2019年01月08日公開
2019年01月08日更新
本末転倒の意味とは?使い方を例文を用いて解説
日常の中で「本末転倒」という言葉を使ったことがある人は、たくさんいるでしょう。しかし、その意味や語源を詳しく知っているという人はなかなかいないと思います。そこで、今回は「本末転倒」の意味や語源、使い方などについて、詳しく解説していきましょう。
目次
「本末転倒」の意味や使い方をわかりやすく解説
目的と手段が逆になってしまったときや、本来の目標を見失ったりしてしまったときには、「本末転倒」という言葉をよく使います。日常会話の中で「本末転倒」はよく使われますが、意外とその正確な意味や使い方を把握している人は少ないでしょう。
そこで、今回はその「本末転倒」の意味や使い方を詳しく解説していきたいと思います。「本末転倒」とはどんな意味の言葉なのか気になる人は、ぜひしっかり確認してみてください。
「本末転倒」の意味とは?
「本末転倒」とは、重要な物事と重要でない物事を取り違えてしまうことを意味する四文字熟語です。「本末転倒」の「本末」とは物事の終わりと始めや、物事の本質的な部分とそうでない部分を意味する言葉とされています。
その「本末」に取り違えや逆転を意味する「転倒」がつき、「本末転倒」という言葉になったのです。
「本末転倒」の語源や由来
「本末転倒」の語源とは、鎌倉時代に起きた本山と末寺の力関係の逆転とされています。
武家が中心となった鎌倉時代には、これまで貴族や天皇に独占されてきた仏教が庶民や武家にも広まりました。その結果、農民や武家により仏教の革新運動が起こされます。
その結果、これまで強大な力を持っていた大きなお寺よりも、小規模なお寺の方が実質的な影響力を持つようになったのです。
その当時大規模なお寺を意味した「本山」と、小規模なお寺を意味した「末寺」という言葉から、「本末」という言葉が生まれました。そして、大きな物事と小さな物事が逆転する様子が「本末転倒」と表現されるようになったのです。
「本末転倒」の使い方
「本末転倒」とは、一般的に重要なことと重要でないことが逆転してしまった状況を表わすときに、使われる言葉です。そのため、目的と手段の逆転現象が起きたときに、その現象を指摘する場面で特によく使われます。
以下では、「本末転倒」を使った例文を詳しく見ていきましょう。
「本末転倒」を使った例文
「本末転倒」とは具体的にどのように使うべき言葉なのか、よく分からないという人もいるでしょう。そこで、以下では「本末転倒」を使った例文を分かりやすく紹介していきたいと思います。ぜひ「本末転倒」を使うときの参考にしてみてください。
例文①学業がバイトで疎かになっているようでは本末転倒だろう
「本末転倒」は「アルバイトで学業が疎かになっているようでは本末転倒だろう」というように使うことができます。この例文のように、重要な物事が些末な物事によって悪い状態になっている様子を表すように使うのです。
この例文のように「本末転倒」を使うと、自分への戒めの言葉や相手に注意を促すための言葉になります。
例文②効率化するための手段で時間がかかっていては本末転倒だ
「本末転倒」の例文には、「業務を効率化するソフトの操作に時間がかかっているようでは本末転倒だ」も挙げられます。「本末転倒」はこの例文のように、手段が目的達成の妨げになってしまっている状況を表現したいときに使うこともできるのです。
例文③参考書を買うだけで勉強しないとは本末転倒している
「本末転倒」は「参考書を買ったことに満足して勉強しないとは本末転倒している」というようにも使います。小さな目的と大きな目的が逆転してしまった状況を表現したいときは、ぜひこの例文のように「本末転倒」を使ってみてください。
「本末転倒」の類語
広い場面で使える「本末転倒」には、たくさんの類語があります。まず、以下の表で「本末転倒」の代表的な類語を紹介しましょう。
・主客が入れ替わる |
・目先のことに捉われる |
・お門違い |
「本末転倒」の類語であるこれらの言葉は、実際に使ったり聞いたりすることがよくあると思います。しかし、「本末転倒」の類語とは知らなかったという人がほとんどなのではないでしょうか?
以下では、これらの類語について、さらに詳しく取り上げていきたいと思います。
順序や立場が逆転することを意味する「主客が入れ替わる」
「主客が入れ替わる」は、物事の順序や人の立場が逆転してしまうことを意味する言葉です。本来客人をもてなす側の主人と、もてなされる側の客人の関係が逆転してしまう様子から、この言葉が生まれたと考えられています。
例えば、「客が店を手伝うとは主客が入れ替わっている」というように使うのです。また、「主客が入れ替わる」は、「主客転倒」という「本末転倒」とよく似た四文字熟語として使われることもあるでしょう。
目の前のことへの執着を意味する「目先のことに捉われる」
「目先のことに捉われる」とは、目の前の小さなことに集中しすぎて、大きな目的を見失うことを意味する言葉です。
大きな目標を達成するまでには、長い期間努力し続けなくてはならないでしょう。その間に、小さな物事にこだわりすぎると、大きな目標を見失いやすくなります。そのような状況は、まさに目先のことに捉われている状況と言えるのです。
小さなことにこだわって大局を見失いそうなときは、ぜひ「目先のことに捉われてはいけない」という言葉を思い出して、自分を戒めてみてください。
対象となる物や人を取り間違える「お門違い」
「お門違い」とは、対象となる人や物を取り違えていることを意味する言葉です。例えば、「事件の被害者である私を責めるのはお門違いだ」というように使います。
「お門違い」は訪問するべき家を間違えて、間違えた家の門に入ってしまう様子から生まれた言葉なのです。
「本末転倒」に似た意味のことわざ
「本末転倒」と意味がそっくりのことわざも、数多く存在しているのです。そのことわざには、「木を見て森を見ず」や「角を矯めて牛を殺す」、「葉を欠いて根を断つ」などが挙げられます。
「木を見て森を見ず」はよく聞くことわざでしょう。目の前の木だけを見て森全体を見ないことから、目先の小さなことにこだわって大局を見失うことを意味することわざです。
また、「角を矯めて牛を殺す」は小さな問題を解決しようとこだわりすぎることで、大きな問題を引き起こしてしまうことを意味します。「葉を欠いて根を断つ」も、「角を矯めて牛を殺す」とほとんど同じ意味を持つことわざです。
ぜひ、これらのことわざも上手く使いこなしていきましょう。
本末転倒と意味が似ている四文字熟語
「本末転倒」には意味が似ている四文字熟語も多くあります。そこで、以下では「本末転倒」とよく似た意味の四文字熟語をいくつか取り上げていきましょう。四文字熟語に興味がある人は、ぜひ以下の内容をしっかり確認してみてください。
小さなことにこだわって本質を見失う「釈根灌枝」
「本末転倒」の意味と似ている四文字熟語には、まず「釈根灌枝」が挙げられます。「しゃっこんかんし」と読むこの四文字熟語の「釈」は、廃棄するという意味の漢字です。また、「根」や「枝」は植物の根や枝を意味し、「灌」は水を注ぐという意味の言葉とされています。
つまり、「釈根灌枝」は植物の枝だけに水を注いで植物の根を枯らしてしまうように、物事の軽重を取り間違えて物事の本質を見失うことを意味するのです。
地位や価値の順位が逆転する「冠履倒易」
「冠履倒易」も「本末転倒」と似た意味の四文字熟語です。「かんりとうえき」と読むこの四文字熟語は、地位や価値の順位が入れ替わったり、支配被支配の秩序が乱れて世の中が乱れたりすることを意味します。
「冠履倒易」の「冠」は高い地位を示す冠で、「履」は履物を意味します。「倒易」は逆に入れ替わるという意味の言葉なので、「冠履倒易」は冠と履物とが入れ替わるように、立場や価値の順位が逆転するということを意味するのです。
「本末転倒」と反対の意味を持つ四文字熟語
「本末転倒」と反対の意味を持つ四文字熟語にも、興味が出てきたという人もいるでしょう。そこで、以下では「本末転倒」と反対の意味の四文字熟語も紹介していきたいと思います。
最初の志を曲げずに物事を成し遂げる「初志貫徹」
「本末転倒」と反対の意味を持つ四文字熟語には、「初志貫徹」があります。「初志貫徹」は初めに決めた自分の志を曲げずに、物事を成し遂げることを意味する四文字熟語です。
「しょしかんてつ」と読むこの四文字熟語は、抱負や座右の銘に使うことが多いでしょう。何か大きな目標を掲げている人は、ぜひ「初志貫徹」という言葉を戒めの言葉として意識してみてください。
物事に矛盾が無い様子を意味する「脈絡通徹」
「脈絡通徹」も「本末転倒」と反対の意味を持つ四文字熟語と言えます。「脈絡通徹」は物事に矛盾がない様子を意味する言葉なのです。「脈絡通徹」は「みゃくらくつうてつ」と読み、一般的には「脈絡通徹に説明すべきだ」というように使います。
物事を成し遂げるまで同じ態度や方針を維持する「首尾一貫」
「本末転倒」と反対の意味を持つ四文字熟語には「首尾一貫」も含まれます。「しゅびいっかん」と読む「首尾一貫」は、物事を成し遂げるまで常に同じ態度や方針を維持することを意味する言葉です。また、主張に矛盾が無いことを意味する言葉でもあります。
例えば、「首尾一貫しているリーダーは人気を集める」というように使われることが多いでしょう。
本末転倒になりやすい人の特徴
「本末転倒」な状況になりやすい人とは、どのような人なのか気になる人もいるでしょう。そこで、以下では「本末転倒」な状況に陥りやすい人の特徴を紹介してきたいと思います。
本末転倒な事態に陥りやすい人は、ぜひ自分の特徴に当てはまるか確認してみてください。
意志薄弱である
意志薄弱であるということは、本末転倒になりやすい人の特徴の1つと言えます。物事をやり遂げようとする意志が弱いので、大きな目標を掲げても途中で挫折してしまうことが多いのです。
また、物事をやり遂げる意思が弱いので目標達成までの間に、他の物事に気を取られて当初の目的を忘れてしまうこともよくあります。
意志が弱く挫折することが多い人は、ぜひ大きな目標までの過程に小さな目標を設定して、努力している途中でも達成感を味わえるようにしてみてください。
物事に優先順位をつけることが苦手
物事に優先順位をつけることが苦手ということも、本末転倒な状況に陥りやすい人の特徴です。重要な物事と些末な物事を区別することができないため、些細な物事に気を取られて大きな目標を見失ってしまいます。
優先順位をつけることが苦手という人は、ぜひ毎日その日のスケジュールに優先順位をつける癖をつけてみましょう。毎日のスケジュールの整理が、優先順位をつけるためのよい訓練になるのです。
見通しが甘い
本末転倒になりやすい人の特徴には、見通しが甘いということも挙げられます。計画を綿密に立てずに、思い付きで行動してしまうことが多いため、目的をスムーズに達成することができません。
そのため、目的達成までに予想よりも労力や時間がかかることが多く、目的達成までの過程で誘惑に負け、目的を忘れてしまいやすいのです。
集中力がなく感化されやすい
集中力が無く感化されやすいということも、本末転倒になりやすい人の特徴でしょう。他人が楽しそうにやっていることや、努力していることを見ると、感化されてすぐに同じことをしたくなってしまいます。
しかし、1つのことに集中している間にも、他の人がやっていることに目が向いてしまい、次々と新しいことに手を付けてしまうのです。
新しいことに挑戦しても、結局1つのことに長期間集中することができないので、ほとんどのことが中途半端に終わってしまいます。
「本末転倒」の英語表現
「本末転倒」は英語ではどのように表現できるのでしょうか?以下では、「本末転倒」の英語表現を2つ取り上げていきたいと思います。「本末転倒」を英語でもスマートに使いこなしたい人は、ぜひ以下の英語表現を実際に使ってみてください。
優先順位という単語が使われる「misplace one's priorities」
「本末転倒」は、英語では物事の優先順位を付け間違えるという意味で表現されます。英語では優先順位は「priority」という言葉で表せるのです。つまり、英語では本末転倒は「misplace one's priorities」というように表現できます。
「misplace」は「置く場所を間違える」という意味の英語です。ちなみに、「君は本末転倒になっている」と言いたいときは、「I think that you misplace your priorities」と表現します。
ことわざのような「put the cart before the horse」
英語では「put the cart before the horse」という面白い文章で、「本末転倒」を表現することもあるのです。「cart」は荷馬車を意味しているので、「put the cart before the horse」は「荷馬車を馬の前につける」と訳せます。
この英語は馬の前に荷馬車をつけるように、順番を間違えてしまっている本末転倒な状況を意味する言葉として使うのです。少し変わった英語表現で「本末転倒」を表現したい人は、ぜひ使ってみてください。
手段と目的が逆転してしまう場面で「本末転倒」を使ってみよう
今回は「本末転倒」の正確な意味や使い方を詳しく見ていきました。鎌倉時代の本山と末寺の力関係の変化が、「本末転倒」の由来となっていると知って驚いた人もいるでしょう。
手段と目的がひっくり返ってしまうときには、今回の内容を参考にして「本末転倒」をぜひ使ってみてください。また、本末転倒には類語表現がたくさんあるので、語彙力を伸ばしたい人には、ぜひ今回取り上げた以外の類語も調べてみることをおすすめします。