2019年06月13日公開
2019年06月13日更新
甘んじて受け入れるの意味や対義語!甘んじてお受けいたしますの使い方など
2018年の悪質タックルの問題において、日本大学が「甘んじて受け入れる」を使って謝罪したことで、大きく批判されました。この騒動で「甘んじて受け入れる」の意味や使用法が、気になった人もいるでしょう。今回はその「甘んじて」の意味や使用法などを確認したいと思います。
目次
日大は「甘んじて」の使い方を間違えて大炎上!
皆さんは2018年5月に、悪質タックル問題で騒動になった日大側の対応を覚えているでしょうか?日大のアメフト部の部員に指示し、関西学院大学のアメフト部の選手に危険なタックルさせたという問題で、日大は謝罪のコメントを出しました。
しかし、その文言の中に「甘んじて」という言葉が入っていたことから、反省の色が見えないと、ネットやテレビで日大は批判の的になったのです。この騒動を見ていて、「甘んじて」の自分の使い方に不安を覚えた人もいるのではないでしょうか?
そこで、今回は「甘んじて」の使い方や意味、対義語などについて、しっかり確認していきましょう。「甘んじて」の使い方や意味を確認しておきたい人は、ぜひしっかり注目してみてください。
「甘んじて」の意味とは?
「甘んじる」とは、元々は甘味を感じるという意味の「甘んずる」という言葉でした。甘味を感じるという言葉には、楽しさや満足を感じるというニュアンスがあり、かつてはポジティブな意味で使われることが多かったようです。
しかし、時代が経るに従ってその意味は、妥協して与えられたもので楽しむ、満足するという意味に変わっていきました。現在では「甘んじて」は、妥協して耐え忍ぶというネガティブな意味の言葉として使われています。
以下では、よく日常の中で使われる「甘んじて受け入れる」という文言の意味を、詳しく見ていきましょう。
「甘んじて受け入れる」の意味は?
「甘んじて」は、よく「甘んじて受け入れる」という形で使われます。「甘んじて受け入れる」とは、納得のいかない批判や処罰を、あえて抵抗せずに受け入れるという意味の文言なのです。
そのため、謝罪や叱責を受ける場面で、「甘んじて受け入れる」を使ってしまうと反省していない態度をとっているように見えてしまいます。「甘んじて受け入れる」は、例えば苦しい状況下でも前向きに頑張りたいという意思を表明する時に使うようにしましょう。
「甘んじて」の使い方
「甘んじて」の正しい使い方も、しっかり意味とセットで確認するようにしましょう。「甘んじて」は、受動的な態度で、ぶつけられる批判や下された罰などを、大人しく受け入れる時に使います。
例えば、謂れのない理不尽な批判にさらされた時に、今後のことを考えてあえて冷静に受け入れるという時に使うのです。以下では、「甘んじて」の違和感のない使い方と例文を、紹介していきたいと思います。
「甘んじて」を使った例文
以下では、「甘んじて」を使った例文を、いくつか解説していきましょう。「甘んじて」は使い方や使う場面を間違えると、周囲からの信用を失ってしまう可能性もある言葉です。
そのため、意味と共に以下の例文も覚えて、正確に「甘んじて」を使えるようにしておきましょう。
例文①批判を甘んじて受け入れる
「批判を甘んじて受け入れる」とは、いわれのない批判にさらされた時に、あえて受動的な態度をとり全てを受け入れる時に使う例文です。
批判に対して釈明することで、より問題が大きくなり、こじれてしまうこともあるでしょう。そのような時には、周囲の人のことや今後のことを考えて、あえて自分が悪者になるという判断を下すこともあります。
そのような時に、「批判を甘んじて受け入れる」を使うことができるのです。
例文②甘んじてお受けいたします
目上の人から何かを依頼されて快諾する時には、「甘んじてお受けいたします」という例文が使えます。「甘んじてお受けいたします」には、その依頼内容に納得して、受け入れますという意味があるのです。
「甘んじて」には納得するという前向きな意味もあるので、このようにポジティブなニュアンスで使われることも多いのです。
しかし、相手によっては、しぶしぶ依頼を受け入れるというネガティブな意味と誤解されることもあるので、相手を見極めて使うようにしましょう。
例文③現状に甘んじる
「現状に甘んじる」という例文も、日常でよく使われるでしょう。「現状に甘んじる」とは、現在の状況に対して保守的な態度で、停滞を受け入れている様子を意味します。
向上心や意欲が感じられない言葉なので、「現状に甘んじることなく頑張りたい」というように、否定の形で使われることも多々あるのです。
「甘んじて受け入れる」の対義語
・真摯に受け止める |
・重く受け止める |
・厳粛に受け止める |
「甘んじて受け入れる」とは、意味が真逆になる文言がいくつかあります。例えば、上の表で紹介した「真摯に受け止める」や「重く受け止める」、「厳粛に受け止める」といった文言です。
どの文言も謝罪の場面でよく使われるでしょう。これらの言葉を謝罪の場面で使うことで、より謝罪の意思や態度が相手に伝わりやすくなり、事態が良い方向に転じやすくなります。以下では、これらの文言を1文ずつ詳しく取り上げていきましょう。
真摯に受け止める
「真摯に受け止める」とは、誠実にかつ素直に物事を受け入れるということを意味する文言です。この文言は謝罪の時に特によく使われるでしょう。
「甘んじて受け止める」とは対称的に、批判や罰を納得できるものとして誠実に受け入れるというニュアンスの文言です。
日大の謝罪の場面で「甘んじて」を使って炎上した事件でも、この「真摯に受け止める」という表現ならば、問題にならなかったと考えられます。
重く受け止める
「重く受け止める」とは、物事を重大なもの認識して受け止めるという意味の文言です。この文言も謝罪のシーンで使う頻度が高いでしょう。自分自身の過ちの重大さを認識しつつ、周囲からの批判や罰を素直に受け入れ反省しているというニュアンスになります。
また、謝罪の場面以外でも、とある物事を深刻なものとして認識するという意思を表す時にも使われるでしょう。
厳粛に受け止める
「厳粛に受け止める」とは、真面目かつ厳かな態度で物事を受け入れるという意味の文言です。真正面から物事を見定めつつ、自分にとって都合の悪い物事も素直に受け入れるというニュアンスになります。
「真摯に受け止める」と同じく、相手に反省している態度が伝わりやすいため、公の謝罪の場面で使われやすいでしょう。
また、「重く受け止める」と同じように、物事を自分にとって真面目に向き合うべきこととして受け入れるという意思を表明したい時にも使います。
「甘んじて受け入れる」の類語表現とは
「甘んじて受け入れる」には、意味がよく似た表現もたくさんあります。そこで、以下では「甘んじて受け入れる」の類語もいくつか紹介していきましょう。「甘んじて受け入れる」の言い換え表現も覚えておきたい人は、ぜひ以下の内容を参考にしてみてください。
不本意ながら受け入れる
「甘んじて受け入れる」の類語には、「不本意ながら受け入れる」が挙げられます。「甘んじて」にある納得いかない、不十分に感じるといったニュアンスが、「不本意ながら」という言葉にあるのです。
「甘んじて」よりも分かりやすい表現なので、あえて「甘んじて受け入れる」を「不本意ながら受け入れる」に言い換える人もいるでしょう。
「甘んじて」の意味や使い方に自信がない時には、誤用を避けるために「不本意ながら受け入れる」を使ってみてください。
甘受する
「甘受する」も、「甘んじて受け入れる」の類語の1つです。「甘受する」の方が「甘んじて受け入れる」よりも畏まった表現になるため、公の場や公の文章では「甘受する」が使われることが多いでしょう。
また、「甘受する」には都合の悪い物事もありのままに捉え、抵抗せずにその物事に従うというニュアンスが強くあります。
唯々諾々と受け入れる
「唯々諾々と受け入れる」も、「甘んじて受け入れる」の類語の1つと言えます。「唯々諾々」(いいだくだく)とは、他人からの意見全てに忠実に従うという意味の4文字熟語です。
「唯々諾々に受け入れる」には、物事の都合の良し悪しに注目せず、ただその物事の流れに従うというニュアンスがあります。
そのため、理不尽な罰は批判にあえて耐える時にも、「甘んじて受け入れる」の代わりに使うことができるのです。
ちなみに、古代中国で法家という思想を広めていた韓非の著書「韓非子」(かんぴし)に記載されたエピソードから、この「唯々諾々」という言葉が生まれたとされています。
人に仕える職にある人は、主が何も命令しなくても、「はい」と返事をして主が望むことをするというエピソードです。このエピソードの主に全く逆らわず、必ず「はい」と肯定の返事をして素直に行動する従者の様子から、「唯々諾々」という言葉が生まれました。
容認する
日常で使うことが多い「容認する」も、「甘んじて受け入れる」の類語の1つです。「容認する」には、受け入れがたいものや耐えがたいものも、あえてそのまま許容するというニュアンスがあります。
そのため、主に法律や道徳に照らし合わせると、良いとは言えないことを認める時に使われるのです。また、「容認する」という言葉は、許可という意味合いも強いので、間違った行動をした人やその行為そのものを許す時にも、「容認する」は使われます。
大きな心で落ち度のある人を許したい時には、ぜひ「容認する」を使ってみてください。
「甘んじて受け入れる」を使う際の注意点
「甘んじて受け入れる」を使う際には、いくつか注意すべき点があります。注意すべき点を意識せず使ってしまうと、悪質タックル事件での日大の失言による炎上のようなことになりかねません。
そのため、「甘んじて受け入れる」を使いたい人は、ぜひ以下で紹介する注意ポイントをしっかり覚えてみてください。
自分に非がある場合は使えない
「甘んじて受け入れる」とは、理不尽な周囲からの批判や罰も、あえて受け入れて耐え忍ぶということを意味する文言です。そのため、明らかに自分に非があり、罰や批判が当然のものと考えられる時には、「甘んじて受け入れる」は使えません。
謝罪しなくてはいけない場面や当然の批判を受けている場面で、「甘んじて受け入れる」という文言を使ってしまうと、怒っている相手を逆なでしてしまうでしょう。
また、謝罪の言葉を発していても、本心では全く反省していないのではと勘ぐられてしまいやすくなります。そのため、「甘んじて受け入れる」は自分が本当に謝罪しなくてはいけない場面では、絶対に使わないようにしましょう。
謝罪の気持ちが伝わらない
相手に謝罪の気持ちを伝えたい時には、「甘んじて受け入れる」は使用を避けた方が良い言葉でしょう。「甘んじて受け入れる」とは、罰や批判に納得していないというニュアンスが強い言葉です。
そのため、謝罪の気持ちを相手に強く伝えるために使うと、本心では反省していないと相手に受け取られる可能性が高いでしょう。そのため、謝罪の気持ちを伝えたいシーンには、「甘んじて受け入れる」は不適切な言葉と言えます。
日大の悪質タックル問題での失言でも、「甘んじて受け入れる」を反省の態度を伝えようと使ってしまったことで炎上してしまったのです。
「甘んじて受け入れる」の英語表現
「甘んじて受け入れる」には複雑なニュアンスがあるので、英語での表現は難しいと感じる人が多いでしょう。しかし、シンプルな英語でも「甘んじて受け入れる」をしっかり表現することができます。
以下では、「甘んじて受け入れる」の英語表現を2つ詳しく説明していきましょう。「甘んじて受け入れる」を英語でも使いこなしてみたい人は、ぜひ以下の英語表現をマスターしてみてください。
納得しないながらも屈服する意味のある”submit to”
「甘んじて受け入れる」は、英語では”submit to~”と表現されます。”submit”は、納得いかないながらも屈服するという意味の英語で、後ろに付いた”to”の後に名刺や動名詞などを入れることで、「~を甘受する」という意味になるのです。
例えば、「刑罰を甘んじて受け入れる」は、英語では”To submit to a punishment”と表現されます。
諦念が強いニュアンスの”resigned to”
「甘んじて受け入れる」は、英語では”resigned to~”とも表現できます。”resigned”は、諦めながらもという意味の英語で、”submit to~”と同じように後ろに名詞が付くことで具体的な事を甘受するという意味の言葉になるのです。
例えば、「甘んじて犠牲になることを受け入れる」は、”Become resigned to being a sacrifice”と英訳されます。
「甘んじて」の意味や使い方をしっかり確認して誤用を防ごう
今回は意外と曖昧になりやすい「甘んじて」の意味や使い方について、詳しく解説しました。2018年の日大の悪質タックル問題での失言による炎上事件のように、「甘んじて」の使い方を少し間違えるだけでも、大きな問題に発展する可能性もあります。
そのため、「甘んじて」の使い方や意味は今回しっかり把握して、「甘んじて」の誤用を避けましょう。「甘んじて」を正しくかっこよく使いこなし、周囲の人からの信頼度をさらに上げてみてください。