自己欺瞞の意味とは?自己欺瞞な人の心理や特徴を紹介
自己欺瞞という言葉を聞いたことがありませんか?自己欺瞞は誰もが陥る可能性があります。自己欺瞞に陥ると、人間関係に亀裂が入る危険性があるばかりか、あなたの人としての評価にも悪影響を与えます。自己欺瞞の原因や、自己欺瞞に陥る心理のほか、克服方法もご紹介します。
目次
自己欺瞞は誰でもしている?
自己欺瞞は、自己のプライドや精神を守るための、心理的防衛本能の一つです。意識的にせよ、無意識にせよ、誰でも自己欺瞞をしている可能性があります。
自己欺瞞は必ずしも悪とは限りません。己を守るため、時と場合によっては、自己欺瞞が必要になることもあります。しかし、だからといって自己欺瞞ばかりしていると、己の本心や正義があやふやになって、人格が崩壊してしまう危険性もあります。
誰の心にも潜む自己欺瞞。自己欺瞞的な人の心理や特徴も見てみましょう。
「欺瞞」の意味とは
「欺瞞」とは、欺きだますこと。「欺」にも「瞞」にも、だますという意味があります。
「欺」には、嘘、偽り、侮るという意味もあります。「瞞」は、常用漢字ではないので、あまり目にすることはありませんが、欺く、騙すという意味のほかに、くらい、はっきり見えないといった意味もあります。
「自己欺瞞」の意味とは?
「自己欺瞞」とは、簡単にいうと、己を欺くことです。ドラマや映画、小説や漫画の中で、言葉として耳にしたり、目にしたりしたことはあっても、日常会話で使うことはあまりありません。
自己欺瞞には、2つの意味があります。それぞれの意味を詳しく見てみましょう。
自分を正当化する
「自己欺瞞」とは、自分の本心とは違うことをしたり言ったりしたときに、仕方がなかったのだと無理に自分を納得させることです。
捨てられた動物を見つけて、「助けるべきだ」と思いながら、「一人暮らしだから」「動物禁止のアパートだから」と自分に言い聞かせて立ち去るときの心理です。
自分の本心に反しているにもかかわらず、やむを得ないと無理やり自分を正当化させるところに、問題があります。この場合、自分が悪者になりたくない、自分の醜さを認めたくなという心理が働いています。
始めからそうだったと思い込む
もう一つの自己欺瞞の意味とは、自分が思ったのとは違う結果になったとき、「本当は自分も最初からこうなると思っていた」と、事実を捻じ曲げ、あたかも本当であったかのように思い込むことです。
自分が進めていたプロジェクトが失敗したとき、「上手く行くはずがないと思っていた」「最初から無理だと思ってた」と言い張るときの心理状況です。酷くなると、「だからだめだと言ったじゃないか」などど言って責任転嫁したりします。
自分は悪くない、自分のせいじゃないと思い込むこのタイプの自己欺瞞の人は、度が過ぎると、平気で嘘をつく、嘘をついている自覚がないにもかかわらず、深層心理では自己の欺瞞に気がついているので心理的齟齬が生じ、人格が歪んでしまう可能性があります。
「自己欺瞞」の類語
「欺瞞」の類語としては、詐欺、ごまかし、惑わす、偽る、騙す、虚偽、瞞着などがありますが、「自己欺瞞」と同じ意味をあらわす言葉としては、「自欺」「自己正当化」などが考えらえます。
事実と違うことを本当だと思い込むという意味では、「自己暗示」も近い意味におもわれます。
しかし、「自己暗示」が、すっかり事実と信じ込んでしまうのに対し、「自己欺瞞」は、自分では本当は違うとわかっていながら思い込む、自分を納得させるという点で、ニュアンスが違います。
「自己欺瞞」の対義語
「欺瞞」の対義語は、信頼、誠実、正直、真実などです。「自己欺瞞」の対義語に相当する熟語は見当たりませんが、意味から考えると、「自分の心に正直」「嘘偽りなく」「裏表がない」などがあげられます。
「自己欺瞞」の使い方《例文紹介》
日常的に口にする言葉ではありませんは、少し堅い議論や討論、糾弾の場面では度々登場する言葉です。あまり和やかなムードでは使われることがないのが特徴と言えるでしょう。
「自己欺瞞」の使い方や例文をご紹介します。
例文①自己欺瞞だろうそれでいいのか?
信じていた仲間に裏切られたとき、相手の本心を問いただす意味で「自己欺瞞」という言葉が使われることがあります。本当は間違っているとわかっているのだろうと、相手の誠意を呼び覚ます目的で使われます。
自己欺瞞の特徴は、心の奥底では、自分の本音は別のところにあると自覚していることです。自分を偽っている罪悪感を持ちながら、無理に自分を納得させようとするのが、自己欺瞞な人の特徴です。
その矛盾をつかれると、人は不安になります。非を認めて自己欺瞞をやめるか、逆切れしてますます意固地になるかは状況次第です。「自己欺瞞だ」と人を追い詰めるときは、状況をよく確かめてからにしましょう。
例文②彼の人生は自己欺瞞に満ちている
言い訳ばかりしている人、心当たりはありませんか?おそらくその人は、自己欺瞞の人です。
主義主張に一貫性がなく、勝者におもね、敗者を蔑む。自分の意志ではなく、周りの状況に応じて立場を変える。イソップ童話にも出てくるコウモリのような人です。自己欺瞞の人は、自らの心を偽ってはばかることがありません。
己が守るべき真実が一つもない人生は、空虚と言わざるを得ません。
自己欺瞞な人の心理
自己欺瞞は虚勢でもあります。自分のプライドを守るために、見栄を張ったり、体裁を整えたりしたことがある人は少なくないでしょう。人は弱いものです。自己欺瞞に陥った経験は誰にでもあるはずです。自己欺瞞自体は、心理的に理解できる行動です。
しかし、いつも自己欺瞞ばかりしている人というのは、問題があります。自己欺瞞な人とは、どのような心理で考え、行動しているのでしょうか。
自分の非を認めたくない
なぜ自己欺瞞をするのか、考えてみましょう。自己欺瞞は、心理的防衛本能です。傷つきたくない、嫌な思いをしたくない、嫌われたくないなど、目的はいろいろありますが、自己欺瞞によって守られるのは、己の正当性です。
自己欺瞞な人は、自分は正いと信じたいがために、いろいろな理屈をこねて自分を正当化するので、「ごめんなさい」と素直に言えないという特徴があります。
あなたの周りにも、頑として己に非を認めず、絶対に謝らない人はいませんか。おそらくその人は、自己欺瞞の人です。
ダメな奴だと思われたくない
自己欺瞞のもう一つの目的は虚勢です。人に蔑まれたくない、失敗したと笑われたくない、馬鹿にされたくないという心理が、自己欺瞞に走らせます。
自分が間違うはずがない
一番厄介なのが、事実をなかったことにしようとするタイプの自己欺瞞の人です。「そんなはずはない」と強く思うあまり、現実と幻想が入り交じり、事実とは違う願望を、真実と思い込んでしまいます。
思い込みが激しく、人の意見に耳を貸さない、視野の狭い人は、こういった自己欺瞞に陥りやすいです。
自己欺瞞な人の特徴
自己欺瞞な人には、いくつか特徴的な点があります。自己欺瞞な人に振り回されないように、自己欺瞞な人の特徴を知っておきましょう。
よく嘘をつく
自己欺瞞な人の最大の特徴は、嘘をつくことです。もともと自己欺瞞のためには、嘘は必要条件です。自己欺瞞な人の嘘は、単なる口から出まかせの嘘と違い、理屈っぽかったり、言い訳めいていたりするという特徴があります。
あなたの身近にいる人の嘘のつき方で、自己欺瞞な人なのか、ただの嘘つきなのかを判断することができます。
プライドが高い
心理的防衛本能が高い人は、プライドが高いという特徴があります。自分の間違いを受け入れられないのも、プライドを傷つけられたくないから。自己欺瞞な人は、他人はそれほど気にしていないのに、自分で自分が許せないので、自分の心すら欺こうとします。
自分の失敗が許せないのは、自分に厳しいというより、自分に幻想を見ているといえます。自己欺瞞の人は、間違ったプライドにがんじがらめになっているのかもしれません。
意見に一貫性がない
自己欺瞞の人は、とにかく自分に都合よく事実を捻じ曲げます。なので、主義主張に一貫性がなく、意見がころころ変わります。自己欺瞞の人は、自分のためなら無茶苦茶な屁理屈も強引に押し通します。
ですから、自己欺瞞の人を信じて行動を共にすると、いざというとき手ひどい裏切りに合う可能性があります。下手をすると、責任のすべてを押し付けられかねません。この人自己欺瞞化も、と思ったら自分の身は守れるように、予防策を講じておくことをおすすめします。
自己欺瞞に陥る原因
人はなぜ自己欺瞞に陥ってしまうのでしょうか。もちろん自衛のため、やむを得ない場合もあります。そうではなく、ささいなことで自己欺瞞に陥ってしまう原因を探ってみましょう。
こうあるべき感が強い
自己欺瞞の人は、失敗が許されない、厳しい家庭環境で育てられたことが原因になっていることがあります。「こうでなければならい」という狭い価値観に縛られて育った人は、そこから逸脱することに強い不安を覚えます。
そのため、自分の本心を偽ってでも、「こうあるべき」自分を演じてしまうのです。たとえば、本当はスポーツで身を立てたいけど、将来が不安定だし、怪我をするかもしれないから、一般企業に就職するほうがいいに決まっていると考えるケースにも当てはまります。
甘やかされて育った
反対に、過保護、過干渉に育てられた場合も、自己欺瞞な人になる原因になります。「あなたは悪くない」「悪いのは~のせい」と言われ続けると、本気で「自分は悪くない」と思い込んでしまいがちです。
このように、責任を負うことから逃れたまま成長すると、傷つくこと、間違いを正すことに対する経験がない二で、自分を欺き、失敗をなかったことにしようとします。
人間として未熟
自己欺瞞の原因は、幼児性にあります。子どもは思い通りにならなかったとき、本当はやりたくなかったとか、ほしくなかったとか、本心と違うことをよく言います。同じようなエピソードで思い浮かぶのは、イソップ童話のキツネとぶどうの話です。
美味しそうに実ったぶどうを見つけたキツネが、何とかして食べようと苦労します。でも、ぶどうの枝が高すぎて手が届かず、食べることができなかったのですが、「まだ熟れてないから食べごろじゃない」と捨て台詞を残して去っていく話です。
キツネは、食べたかったにもかかわらず、うまく手に入れられなかったことを、ぶどうのせいにして自分を納得させます。つまりは責任転嫁です。
自分の実力不足であるにもかかわらず、罪もないほかのものに責任を押し付けるのは、成熟した大人のやることではありません。自己欺瞞に陥る大きな原因の一つは、人としての経験のなさ、未熟さにあるといえます。
自己欺瞞を克服する方法
自己欺瞞は、ときとして人間関係に深い溝を作ります。誰だって、心に矛盾を抱えた人とは、積極的に付き合いたくはないでしょう。
自分自身に対しても、嘘や偽りで無理やり納得することが、精神衛生上いいわけがありません。自己欺瞞が当たり前になってしまうと、心のバランスが崩れかねないのです。
たまには自己欺瞞をしなければ、仕方がない場面もあるでしょうが、できれば自己欺瞞などせずに済ませたいものです。自己欺瞞を克服する方法をご紹介します。
自分を好きになる
自己欺瞞克服の第一歩は、自分で自分を愛することです。自分を認め、自分の思いを尊重することです。自己欺瞞な人は、心の奥底では、自分の嘘に気がついています。本心とは違う行動をとる自分を、内心では軽蔑しているかもしれません。
結果が思い通りにならないときも、自分を責めたりしてはいけません。自分を信じ、愛する努力を重ねていけば、万が一失敗しても、そういうこともあると、おおらかな気持ちで受け入れられるようになります。
多様な価値観を受け入れる
自己欺瞞な人は、頭が固い頑固な人が多いです。自己欺瞞を克服するなら、こうでなければならないという、凝り固まった考え方を捨ててみましょう。
一つの考え方に執着すると、上手くいかなかったとき、方向転換ができなくなります。正解は一つだけではありません。ときには諦める勇気も必要です。
固定観念から自由になれば、自己欺瞞で自分を誤魔化す必要はなくなります。
自己主張をする
自己欺瞞に陥るのは、周囲の状況に流されるからです。欺瞞な人の中には、気が弱く、他人の意見に左右されやすい人もいます。本当はこうしたいのにと思いながらも、つい人の意見に従ってしまいます。自分の弱さに、忸怩たる思いを抱えている人もいるかもしれません。
自己欺瞞を克服する第一歩は、自分の信念を貫くことです。自分がこうと思ったら、決、して譲らない覚悟も、時には必要です。紙に書くのもいい方法です。証拠を残しておけば、たやすく自分をだますことはできません。
自己欺瞞はほどほどに
自己欺瞞は、自分の気持ちを納得させるためには必要な行為です。思い通りにならなかったことを、素直に受け入れられる人ばかりではありません。
でも、自己欺瞞は、多かれ少なかれ心に傷を残します。自分を欺くことは、自分に嘘をつくことです。いずれあなた自身に災いをもたらすことになるかもしれません。
大切なのは、自分を信じることです。自分に自信があれば、結果が思い通りにならなくても、自分を責めたり、誤魔化したりする必要はありません。