先だっての意味とは?先だってはなどの使い方を例文で紹介

先だっての意味とは、シンプルなもののはず。そう思って調べ始めたら、えらいことになってしまいました。侮るべからず、恐るべし先だって。その意味とは、その使い方とは、その間違いやすさとは、果たしていかなるものか。先だってとは、思った以上に捉えどころのない難敵でした。

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目次

  1. 1「先だって」を使う時のビジネスマナーを知っておこう!
  2. 2「先だって」の意味とは?
  3. 3『先だって』は『先立って』とする宣言
  4. 4「先だって」の使い方
  5. 5「先だって」の類語
  6. 6「先だって」を使った敬語表現
  7. 7「先だって〇〇する」は間違い
  8. 8度々顔を出す「先達て」
  9. 9「先だって」の英語表現
  10. 10言葉は時代とともに変化する「言の葉ひらひら」

「先だって」を使う時のビジネスマナーを知っておこう!

『先だって』とは、また、ずいぶんイージーな言葉を取り上げるじゃないかとお思いかもしれませんが、これが、意外とややこしいのをご存知でしょうか。日常の会話なら正確さは不要、むしろ親しみの妨げとなりますが、こと仕事となると、たちどころに支障が生じます。

えらそうなことをいってますが、ややこしくしたのは、どうやらこのような、今あなたが目にしている安易な情報サイトのせいかもしれないのです。このお題を頂いて調べ始めてからというもの、どんどんドツボにはまっていきました。その経緯も含め、その意味をおさらいしていきたいと思います。

「先だって」の意味とは?

『先だって』には二種類の意味があります。一つは、近い過去の出来事を喚起する「時間」を意味し、もう一つは、近い未来へ向け行う「準備」を意味します。前者の意味としては「先日」「先頃」「この間」と言い換えられますし、後者の意味としては「前もって」「予め」と言い換えられます。

――と、このような結論がネットにより導き出されました。しかし、あるサイトでは『先だって』は過去にしか適用されず、英語におけるWILLのような意志=未来へ向けての表現には使えないとありました。例えば以下のような文章は不正解になります。
 

・これから我社は他社に先だって、いち早くこの分野の事業に着手したいと思います。
・ただ今から講演に先だって、いくつかの留意点を述べたいとおもいます。

第二の意味である「準備」には、どう考えても未来がふくまれてしまいます。上の法則で行く限り「前もって」や「予め」の意味で使いながらから過去を表すものでなければなりません。意志=未来を反映させてはならないのです。果たしてそのような『先だって』とは、どんな文章になるのでしょうか。

「先だって」の読み方

『先だって』の読み方には落とし穴があるそうです。パソコンなどの文字変化では「さきだって」が『先だって』、『先達て』と二つ候補に挙がってしまうからです。大方のサイトでは『先だって』は「せんだって」ではなく、「さきだって」が正解としています。

しかし、『先だって』が過去にしか適用しないとした先に挙げたサイトでは、『先だって』には「さきだって」と「せんだって」と二つ読み方があり、意味は似ているが微妙にニュアンスが違うそうです。一方、『先達て』は『先だって』と読みも意味も同じだと書かれていました。

とはいえ、大半のサイトでは『先だって』は「さきだって」であり、『先達て』は『せんだって』と読みます。意味としては、『先達て』は「先日」を意味し、「準備」の意味はないとしています。

正直、「ええ加減にせぇよ」です。あまりの適当さ、食い違いの矛盾に投げ出したくなりました。楽勝wと思ったら、くっそほど時間がかかって前に進めねぇ。しかたがないので、よりストレートなものに縋(すが)りつきました。

『先だって』は『先立って』とする宣言

寄る辺ない状態におちいったので、余計な文章の纏(まと)わりついていないものに頼ることにしました。紙とネットの辞書です。まず、紙の辞書にもネットの辞書にも、ひらがな表記の『先だって』はありませんでした。紙には『先立って』がなく『先立つ』と『先達て』があり、見た限りのネットでは『先立って』と『先達て』がありました。

断固として、ここからは、タイトル(ライターはタイトルは勝手にいじれない)はどうあれ、『先だって』は『先立って』を当てはめさせて頂きます。

なぜ、このような齟齬(そご)が、尾ひれが、杓子定規(しゃくしじょうぎ)が、生まれたのでしょうか。おそらく、憶測ですが、伝言ゲーム(リライトリライト)による結果だろうと思います。

定義づけの詳細説明

紙の辞書、岩波国語辞典からは『先立って』がなく、『先立つ』と『先達て』が見つかりました。

・さきだつ『先立つ』1.先頭になる。率先する。「人に先立って進む」「人に先だって働く」2.順序が前になる。(イ) 前に行われる「試合に先立って開会式がある」(ロ) それより前に死ぬ「親に先立って死ぬ」(ハ)何よりもまず必要とする「先立つものは金」
・せんだって『先達って』さきごろ。このあいだ。

ネット、三省堂の大辞林からは以下の通りです。
・さきだって『先達て・先立って』副詞「さきだちて」の転。
1.さきごろ。せんだって。「-公時次の殿に召し具し候」歌舞伎/源平雷伝記」
2.前もって。あらかじめ。「かくて数馬の小姓坂田一角は-やしきへ帰れば」歌舞伎/水木辰之助
 
紙の方は『先立つ』と『先達って』を分けています。紙は数十年も前のものなので、使い方が改定されているかもしれません。したがって、紙を参考にしつつ、ネット辞書を軸としてやっていきたいと思います。

「先だって」の使い方

『先だって』の使い方に移りましょう。ごちゃごちゃいってきましたが、ネット辞書では「先日」と「前もって」です。もし、『先だって』の使い方に迷ったなら、迷わずこの二つを使えばいいだけのことです。無理して見栄を張る必要はありません。ビジネスライクでいきましょう。

「先だって」を使った例文

お話してきたように『先だって』とは、大別して二種類の意味がありました(ネット辞書による)。「先日」と「前もって」です。この二つを恣意的に解釈すれば、過去の時間=出来事と、前段階の行為=準備になります。これらにそって例文を挙げていきます。

先日の意味

・先だっては、大変お世話になりました。
・先だって話しておいた件について、そろそろ君の答えを聞きいておきたいのだが。

もっとも、オーソドックスな「先日」の意味で使われています。仕事でも日常でも、どこでも使える表現です。

「前もって」の意味

・冒険に先立って冒険家が専念することは、物質の調達よりスポンサー回りや現地での根回しの方だ。

・明日の出発に先だって、全員に注意事項をメールで配信しておいた。
・いよいよAに会うに先だって、いやというほど釘をさされた話がある。

これは準備の「前もって」を使っています。今から見て未来だろうと、過ぎ去った過去や、すでに終わっている過去完了だろうと、準備は準備です。

「率先」の意味

・しぶしぶではあったが、委員長になってからは、いやでも皆に先だって動くよう心掛けていた。

・こうやって目上の者が先だって働いていれば、黙っていても部下はついて来てくれるものと信じていた。

紙の辞書を参考にして、「率先」使いも入れてみました。

「先だって」の類語

類義語・関連語はきりがありませんが、いわゆる二種類の意味が含まれるものは少ないようです。
 

・先んじて・先達て・先駆けて・先立ち・先に立って
・先日・先頃・先に・前もって・予め・すでに
・以前に・早々と・先般・先達・先達て中・先達て来

以下、例文となります。

先んじて

・苦しい中、いち早く他社に先んじて先行投資しておいたのが、A社発展の鍵となった。
・見舞いに来た彼の口からついて出たのは、また他人に先んじようとする君の悪い癖がでたね、だった。

『先んじて』は、やや、かしこまった表現であり、「準備」と「先に」などの意味を持ち合わせますが、「先日」のような時間表現は含まれません。上は「予め」、下は「率先」の意味(紙の辞書参考)で使われています。

先達て中

・先達て中、しとしと雨が降り止まない
・森を彷徨う彼の背中に、先達て中から肉食獣の視線を感じていた。

「先達て」に「中」を足した慣用句です。「この間中」という意味になります。近い過去からの継続です。

先達て来

・先達て来、メッセージを送り続けているが返信がない。
・例の事件があってからというもの、先達て来、Aからの音信は途絶えた。

「先達て」に「来」を足した慣用句です。「この間から」という意味になります。上に比べると、継続期間が長めで断続的な印象です。

「先だって」を使った敬語表現

『先だって』自体を丁寧にいう場合は『先んじて』になりますが、『先だって』では連携する敬語などで表します。

先だってと内意

・先だってからの落ち着きのない挙動に、先生のご内意が透けて見えておられた。

内意とは、心の中で考えていること、内々の意向などを表します。

先だってと敬意

・先だっておっしゃられたことは、今日までずっと胸の内に残っていました。

上と同様に、近い過去からの時間を表し、相手への敬意を表しています。

先だってと感謝

・上京に先だってご用立てして頂きまして、感謝の念に堪えません。

こちらは、前もっての意味で使用しています。目上の方にも使える謝意を表しています。

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「先だって〇〇する」は間違い

もう、さんざん上記で述べてきましたから繰り言は避けます。それぞれの主張がそれぞれ微妙に異なっていて、正直よくわかりませんでした。しょせん、人はその時代の大多数に、なびくしかありませんから、気が付けばマジョリティ(多数派)に合わせていることになります。

すなわち、空気をアッラー(神)として、ネット辞書をコーラン(聖典)として、情報サイトをスンナ(範例)として。後は野となれ山となれ。

度々顔を出す「先達て」

『先だって』と『先達て』は対のように一緒に現れてきました。ときに、『先だって』と同じ読み同じ意味、異なる読み異なる意味を共有しながら。『先達て』のメジャーな意見としては、読みは「せんだって」、意味は近い過去の「時間」のみで「前もって」はなしでした。そこで、巷に散見する『先達(せんだっ)て』を見ていきたいと思います。

 
 

物語の中の「先達て」

――そして、なんでもない話しをしばらくかわしてから公爵が言った。
「こっちへこないか、レオナートー。せんだって君が話したことはなんだったかな、――」『シェークスピア物語』/チャールズ・ラム

釈尊の声に商人は顔を上げた。その動作は鈍く、目はうつろで輝きがなかった。
「ぼんやりしているわけではありません。ついせんだって死んでしまったかわいいこどものことを一心に思っていたのです。――」阿含物語/寄与者中村元、増谷文雄

――もうこうなっては、その一件もお話するほかありません。
せんだってのことですが、戸口に出てみると、白墨のしるしが目にとまりました。その翌日には、白いしるしとは別に赤いのがついていました。―― 『千夜一夜物語』 巻9の2/リチャード・バートン編/大場正史訳

「先だって」の英語表現

英語でみた場合、端的に時間を表す単語のみとなります。準備を意味する「前もって」は文脈によって示されます。日本語の『先だって』には「立つ」が含まれていますから、あやふやですが、自ずとそこを起点とした出発点と同時に前後関係が成立しています。

last timeを使った表現


・Thank you for your kind deal last time. :先だってはお世話になりました。
前回を意味する「last time」。最もシンプルな時間的表現になります。

 
 

the other dayを使った表現

・I’m sorry i was out when you called the other day. :先日電話をくださったとき、席を外していてすいませんでした。

・Have you though about the request I made you the other day? :先日お願いしたことは考えていてくれましたか?

他日を意味する「the other day」。上の状況は時代遅れですが過去の時間を表し、下は前もっての意味で使用しています。

言葉は時代とともに変化する「言の葉ひらひら」

言葉は時代とともに変化します。それはしかたのないことです。いつの時代だって人は空気(民主主義)に負けるのです。今回は大変疲れました。うなぎのシッポをつかんで頭を手繰り寄せようと悪戦苦闘しましたが、結局、頭は見つかりませんでした。

見つかったとしも、引力光線を吐くキングギドラか、冥府の入口を守護(しゅご)るケルベロスのように、いくつもの頭がゆらゆら帝国して、嘲笑うようみせつけるのでした。先だってであろうが、先達てであろうが、さきだってであろうが、せんだってであろうが、結局、正解はその時代の多数決にあるようです。

エドガー・アラン・ポーに『群集の人』という短編があります。その冒頭にはラ・ブリュイエール『The Characters of Manから』からの言葉が掲げられています。「ただ一人いることに耐えぬという、この大いなる不幸」を最後に、先達て来の言葉の雨から頭を引っ込め、亀になろうと思います。

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