2019年01月17日公開
2019年01月17日更新
慢心の意味や類語とは?慢心せずになどの使い方を例文を使って解説
「慢心するな」と叱責されたことはありませんか?「慢心」から失敗したり、凋落することは少なくありません。「慢心」は、百害あって一利なしです。とはいえ、そもそも「慢心」とは、どういう意味なのでしょうか。慢心の意味や類語、使い方を例文を挙げてご紹介します。
目次
「慢心」という言葉を正しく理解したい!
「慢心」という言葉、比較的よく聞く言葉です。「まんしん」と読みます。「慢」は、「忄(りっしんべん)」がついているので、心をあらわす言葉だということは見当がつきます。後にも「心」が続きますから、何がしかの心情、態度、様子を意味する熟語です。
慢心は、誰にでも起こり得ますが、慢心していいことなど一つもありません。慢心は百害あって一利なしです。
でも、よく耳にする言葉ながら、「慢心」とはどういう意味なのか、正しく理解している人は少ないかもしれません。漠然と理解しているだけでは、慢心を防ぐことはできません。「慢心」とはどういう意味なのか、「慢心」の意味をしっかりと把握しましょう。
慢心の意味とは?
「慢心」の「慢」は、訓で「あなど・る」と読みます。意味は、「おこたる」「心が歪む」「見くびる」「おごり高ぶる」などです。
ちなみに「慢」には、これ以外にも、「ゆるやか」「おそい」「長い」「しまりがない」「物事をきちんとしない」などの意味もあり、細長い体でにょろにょろとのたうつように泳ぐ「うなぎ」を、魚に曼で「鰻」と書くのは、ここからきています。
「おごる」とは、「権勢をかさに着て好き勝手をする」という意味です。「驕る」と書きますが、「傲る」と書く場合もあります。「おごる平家は久しからず」という言葉を聞いたことはありませんか?歴史の教科書で目にした人も多いでしょう。
これは、武士でありながら政治的権力を手に入れ、貴族にように振る舞っていた平家が没落する様を意味しています。
つまり、「慢心」とは、自分の力をひけらかし、調子に乗ってつけあがることや、その心です。その結果、尊大な態度を取ったり、必要な注意を怠ったり、謙虚さを失ったり、怠け心が生まれたり、贅沢をしたりとろくなことにはなりません。
慢心の類義語や慢心との違い
「慢心」とは、己の実力や能力に過剰な自信を持ち、周りの人を見下したり、仕事を疎かにしたり、鍛錬を怠ったりすることを意味します。「慢心」に近い意味を持つ言葉はたくさんありますが、指し示す意味は、微妙にニュアンスが違ったりもします。
正しく使い分けるために、「慢心」の類義語と、「慢心」とのニュアンスの違いを見てみましょう。
類義語①油断
「油断」とは、「気を許して注意を怠る」という意味です。由来は、一説には、王様が家臣に、油が縁いっぱいまで入った器を持って歩かせ、一滴でもこぼしたら死刑にすると言ったという逸話からとされています。
「油断」の主な意味は、「気を抜く」「必要な注意を怠る」で、「慢心」の持つ、「自分の権勢に任せて」という意味合いは含んでいません。
「慢心」にも「怠ける」という意味はあります、「注意を怠る」という意味も含んではいますが、ニュアンス的には「さぼる」に近く、むしろ、「慢心から油断」することのほうが多いでしょう。
類義語②過信
「過信」とは、読んで字のごとく、「過剰に信じること」です。「信頼して必要以上に高く評価する」という意味で、「自画自賛」「手前味噌」などが同義です。
「過信」は、過剰に自信を持ってはいますが、「慢心」の意味する「権勢をかさに着て好き放題する」という意味は含んでいません。「過信」は「慢心」とは違い、実際の権力や能力はそれほど高くありません。むしろ、「過信から慢心に陥る」ことに気をつけなくてはなりません。
類義語③自惚れ
「自惚れ」とは、「実際の実力以上に自分を優れていると思い込むこと」です。「過信」とほぼ同義ですが、「過信」より「自惚れ」のほうがもっと根拠のない自信です。
「慢心」は、実際に権勢を得ており、「過信」は、現実以上に自己評価が高く、「自惚れ」は、たいしたことがないのに自信だけは持っていると言うことができます。
「慢心」も「過信」も「自惚れ」も、自信があるということでは同じですが、その意味合いは異なります。
「慢」を使った熟語
「慢」という漢字には、「おこたる」「みくびる」「おごり高ぶる」などという意味がありますが、慢心」のイメージをつかみやすくするために、それぞれに意味に合わせた熟語をご紹介します。
「おこたる」という意味の「慢」を使った熟語は「怠慢」です。「みくびる」という意味では「慢侮(まんぶ)」という熟語があります。「あざけり馬鹿にする」という意味です。「おごり高ぶる」は、「傲慢」「高慢」です。
「慢心」とは、これら全部の意味を含んだ言葉です。上から目線で、ひどく自分勝手な様子が思い浮かぶのではないでしょうか。
慢心の対義語
「慢心」が、嫌な言葉だということはよく理解できたのではないでしょうか。ここで、「慢心」の対義語について考えてみましょう。
自分の力や能力に対して強い自信を持ち、それを振りかざして人を見下したり、好き勝手なことをするという意味の「慢心」の対義語として考えられるのは、控えめで慎ましい様を意味する「謙虚」です。
「謙虚な態度」「謙虚な人」といえば、出しゃばらず、能力をひけらかさない、好ましい人物が思い浮かびます。「慢心を持った人」とはまさに対極といえるでしょう。
慢心の使い方や例文の紹介
「慢心」とは、決して褒め言葉ではないので、うかつに使うとトラブルのもとになりかねません。「慢心」という言葉は、他人から見て目に余るほどの増長ぶりを諫めるときに使います。
人に注意するのは難しいですが、もし親しい人で「慢心」している人がいたら、注意してあげるのが本当の親切です。もう一つ「慢心」の使い方としては、自分自身を律するために使う場合があります。
「慢心」の具体的な使い方の例文を見てみましょう。
例文①慢心せず精進します
「慢心」するのは、何らかの成果をあげたときです。「慢心せず」というのは、その成果に満足して自慢したり、いい気になったりすることなく、努力を続けるという意味です。
スポーツ選手や力士がインタビューに応えて、「この結果に慢心することなくより一層精進します」と言っているのを聞いたことがある人もいるでしょう。
慢心すればそこで成長は止まってしまいます。さらなる高みを目指す人に、「慢心」は禁物です。
例文②慢心していると足元をすくわれる
「慢心」からはしばしば「油断」が生じます。油断大敵と言うように、慢心は失敗の第一歩です。図に乗って注意を怠ると転落は目の前です。
上手くいったときほど身を慎み、用心を重ねなくてはなりません。大きな仕事を成功させて有頂天になり、ほかの仕事をおろそかにするのも「慢心」です。
成果を出して舞い上がってる人がいたら、「慢心すると失敗するよ」と忠告してあげることも必要かもしれません。
例文③慢心したせいで成績が落ちた
いい結果が出ると、誰でも嬉しいものです。努力が実を結んだならなおさらです。本当ならそこで、「もっと頑張るぞ」と次なる目標に向かって気持ちを引き締めるはずですが、中には、「俺ってすごい」と己惚れてしまう人もいます。
勉強でもスポーツでも仕事でも、成績を維持するのは、成績を上げる以上に大変なことです。「天狗になる」という言い方もありますが、慢心すると、自分が他の人より優れていると思い込んで、何でもできると勘違いしてしまいます。
地道な努力を怠れば、成績が落ちるのは目に見えています。
例文④社長の慢心を諫める
目上の人に意見するのは勇気が要りますが、もし、社長の慢心のせいで、社運が傾きかけていたら、それを諫めるのも部下の仕事です。
「慢心を諫める」とは、いい気になって増長している相手に対して、暗雲を招いている、招きかねないので改めろと注意することです。目上の人から目下の人へ使うこともありますし、目下の人から目上の人に使うこともあります。
慢心を使った名言やことわざ
慢心は誰の心にも生まれ得ます。慢心に陥らず、努力や注意を怠らなかった人だけが、偉大な業績を残すことができるのです。それゆえ、慢心については多くの偉人が名言を残しています。
名言とともに、慢心を諫めることわざや四字熟語も覚えておけば、慢心から失敗することを防げるかもしれません。心の片隅に留めておきたい名言や、ことわざをご紹介します。
名言①十三代目酒井田柿右衛門
赤絵磁器で有名な有田の「柿右衛門」の十三代目酒井田柿右衛門の言葉です。少し長いですが、慢心がいかに身近で、陥りやすく、そこから抜け出すことの難しいかを、わかりやすく示しています。江戸中期以降途絶えていた伝統技法を復活させた名工ならではの含蓄のある言葉です。
「人間三十、四十の頃は、たかぶっていて、慢心するらしい。目が届かないのに、えらいものを作ったと信じ込む。実は恥をさらしているのである。だが、自分はいっこうに気づかない。といって、これを人が教えても、当人にはわからない。
わかろうとしないからだ。わかるときは、自らそれが恥ずかしいと悟ったときだ。これは、何かの機会に、自得するしかない」
名言②ウィリアム・シェイクスピア
卓抜した観察力と、心理描写で数々の名作を残したイギリスの劇作家にして詩人のシェイクスピア。滝さんの名言がある中で、「慢心は人間の最大の敵だ」というのは、人類全員に向けた箴言にほかなりません。
裕福な家庭に生まれ、イギリス最高の作家として名声を得ながらも、次々と作品を発表し続けたシェイクスピアの言葉だからこそ、重みがあります。
ことわざ・四字熟語
「慢心」という言葉を使ったことわざには、「慢心鼻を弾かる」というものがあります。「おごり高ぶっていると恥をかくことになるから気をつけなさい」という意味の、慢心を諫めることわざです。
「慢心」という熟語をそのまま使ったのではありませんが、慢心を諫める四字熟語としては、「本当の賢者は、知恵を得れば得るほど、他人に対してはへりくだり、礼を尽くす」という意味の、「知崇礼卑(ちすうれいひ)」があります。
「実るほど頭が下がる稲穂かな」も同じ意味です。
慢心している人の特徴は?
慢心している人は、自分ではそれと気づいていないことが多いです。でも、慢心している人には共通したある特徴があります。自分は慢心していないか、慢心している人の特徴に照らし合わせながら考えてみてください。
万が一心当たりがあったら、手遅れにならにうちに態度や行動を見直してみる必要があります。
運だけがいい
「慢心」の多くは、大して努力もしていないのにいい成績が取れたり、仕事で成功したり、異性にモテたり、苦労せずに手に入れた結果、生じます。「俺ってすごい」と、勘違いが生じるのもこのときです。
ツキに恵まれた人、器用な人、世渡り上手な人に慢心している人が多いのはそのせいです。ただ単に運が良かっただけなのに、それを自分の実力と勘違いしてしまい、自分を磨こうとしません。
例えば、テストで山が当たって高得点が取れたのに、「自分には実力がある」「山を張る才能がある」と思い込み、勉強をさぼってしまいます。数回は運が続くかもしれませんが、いずれは破たんすることに気がついていません。
さらに悪いことに、慢心すると、「俺って運がいいから」と運を過剰に信じ、もし失敗しても「運が悪かった」と運のせいにしてしまうことです。
自分が慢心していることに一切気づかず、運がよければますます増長し、運が悪ければ運のせいにするので、何の解決にもならず、成長することもできません。
根拠のない自信を持っている
「自信」の根拠は「努力」です。積み重ねた「努力」だけが、不安や疑念を吹き飛ばし、確固たる自信を与えてくれます。ところが、慢心している人は、何の努力もしていないくせに、自信だけは持っています。
周りの人から見れば、「なぜそんなに自信が持てるのか」と不思議に思うほどですが、本人は何の疑問も抱いていません。
慢心している人は、よく「絶対大丈夫」「間違いない」と断言する傾向にあります。理屈で説明できないのに、安請け合いをしたり、物事を簡単に考えるのが、慢心している人の特徴です。
状況判断が苦手
慢心している人は、冷静な判断力、公平な判断力を失っています。自惚れや油断で目が曇っているので、どこからどう見ても無理な案件に手を挙げたり、自分より適任がいるにもかかわらず出しゃばったりします。
「君には無理だ」と言われているにもかかわらず、「絶対に大丈夫です」と強引に仕事を引き受けたり、「自分にしかできません」と言い張ったりしている人はいませんか。
自分の実力や能力を美貴分けることができないというのも慢心している人の特徴の一つです。自分を信じることは大切ですし、難しいことにチャレンジする精神は立派ですが、誰が見ても無謀な挑戦は周りにも迷惑です。
慢心せず謙虚でいよう
慢心していいことは一つもありません。慢心の先に明るい未来はありません。そこにあるのは、大きな落とし穴です。慢心とは、これでいいと今の自分に満足してしまうことでもあります。成長をやめてしまったら、そこで止まってしまうのではなく、ずるずると落ちていくだけです。
一度慢心してしまうと、そこから抜け出すには相当の覚悟が必要です。成功したときほど謙虚さを失わず、常に努力、精進する気持ちを忘れないように心がけましょう。