宝の持ち腐れの意味とは？使い方を例文で紹介

トレジャーハンターが狙うお宝とは、基本腐らない物です。徳川埋蔵金のゴールドとか海底に沈む宝石とか。宝の持ち腐れという以上は、それらを食み出す意味を持つはずです。腐るといえば生ものですが、いくら高価といっても、食べ物を宝石呼ばわりするのは彦摩呂さんくらいでしょう。

不貞腐(ふてくさ)れている人にも腐るとか、人間が腐るという言い方もありますから、物より人に深くかかわった言葉であるといえそうです。

宝の持ち腐れの宝とは、もちろん人にとって大事なものを意味します。それもここでは、すでに備わっているもので、物質であったら価値のある所有物、人であったら技能や知識などの才能のことです。

宝の持ち腐れとは、せっかくあるものを活用しきれておらず、わざわざムダに放置している状態をさす言葉なのです。

上で示したように宝の持ち腐れには、貴重な物と、優れた能力、の大きく二つに分けられる意味がある言葉です。心情的には、話者の少しイラついたような惜しい気持ち、歯がゆさが、にじみ出た表現となるでしょう。

ちなみに、上の画像は大量のVHSテープの山だそうです。

今から三つの例を紹介しますが、活かし切れない「物の価値」「人の才能」「社会的損失」といった、人に密着した大小さまざまな使いた方であるのが分かるとおもいます。

問題になるのは必要というより価値です。価値は差異から生じますが、それは非常に大脳皮質的なもの、人間なものの特徴でありますから当然といえるでしょう。水の銘柄にこだわる熱帯魚や、首輪のブランドを吟味する犬もいません。

・ファンのみなさんから高価なお酒をよく送って頂くんだが、実はハードボイルド作家なのに下戸(げこ)なんだ。家の者もみんな飲まないし、棚の中に色とりどりの瓶が飾ってあるだけで宝の持ち腐れになっているんだよ。

・多くの人たちにとって、最近の家電製品はみなオーバースペックになってしまって、使いこなせていないから宝の持ち腐れ状態だ。

・運転もロクにしないし上手くもない、安全のためと言い切れない宝の持ち腐れなのに、どうして人は自分よりワンランク上の高級車をもとめたがるのか。

・君はこの仕事に当てられてしまった自分を役不足の宝の持ち腐れとだ思っているのかい、それとも、君が当てられてしまったこの仕事の方が役者部作の宝の持ち腐れだと思っているのかい。

・付き合っている相手と自分が、どちらが宝の持ち腐れかなんて、時間が経ってみなければ分からんもんですよ。案外、逆だったなんて話は良くあることだから、時間によって腐りやすいものは物でも人でも、やはり宝の持ち腐れだったことになる。

・漫画家の手塚治虫さんは医師免許を持っていたのに医者にはならず漫画になった。しかも60歳で結構早死にしている。宝の持ち腐れとはこのことで、誰よりも描きたい人だったのに、せっかくの知識も医者の不養生で終わってしまった。

・ルパンが『カリオストロの城』終盤でクラリスに言った「お～れのポケットには大きすぎらぁ」の言葉は、ローマの遺跡を独り占めしたら世界的損失となり、ルパンにとっても宝の持ち腐れになるという意味でしょう。

・前任者の舛添氏が失脚したのは私的無駄遣いだったが、小池氏は豊洲と築地でどっちつかずのことをやって工事を延期してしまい、それに伴う業者への損失補てんと安全対策追加費用などで38億円がムダになってしまった。東京都民の税金と、彼女にとっての知事の権力はまさに宝の持ち腐れとなった。

・橋下徹氏は大阪都構想の時、一番の看板として掲げたのが二重行政の解消、無駄をなくし年間最低4千億円の財源確保だった。だが、大阪府と大阪市による試算結果では976億円にしかならず、しかも、本来関係ない市営地下鉄民営化から生まれる財政効果を275億円と、約九十四億円も多く上乗せしていた。

それらを記者に指摘されても、弁の立つ彼は次々と論点を代えてしまう。政治家としての彼の弁舌は宝の持ち腐れである。

宝の持ち腐れの類義語をみていきたいと思います。なぜか動物ものが多いのですが、これは人間外の、意志の疎通をとれないものの立場からきているのでしょう。また、すべての人に共通した価値の不在なども考えさせられる点です。
 

猫に小判
他人からみて価値があったとしも、その真価を知らぬ者、部外者にとっては無価値にすぎない例え。

馬の耳に念仏
内容を理解できぬ者にとっては、どんなありがたい御経も雑音でしかなく、意味の無い例え。

豚に真珠
それを持つものがふさわしくない例え。役者不足に近い。

対象との間が不釣り合いで整合性が取れず、どちらか一方づつに、利益などの過剰さと過少さが生じてしまうこと。

場所ばかり取ってジャマなもの。仮に、一般的な価値があったとしても、所有する当事者にとっては必要がなく迷惑なもの。英語では「A white elephant」と表現されます。その由来としては、タイでは白象が神聖視されているので、王様が飼うのに巨費をかけすぎたため失脚してしまった、というのが一説です。

宝の持ち腐れに似た英語の定番の言い回しですが、客観的価値判断というより、能動性にとんだ人を後押しする、せっつかせるものが多い気がします。文化的違いでしょうか、アグレッシブです。

A book that is shut is but a block.　閉じた本は一個の塊でしかない。新品のままの本は死んでいるということ。
Not possession but use is the only riches.　所有ではなく使うのが富である。本当の豊かさは所持ではないということ。
Better spent than spared.　持っているだけより使うほうがよい。最良なのは使うことだということ。
Unused treasure is a waste of treasure.　使われない宝は宝のムダ。使わけなければ宝といえないということ。

ある村に3年間眠り続けた寝太郎という男がいました。干ばつの被害に苦しむ村で仕事をせず、ただ眠り続けていたました。そんな彼に周囲の者は批判的でしたが、ある時、寝太郎は突然むっくりと起き出し山に上ります。

巨石を力いっぱい動かし転がしつづけ、谷の傾斜の勢いをかり、そののまま川につき落としました。川の水がせき止められあふれ出し、田畑を浸して豊かな実りをもたらしました。彼は村人を飢饉から救ったのでした。3年間ただ眠っていただけではなかったのです。彼は交率的に灌漑(かんがい)を行う方法を模索していたのだでした。

大内氏家臣(おおうちし かしん)の平賀清恒(ひらが きよつね)が寝太郎のモデルとされています。話の内容は三年寝太郎と少し違っています。

武田軍が現長野県南佐久郡にあった山城の海ノ口城（うんのくちじょう)を攻めた折、城で迎え撃ったのが平賀清恒の父の平賀玄信でした。武田軍は攻めあぐね、一旦甲府へ帰還しましたが、武田晴信(後の信玄)は殿(しんがり)の最後尾を任され留まっていました。そうとは知らない油断した父玄信は兵を解き、わずかな兵で攻め滅ぼされてしまいました。

父が敗れた後、清恒は姉の嫁ぎ先である冷泉隆豊(れいぜい たかとよ)に身を寄せ、周防で大内氏に仕官しました。しかし、ここでも事態が一変。大寧寺の変(たいねいじのへん:大内義隆が家臣の謀反により、自害させられた政変)によって厚狭(あさ)に落ち延びて農業に従事することになりました。

そこで、水不足に苦しむ農民の声を聞いたとされています。3年と3ヶ月間にわたり思案を重ねた結果、彼は妙案を思いつきました。佐渡金山で働く者のために、彼は新品の草鞋(わらじ)をあつらえ持っていきました。古いものと無料で交換し、草鞋に付いていた砂金をかき集めました。

それを軍資金として厚狭川の灌漑工事にあてたのでした。名前を明かせない裏事情や、激変したその辺りの権力構造などもあり、平賀清恒としてではなく、地元では寝太郎さまと呼ばれる神様として、象徴的にあつかわれるようになりました。

『ゴンゾウ 伝説の刑事』は、2008年7月2日～9月10日までテレビ朝日系で放送された刑事ドラマです。主演は内野聖陽さん。タイトルにある「ゴンゾウ」の意味には、世界的にみても種々あるようですが、警察の隠語だと、能力や経験があるのに積極的に働かない人になります。

かつて、主人公の黒木俊英は捜査一課に在籍していましたが、3年前のある事件をきっかけに、現在は備品係に配属された一警察官。彼は毎日職務中にテレビゲームにうつつを抜かし、まわりからは変人扱いされ、ゴンゾウというあだ名がつけられていました。

まあ、わかりやすくいえば、警察版『美味しんぼ』の山岡史郎といったところでしょうか。ちなみに、英語 で「gonzo」といえば、風変わりな、異常な、ばか者。他には、偏見と独断による報道、そのような歪曲(わいきょく)した記事を書く記者、などの意味があります。

宝の持ち腐れという言葉には、濃厚に人の価値感が漂います。他人が自分がどう思うのか、AとBは不釣り合いか、対象と所有者に整合性があるかなどの価値判断が。宝の持ち腐れの真の意味とは、なにより人それぞれの主観性に委ねられるものです。その資格が自分にあるかないかも含めての、宝の持ち腐れという意味なのでしょう。