敬語をくっ付ける必要があります。
敬語では「致し方ありませんでした」
「致し方ない」を敬語で使うときには、語尾に何か付け加えるようにします。「致し方ございませんでした」や「致し方ありませんでした」などというようにさらに敬語を付け加えます。
また、「致し方なく」と活用させて、「電車が止まってしまったため致し方なくキャンセルとなりました。」などと使うこともできます。
「致し方ない」を使う場面
「致し方ない」を使う場面を紹介します。あまり聞きなれないという人も、これから紹介する場面をイメージしてみてください。意外と「致し方ない」といえるシチュエーションが身近にあるかもしれません。
あきらめるとき
仕方なくあきらめるという場面です。「精一杯努力をして、手を尽くした」という状況で「致し方ない」を使うことができます。避けようがなくしょうがなく諦めるというときに使われます。
妥協するとき
社会はたくさんの人が支え合って成立しています。そのため一人が意見を押し通そうとしてもうまくはいきません。時には妥協して人間関係を円滑に回すことが必要です。このような場合に「致し方ない」ということができます。
また、ベストではないがこれ以上はどうしようもないので、このあたりで妥協するという場合も使うことができます。
打つ手がないとき
打つ手がないときも「致し方ない」を使うことができます。例えば、自然災害などが起こったとき、人の力ではどうしようも避けようがありません。救助活動をしようにも二次災害の危険があり、打つ手がないときなどに使われます。
良い策がないとき
ある問題が起きて、たくさんの人で知恵を出し合ってもうまく打開策が見いだせないことがあります。
例えば、納得がいっていないときでも、損切りしなければさらに損失が広がることが考えられる場合には、泣く泣く損を出す決断をしなければならないこともあります。このような場合、「致し方ない」といえます。
「致し方ない」を使う際の注意点
「致し方ない」は敬語ですので、目上の人と話すときに使用することが多いですが、使い方に注意点があります。使い方を間違うと、失礼になってしまうことがありますので正しく使えるように確認しておきましょう。
まずは謙譲語を理解しよう
「致し方ない」は敬語の中でも、謙譲語にあたります。謙譲語は、敬語の一種で、自分の動作をへりくだって表現することで相手を持ち上げる単語や語法をいいます。
自分または自分の側にあると判断されるものに関して、へりくだった表現をすることにより、相対的に相手や話し中の人に対して敬意を表すものです。
目上の人の行動を示すときは失礼にあたる
謙譲語は自分の動作をへりくだって表現する方法です。そのため目上の人がしたことに対して使用するのは失礼にあたります。
例えば部長が他になすすべがなくて仕方なく何かをやめた場合に、「部長は致し方なくやめた」と表現すると、部長の行動を「致す」としているため失礼にあたります。
そもそも目上の人がしたことに対して「仕方ない、どうしようもない」などと評価すること自体、印象がよくありません。
目上の人に「致し方ない」を使うとき
目上の人に「致し方ない」というニュアンスの言葉を使いたい場合は、「最善を尽くされたが他に方法がなくおやめになった」などという表現を使うのが望ましいでしょう。
「致し方ない」という表現は目上の人の行動を示す際にいうのは使い方が間違っているので、違う表現に言い換えましょう。
敬語の使い方
あなたは敬語の使い方に自信はありますか?ここでビジネスマナーとして身に着けておくべき敬語をご紹介します。
敬語は相手に敬意を示す手段です。完璧ではなくても、敬語を使おうとする姿勢が相手への敬意として伝わるので、自然に使えるようになっておきたいものですね。
丁寧語
話し手が、聞き手に対して敬意を直接表したり、改まった気持ちで言葉遣いを丁寧にしたりするときに用いられます。「です」「ます」「ございます」などがあります。また、接頭語「お」も、「お弁当」「お酒」「お茶」などのように丁寧語として用いられます。
尊敬語
相手に対して敬意を表現するときに用いられます。相手の動作や持ち物など、相手に関わるものごとについて述べるときに用います。「お客様がいらっしゃいます」のように主語は相手になります。
謙譲語
謙譲語は、敬語の一種で、自分の動作をへりくだって表現することで相手を持ち上げる単語や語法をいいます。
自分または自分の側にあると判断されるものに関して、へりくだった表現をすることにより、相対的に相手や話し中の人に対して敬意を表すものです。
よく使われる敬語一覧
ビジネスの世界でよく使われる敬語表現をご紹介します。ただ「です」「ます」を付けるだけではないものもたくさんあります。しっかり覚えてしかるべきときに使えるようにしておきましょう。
基本形 | 丁寧語 | 尊敬語 | 謙譲語 |
する | します | なさる・される | いたす |
言う | 申し上げます | おっしゃる | 申し上げる |
行く | 参ります | いらっしゃる | うかがう |
来る | 来ます | いらっしゃる・おいでになる | 参る |
知る | 知っています | ご存じだ | 存じる・承知する |
食べる | 食べます | 召し上がる | いただく・頂戴する |
わかる | わかりました | おわかりになる・ご理解いただく | かしこまる・承知する |
与える | 差し上げる | くださる | いただく・頂戴する |
帰る | 帰ります | お帰りになる・帰られる | おいとまする |
間違えやすい言葉使い
目上の人と話す際に正しい敬語で話すことができているでしょうか。敬語のように見えて、失礼にあたってしまう言葉もあります。
ここでは間違えやすい言葉使いを紹介します。何気なく発した言葉が失礼だったということがないようにしっかり覚えておきましょう。
一人称
ビジネスの場や目上の人に対しては、「わたし」「わたくし」というのがマナーです。「僕」や「自分」という表現は原則NGです。初対面や取引先の人には失礼にあたるので避けましょう。
相手の会社
相手の会社のことは言うときは「御社」、書くときは「貴社」といった表現を使います。なお、自分の会社をへりくだって表現する場合は、「弊社」と表現します。こちらはビジネスシーンでは必須の表現です。
同意するとき
相手に同意するときに使う敬語は、「かしこまりました」または「承知いたしました」です。「わかりました」や「了解しました」、「OKです」といった表現は敬語表現にはあたりません。
比較的に使うことが多い敬語ですので正しく使えていると、上司や取引先からの評価も上がるに違いありません。この表現はしっかり押さえておきましょう。
謝罪するとき
謝罪の気持ちを示す敬意表現は「申し訳ございません」です。「ごめんなさい」や「すみません」は敬意ではありません。目上の人に言ってしまうと失礼にあたるので注意しましょう。
さらに、「すいません」には、謝罪の意味が含まれておりません。失礼なうえに気持ちも伝わらないので、絶対に使うことのないように注意しましょう。
ねぎらうとき
ねぎらいの気持ちを表す言葉は「お疲れ様でした」、「ご苦労様でした」などが一般的ですが、「ご苦労様でした」は目上の人が目下の人に使う言葉です。そのため、目上の人に「ご苦労様でした」というのは失礼に値します。
先輩や上司、取引先な人などには「お疲れ様でした」というのが適切です。また、面接終了時に「本日はご苦労さまでした」といってしまう人がいますが、「ありがとうございました」というのが適切ですので覚えておきましょう。
「致し方ない」を正しく使おう
いかがでしたでしょうか。この記事では「致し方ない」の意味や使い方、注意点をご紹介しました。日常生活ではほとんど使われることはなく、「しょうがない」や「仕方ない」という表現がよく使われます。ビジネスの世界ではよく使われる表現ですので、覚えておいて損はないでしょう。
「致し方ない」を使う際には、「自分がへりくだる謙譲表現を含む言葉だから、目上の人に使うと失礼になる」ということを忘れずに、使い方を間違えないようにしましょう。
少し難しい表現ではありますが、うまく使いこなせるとあなたの評価は上がり、コミュニケーション能力もあがります。
相手との関係性やその場の深刻さなどと合わせて臨機応変に使えるようになると、きっと人間的にも社会的にも成長するでしょう。