イヤミスの意味とは?おすすめのイヤミス小説を紹介!
イヤミスという言葉を聞いたことがありますか?イヤミスとは、読んだ後に不快になる小説ジャンルをいいますが、それは主にミステリーです。では嫌な気分になるのにどうして読みたいと思うのでしょうか。ここではイヤミスとは、そしておすすめの作品を紹介します。
目次
後味が悪いのにどんどん読んでしまうイヤミス小説とは?
皆さんは、最近流行りのワードに「イヤミス」というのがあるのをご存知でしょうか?「イヤミス」は後味が悪いミステリーの略だそうですが、そういうジャンルが書籍には出来ているのです。
本を読むことで自分の人生とは全く違った人生を体験出来ますし、知らなかったことを知ったりわくわくしたりで、人生にスパイスを与えてくれるのが「読書」ですが、嫌な気持ちになるのに読む、というのはどういうことでしょうか。
今回は、最近人気になっている「イヤミス」小説を紹介していきます。一体どんな魅力があり、多くの人が手に取るのでしょうか。
イヤミスの意味とは?
イヤミスとは、「嫌な気持ちになるミステリー」の略語です。ミステリー小説は基本的には、何か犯罪が起こり、それを取り巻く人間関係と結末、犯人が誰とその理由を描いています。
謎がすっきりとして犯人が捕まり、読了後にすっきりすることが多いのが、ミステリーというジャンルです。殺人事件など、自分の周囲には起こることがない出来事を取り扱うため、読者は刺激を味わうことができます。
しかし、イヤミスは読了後に嫌な気持ちになる小説たちです。なんともいえない後味の悪さが残ることが「イヤミス」の特徴ですから、なぜ人気があるのかが判らない方もいるでしょう。
イヤミス小説の魅力
では「イヤミス」の魅力を説明していきましょう。イヤミスを読了後、なんともいえない後味の悪さが残る理由として、多くの場合は「人の醜い部分を見せ付けられたから」というものがあります。
すっきりしなくて嫌だ、という方もいれば、「後味の悪さがクセになる」という方もいるのです。そこにあるのは正直な人間の姿で、人間なんてどんな素晴らしいことを言っていても一皮むけば皆こんなもの、という達観もあります。
普通は隠してしまうそのような醜い感情や姿を描いている、その点がイヤミスにゾクゾクするような魅力をかもし出しているのです。
イヤミス小説の選び方のコツ
イヤミスでは最後の後味の悪さが醍醐味なわけです。しかし人間には好みがあり、その「後味の悪さ」が自分好みのものでなかった場合、ただ単に嫌な気持ちだけが残ってしまうでしょう。
そうなれば、「時間を無駄にした、読まなければ良かった」という感想が残り、その日は上機嫌で過ごせなくなってしまいますので気をつける必要があります。
ですからまず、イヤミス小説には選び方があると知っておいて下さい。イヤミス小説の選び方をここで紹介していきます。
人気作家から選んでみる
流行ともいえる「イヤミス」ジャンルですので、たくさんの作家が作品を書いています。その中でも人気作家から読んでみることがおすすめです。なぜなら筆力があるので読みやすく、1冊読めば傾向がわかるからです。
話題の作品やベストセラーから選んでみる
ベストセラーになったということは、それだけ多くの人が魅力を感じたということでもあります。ベストセラーになるためにはそれなりの文章力やストーリー性が求められますので、最後まで飽きずに読めるでしょう。
大きく外してしまうことはないでしょうから、イヤミス初心者であれば話題のイヤミス作品やベストセラーから選んでみましょう。
あらすじを参考にして選んでみる
ある程度のあらすじをさらっと読んで確認した後に決める、というのも有効です。イヤミス小説を読みなれている人なら「こんな傾向が好き」と判っているでしょうから、あらすじで大体の雰囲気を確認するのが良いです。
イヤミスの女王と言われる作家を紹介
ではここで、イヤミスの女王と言われている作家さんたちを紹介していきます。いずれも映像化などされている作品を書いている作家達で、ストーリーテラーと言われている方もいます。
ミステリーの女王といえばアガサ・クリスティーですが、現代でも楽しく読まれ、ファンはたくさんいます。イヤミスの女王たちにもファンはたくさんいますので、あなたもその一人になるかもしれません。
では順番に有名なイヤミス作家の特徴などを紹介していきます。
湊かなえ
イヤミスと言えば、真っ先に浮かんでくる、と言われるのが「湊かなえ」さんです。この方の作品は数多くのものが映像化されており、「告白」などを映画で見たことがある方もいるでしょう。
湊かなえさんの特徴は、ストーリーがわかりやすいものが多く、とっつきやすいことです。多くの作品で登場人物それぞれの視点でストーリーが展開していき、次々と新たな事実が判明する手法をとっています。
伏線が多いので、最後までくると「なるほど!そうだったのか」というすっきり感は味わえます。しかし、そんなこと知りたくなかった、と思ってしまう事実を最後の最後に判明させ、読者にショックを与える事も多いです。
真梨幸子
2005年に「弧虫症」という作品でメフィスト賞を受賞し、イヤミス路線になったのが真梨幸子さんです。この方の作品は「女性の嫌な部分を描き出す」と言われています。
男女間や女性同士でのどろどろした感情を題材にしていることが多く、エログロ要素もふんだんにあります。
独特の不快感があるのですが、読んだ後に「良かった、私はまだそこまで酷くない」と思う人が続出、逆に癒されると評判です。
沼田まほかる
56歳でデビューと遅咲きではありますが、沼田まほかるさんの作品は2017年に2作品が立て続けに映画化されたので、知っている方も多いでしょう。彼女のイヤミス作品の特徴は、犯罪者達の心の中を浮き彫りにする表現です。
もしかしたら自分も同じことをするかも、と読者を不安に思わせることで、読了感に後味の悪さをかもし出すのです。
ただし、彼女が書く作品では人間が持っている残酷さだけというわけではなく、根底に潜んでいる愛情を感じることも出来ますので、不快感のみではありません。
おすすめのイヤミス小説10選
では、いよいよ具体的におすすめのイヤミス小説を10作品紹介していきましょう。どれがあなたのヒットになるかわかりませんが、好きな作品が出来たらその路線を追うことで安定して魅力を感じられるでしょう。
1.湊かなえ「告白」
湊かなえといえば「告白」と言われています。女性教師のショッキングな告白から始まるこの作品は、松たかこさんが主演で映画化されています。
娘を殺された母親の復讐劇を、「級友」「犯人」そして「犯人の家族」と次々に視点を変えながら描き、事件の全体像を浮き彫りにします。
作者 | 湊かなえ |
出版社 | 双葉社 |
価格 | 単行本1470円 文庫本650円 |
発売日 | 2010年4月8日 |
おすすめ度 | ☆☆☆☆☆ |
2.真梨幸子「ふたり狂い」
短編連作集である「ふたり狂い」は、同姓同名の主人公が自分がと思い込んでしまった川上孝一が作者を刺してしまうところから始まります。この事件を発端にして、次々に色んな事件が起こっていきます。
作者 | 真梨幸子 |
出版社 | 幻冬舎 |
価格 | 756円 |
発売日 | 2016年10月7日 |
おすすめ度 | ☆☆☆☆☆ |
3.沼田まほかる「ユリゴコロ」
恋とミステリー、そして絶望というキャッチコピーがあるのがこの作品です。ある時に見つかった4冊のノートのタイトルが「ユリゴコロ」ですが、その中身は殺人に取り付かれた人間の告白文でした。
読んでしまった主人公は動揺しつつも殺人者のノートを読んでいきます。この作品もドラマ化されています。
作者 | 沼田まほかる |
出版社 | 双葉社 |
価格 | 689円 |
発売日 | 2014年1月9日 |
おすすめ度 | ☆☆☆☆ |
4.宮部みゆき「誰か」
後味が悪いのにぐいぐい読ませてしまう筆力として人気な作家に、宮部みゆきさんもいます。この「誰か」は何だかもやっとするイヤミスとして有名です。
主人公は元児童書専門出版社の編集長で、巨大グループ企業の今多コンツェルンの婿養子になった杉村三郎です。シリーズものなので、順番に読むのがおすすめです。
作者 | 宮部みゆき |
出版社 | 文藝春秋 |
価格 | 778円 |
発売日 | 2007年12月6日 |
おすすめ度 | ☆☆☆☆ |
5.我孫子 武丸「殺戮にいたる病」
残酷で狂気的なイヤミス作品が、「殺戮にいたる病」です。東京の街で猟奇的な殺人を繰り返す男、蒲生稔が主人公で、殺害した女性たちの話を中心としてそこに至るまでの経緯が描かれています。
この作品は、エログロが苦手な方にはおすすめしません。殺人シーンは非常に残虐ですが、見事な伏線があってラストシーンの衝撃は楽しめるでしょう。
作者 | 我孫子 武丸 |
出版社 | 講談社 |
価格 | 756円 |
発売日 | 1996年11月14日 |
おすすめ度 | ☆☆☆☆ |
6.深木 章子「鬼畜の家」
「鬼畜の家」は次々と家族が殺される中で生き残ってしまった一人の娘にまつわる話です。元警察官だった探偵が調査をする中で、衝撃的な事実が浮かび上がります。
この作品は「榊原聡」のシリーズの1作目です。最後にどんでん返しがあって驚くものの、それで救われるわけではありません。かなり暗い物語です。
作者 | 深木 章子 |
出版社 | 講談社 |
価格 | 730円 |
発売日 | 2014年4月15日 |
おすすめ度 | ☆☆☆☆ |
7.真梨幸子「殺人鬼フジコの衝動」
一家惨殺事件で生き残った少女は、心の傷を乗り越えて懸命に生きていこうとしています。しかしやがて彼女は死刑となる「殺人鬼フジコ」となってしまうのです。
この作品は累計発行部数が50万部を超えるベストセラーです。フジコを知る人物の記録小説という形をとっており、いじめや虐待、殺人など辛い描写が続きます。かなり救いのない、悲しい小説です。
作者 | 真梨幸子 |
出版社 | 徳間書店 |
価格 | 752円 |
発売日 | 2011年5月7日 |
おすすめ度 | ☆☆☆☆ |
8.米澤穂信「ボトルネック」
断崖から転落して死んだと思ったのに、なぜか自分は生きている。しかも、戻った現実はパラレルワールドだったという話ですが、心理的にとても残酷な展開が続きます。
主人公が救われることがない青春ミステリー作品です。
作者 | 米澤穂信 |
出版社 | 新潮社 |
価格 | 594円 |
発売日 | 2009年9月29日 |
おすすめ度 | ☆☆☆ |
9.西澤保彦「仔羊たちの聖夜(イヴ)」
シリーズものの3作目ですが、人間の嫌な部分が露骨に描かれていることでイヤミスとして人気です。
クリスマスイヴにマンションから転落しした女性の死の真相解明に挑む話です。結末はかなり残酷ですので、精神的に落ち着いているときに読みましょう。
作者 | 西澤保彦 |
出版社 | 幻冬舎 |
価格 | 741円 |
発売日 | 2008年10月10日 |
おすすめ度 | ☆☆☆ |
10.近藤史恵「はぶらし」
高校時代の離婚した子連れの同級生を1週間の約束で居候させる主人公の話で、内田有紀さん主演でドラマ化された作品です。
こんなの嫌だ、と思いながら、イライラしながらも最後まで読んでしまいます。
作者 | 近藤史恵 |
出版社 | 幻冬舎 |
価格 | 648円 |
発売日 | 2012年9月27日 |
おすすめ度 | ☆☆☆ |
不快とつまらないは違う
イヤミスという言葉が出る以前にも、怪奇小説と呼ばれるものや、グロイ描写が有名な作品はたくさんありました。ぞっとするホラー系小説などもその内に入るでしょう。
嫌な気分にさせられる、読了感は決してよくないのに、なぜはまってしまう人が多いのかといえば、一番多きな理由としては「不快にはなるけれど、つまらないわけではない」からでしょう。
むしろ不快になる、絶対これは悲しくなる、と判っていても読んでしまうのは、本として面白い内容であり、気持ち悪いとは違うからです。わかってるのに読んでしまう面白い作品が多い、というのがイヤミスのジャンルなのです。
イヤミスの魅力にあなたも虜になるかも
後味が悪いかもしれませんが、いずれも人間の本質に深く踏み込むような内容であり、物語としては間違いなく面白いものばかりです。ただグロくて気持ち悪い、というものではないと理解しましょう。
気になったらまずはベストセラーから読んでみてはいかがでしょうか。不快に思いながらも読む手が止まらない、という不思議な現象を体験できるでしょう。