お気になさらずの敬語は?意味やビジネスでの使い方や例文を紹介
「お気になさらず」または「お気になさらないでください」と言う言葉は、普段から使う言葉です。しかし、上司やお客様に対して使用した時に、失礼になってしまう場面はないのでしょうか?今回は、「お気になさらないでください」について、例文を用いて使い方をご紹介します。
目次
「お気になさらず」を正しく使いたい!
普段何気なく使っている「お気になさらず」または、「お気になさらないでください」という言葉。ビジネスシーンでも使える便利な言葉ですが、ふとした時に「この言葉って、もしかして上司やお客様に使ったら失礼かも?」と敬語として使い方が間違っていないか不安に思ってしまった事はありませんか?
使い勝手が良く丁寧に聞こえる言葉なので、社会生活の中で使う頻度も少なくない言葉ですが、はたして、本当に取引先の方や目上の上司に対して使用出来る正しい敬語なのでしょうか?それでは、これから例文を挙げて詳しく見ていきましょう。
そもそも「お気になさらず」の意味とは?
「お気になさらず」のもとになっているのは「気にする」という言葉です。この「気にする」という言葉に敬語をつくる「御」という接頭辞をつけ、「する」を敬語の「なさる」の形に変格させた言葉になります。また、「お気になさらず」の後に「お過ごしください。」や「続けてください。」など、文章の後半の部分を省略した形になっています。
「お気になさらず」には、何通りかの意味があり、状況や口調によっては失礼になってしまう場合もありますので、意味からしっかり確認していきましょう。
「気にしないでください」という意味の「お気になさらず」
一番典型的な「お気になさらず」または「お気になさらないでください」と言えば、「気にしないでください」という、読んだままの意味です。たとえば、謝罪をしてきた相手に対して、「問題ありません。」や「大したことではありません。」といった気持ちを込めて「お気になさらずに」と伝えれば、柔らかい印象になるでしょう。
「ご心配なく」という意味の「お気になさらず」
「お気になさらず」または「お気になさらないでください」は、体調が悪い時や気分が優れない時に、こちらを構わないで欲しい場面で使用されることがあります。「ご心配することなく、お過ごしください。」という気持ちを込めて使われます。
しかし、この時、口調や場面によっては「放って置いてください。」と、相手を拒絶した感じに受け取られる事もあるので、気を付けて使わなければなりません。
気遣いを受けた事に対する「お気になさらず」
「お気になさらず」「お気になさらないでください」は、相手からの気遣いを丁寧に断る際にも使います。取引先やお客様からの気遣いを、断る際、一歩間違えれば大変失礼な印象になってしまいます。
そこで、ビジネスシーンにおいては、柔らかく丁寧な「お気になさらず」または、もう少し丁寧に「お気になさらないでください。」という言葉を使います。そうすることで、印象を悪くする事なく断ることが出来ます。
「お気になさらず」の類語とその意味
「お気になさらず」の意味を紹介しましたが、今度は「お気になさらず」の類語を説明します!今回は、「お気になさらず」の意味でよく使われる、5つの類義語を詳しく紹介していきます。
・お構いなく |
・お気遣いなく |
・お気持ちだけ頂戴します |
・遠慮させていただきます |
・如何いたしまして |
「お構いなく」の意味や使い方とは
「お構いなく」とは、「お気になさらないでください」と同じように、相手からの気遣いを丁寧に断る際に使います。ただ、「お気になさらず」に比べて少し硬い表現になりますので、上司など目上の方に使うことが多いでしょう。こちらも後半の文章を省略した形になっております。
メールや文章で使う場合は、硬くなりすぎないように「どうぞお構いなくお願い申し上げます。」のように、「どうぞ」を文頭につけ、省略されている後半部分を補う使い方が好ましいでしょう。後半部分を補うことによって、より丁寧な表現になります。
「お気遣いなく」の意味や使い方とは
「お気遣いなく」も、「お気になさらないでください」と同様に、相手の気遣いを丁寧に断る際に使います。また、こちらから贈り物などをする際にも、「お返しなどを考えないでください。」という気持ちを込めて使うこともあります。
こちらも、「お気になさらないでください」に比べて少し硬い表現になります。また、後半の部分を省略した形にもなっておりますので、メールや手紙で使用する場合には「どうぞお気遣いなくお願い申し上げます。」のように、省略されている後半部分を補って使う方が好ましいです。
「お気持ちだけ頂きます」の意味や使い方とは
「お気持ちだけ頂きます」とは、「お気になさらないでください」と同じように、相手からの援助や贈り物を丁寧に断る際に使います。
「自分の事は気にしないでください。」という気持ちを込めつつ、「お気持ちはありがたく受け止めております。」という感謝の気持ちも込められるので、柔らかい印象を与える事が出来るでしょう。上司や取引先の方にも、使っても問題のない使い方です。
「遠慮させていただきます」の意味や使い方とは
「遠慮させていただきます」とは、相手への敬意を込めた表現です。主に自分より目上の人からのお誘いに対して、断りの返事をする場面で使われます。上司や相手との関係を大事にしたい場合のような、ビジネスシーンで使うことが多いでしょう。
「させていただく」は相手の許可を求める言い回しなので、相手への配慮がうかがえます。ただ断ってしまうよりも柔らかい印象を与える事が出来るでしょう。
お礼を受ける挨拶の「如何いたしまして」と「お気になさらず」
「如何いたしまして(どういたしまして)」は、「お気になさらないでください」という意味で、相手からの謝辞に対する返事として使われる「お気になさらず」と、意味はほぼ同じです。
ほぼ同じなので文法的には、目上の方に使っても問題ないのでしょうが、どこか失礼な響きが付いてくるのは、「大したことではありませんよ。」という気持ちの方が前面に出てしまう印象があるためです。
そのため、類語として挙げることは出来ますが、上司や取引先などビジネスシーンにおいては、「お気になさらず」という言葉を使う方が好ましいでしょう。
「お気になさらず」を使う場面
「お気になさらず」または「お気になさらないでください」という言葉は、そこまでかしこまった言い方ではありません。しかし、そうはいっても友達や家族の間で使うことはあまりありません。どちらかと言えば、距離のある相手や、ビジネスシーンで使用する機会が多いのではないでしょうか?
それでは、どのような場面で使用するのか、具体的な例を挙げてみていきましょう。
謝罪を受けた場面で使う場合
上司や取引先の相手からビジネス上のミスなどで謝罪を受けるような場面において、「お気になさらないでください。」と、さりげなく使うことが出来ると、失礼になりません。「大したことではありません」や、「問題ありません」と返すよりも柔らかい印象を与える事が出来るでしょう。
相手を慰める時
「お気になさらず」や「お気になさらないでください」という言葉を使う場面の一つに、相手を慰める時があります。たとえば、子供を遊ばせていて軽いケガをさせられてしまった場面などで、「遊んでいてけがをすることは、よくあることです。お気になさらずに。」などと声をかける事が出来れば、その後、良好な関係を築くきっかけになる事もあるはずです。
相手の気遣いを断る場面
相手から、気遣いを受けた場合に、こちらとしては遠慮したいこともあります。そのような時に角を立てずにお断りする場面で「お気になさらず」または、もう少し丁寧に「お気になさらないでください」と使います。
たとえば、訪問先でお茶の用意などを受けた場面で、そのまま、手を付けずに立ち去るのも失礼ですし、また、手を付けるのも気まずい場合などは、初めに準備いただくときに「お気になさらないでください」と伝える事で、柔らかく断ることが出来ます。
自分の事を気に掛けないように伝える場面
相手から心配された場面で、「気に掛けないでください」と伝えたい場合に、「放って置いてください。」や「気にしないでください」と伝えると角が立ってしまう事があります。
そんな時にお勧めな言葉が「お気になさらないでください」です。ただし、柔らかで丁寧な言葉遣いでも、口調や態度によって相手の心遣いを拒絶しているような印象を与えてしまう事もあるので、注意しましょう。
「お気になさらず」の敬語での使い方
こちらの事は気にしないでほしいと、普段のやり取りで丁寧に伝えたい時に使います。例えば、相手がミスをしてこちらに謝罪してきた場面などで、一言「お気になさらないでください」と付け加えられると、スムーズな人間関係を築くことが出来るでしょう。また、体調が悪かったりして、心配をかけてしまった時にも使えます。
「お気になさらず」敬語例文
それでは、「お気になさらず」の敬語での使い方を、実際に例文を挙げてご紹介していきます。
例文①「明日、もう一度伺いますので、お気になさらないでください。」
①は、約束の日時に荷物を受け取りに行った時に、先方に用意が出来ていなかった時などに使用する例文です。ただ「明日もう一度伺います。」と伝えて帰って来るよりも、一言「お気になさらないでください」と語尾についていた方が雰囲気が和らぐのではないでしょうか?
例文②「花粉症です。お気になさらず。」
こちらは「構わないでください」という意味で使っています。②では、花粉症で、相手に心配をかけた時の使い方です。ここでも、「構わないでください」や、「大丈夫です。」と、返すよりも柔らかい表現になります。
手紙やメールで「お気になさらず」を使う場合の注意点
手紙やメールでは、こちらの表情や気持ちが伝わりにくいものです。そのため、会話では丁寧な印象の「お気になさらず」ということばでも、文字にしてしまうと失礼な印象を与えてしまう事があります。これを防ぐには、「お気になさらず」や「お気になさらないでください」で終わりにせず、後半の省略されている部分をしっかりと書きましょう。
頭に、「どうぞ」などのクッションを置き、「どうぞお気になさらずお過ごしください。」などとすると、より丁寧になります。文字にする場合は、表情が伝わりにくいので、会話文よりも丁寧なこちらの文章の方がお勧めです。
「お気になさらず」のビジネスでの使い方
「お気になさらず」「お気になさらないでください」とは、ビジネスシーンでかなり使い勝手のいい言葉です。「気にしないで」「心配ありません」「問題ありません」「謝らないでください」「構わないでください」など、ダイレクトに伝えると、強い響きになってしまう言葉の代わりに使う事で、オブラートに包み、柔らかい言葉に変えてくれます。
上司や取引先の相手からの気遣いやお誘いなどを断る際に使いましょう。それでは例文を挙げてご紹介していきます。
例文①「問題はございません。どうかお気になさらず、謝らないでください。」
取引先でミスがあり、謝罪された場面での使用例です。ただ「問題はございません。」と言われるよりも、柔らかい表現になり、相手の気持ちも和らぐでしょう。
例文②「申し訳ございません。間違った資料をお渡ししてしまいました。先ほどの資料はお気になさらないでください。」
②は、ビジネスシーンにおいて、間違った資料を渡してしまい、もう一度正しい資料を渡して仕切り直したい場面です。「無視してください」などと伝えるよりも丁寧な伝え方になります。
「お気になさらず」ビジネスメール返信例文
先方からの謝罪文などが届いた際に「お気になさらず」「お気になさらないでください」というフレーズを使って返信を作ろうと考える方も多いのではないでしょうか?ですが、文章の場合、注意するべき点があります。それでは、少し前の項目で触れた注意点を意識して作った例文をチェックしていきましょう。
例文①「どうぞお気になされませぬようお願い申し上げます。」
①は、先方からの謝罪文などがメールで届いた際の返信メールに使えます。例えば下記のようなやり取りです。
先方「申し訳ございません。先日お渡ししたデータに間違いがございました。改めて新しいデータをお送りいたしますので、先日の物は破棄してくださいますようお願い申し上げます。」
あなた「ご丁寧にご連絡を頂き、有難うございます。かしこまりました。どうぞお気になされませぬようお願い申し上げます。」
上記のように返信をすれば、「気にしないでください」という気持ちを、より丁寧に伝える事が出来ます。
例文②「お気になさらず楽しい時間をお過ごしください」
②は、上司や取引先からのお誘いを受けた時などの返信に使える文章です。先方からのお誘いメールが来た際に参加できない場合には、「お誘いありがとうございます。残念ながら参加することが出来ません。どうぞお気になさらず、楽しい時間をお過ごしください。」
と、返信すれば「お気になさらないでください」と返信をするよりも丁寧な文章になり、角も立ちません。
例文③「どうぞお気になさらず、引き続きお引き立て頂きますようお願い申し上げます。」
③は、お客様からの謝罪文が届いた際の返信に使用した例です。お客様から、例えば、宛名を間違えてしまい、申し訳ございません。などの謝罪メールが届いた際には、こちらが気にしていない事を伝えた上で上記のように文章でメールを結ぶと、お客様の気持ちも和らぐでしょう。
「お気になさらないでください」に対する返信とは?
ビジネスメールで、こちらからの謝罪メールに対して「お気になさらないでください」と、返信を頂いた際、こちらからの返信に困った経験はありませんか?
そのまま、「かしこまりました」などと返信してしまう訳にもいきません。そんな時には「お心遣いを感謝いたします。今後ともよろしくお願いいたします。」など、素直に謝辞を伝えるのがベストでしょう。
敬語は大切な潤滑油
日本語は難しいです。「お気になさらず」という言葉一つとっても、「お気になさらないでください」の方がいいのか?この言葉は敬語として間違っていないのか?と不安になってしまう事があります。
また話し言葉では「お気になさらず」で十分でも、手紙やメールになると「お気になさらないでください」の方が好ましかったりという事も。
敬語には、謙譲語、尊敬語、丁寧語と種類があり、使う場面や立場によって同じ意味でも、言葉の形を変えていかなければなりません。誰にでも、なんとややこしくて、不便な言葉なんだ!と感じた経験があるのでは?
でも、物は考えようです。こちらが丁寧に接していることを、態度だけでなく言葉にして伝えられるという事は、使いこなせば、とても便利な対人スキルになるのではないでしょうか?