上申書殺人事件の概要・判決!三上静男と後藤良次の生い立ちや現在!

上申書殺人事件とは、死刑囚後藤良次が上申書を提出し、三上静男が首謀者として告発された事件のことである。上申書殺人事件は書籍化・映画化されるなど世間の注目を大きく集めた。後藤良次と三上静男の生い立ちや今、犯罪や心理の特徴などをまとめてご紹介する。

上申書殺人事件の概要・判決!三上静男と後藤良次の生い立ちや現在!のイメージ

目次

  1. 1世間を震撼させた上申書殺人事件
  2. 2上申書殺人事件・後藤良次と三上静男
  3. 3上申書殺人事件とは?
  4. 4上申書殺人事件の関連人物
  5. 5後藤良次の現在
  6. 6三上静男の現在
  7. 7後藤良次と三上静男の異常な心理
  8. 8上申書殺人事件の判決は?
  9. 9上申書殺人事件を映画化した「凶悪」
  10. 10狂気と凶悪が生み出した殺人事件の数々

世間を震撼させた上申書殺人事件

陰から伸びる手形

平成17年3月、殺人事件について死刑判決を受けていた死刑囚、後藤良次が雑誌「新潮45」の取材記者宮本太一にコンタクトを取った事から、上申書殺人事件は明るみにでるきっかけとなった。後藤は記者と直接会っての取材を希望し、記者宮本氏は後藤の生い立ちまで遡り取材を重ねた。

平成17年年10月、死刑囚後藤良次が弁護士を通して三上静男を告発する内容の上申書を提出した。死刑囚が新たな殺人事件を告発するという前代未聞の事件は日本中で話題となり、更にそのタイミングに合わせて兼ねてより取材を重ねていた記事を掲載した雑誌「新潮45」が発売された。

この事件は「上申書殺人事件」と呼ばれ一大センセーショナルを巻き起こす事となった。

上申書殺人事件・後藤良次と三上静男

闇で出会う男女

元暴力団員組長である後藤良次は、上申書殺人事件以前は三上静男を「先生」と呼んでいた。後藤良次は殺人、覚せい剤取締法違反、銃刀法違反等いくつもの実刑判決を受けている凶悪犯であった。

後藤良次は服役後茨城県に移り住み、三上静男と出会う事となった。三上の指導で不動産ブローカーとして莫大な利益を得た後藤良次は三上静男を「先生」と呼び慕う関係となっていった。後藤が死刑判決を言い渡されていながら、三上は以前と同じ生活を送っていたが、後藤により上申書殺人事件の首謀者として告発されることとなった。

上申書殺人事件とは?

店頭に並ぶ新聞

上申書殺人事件は、死刑囚後藤良次が、三上静男を殺人事件2件、死体遺棄事件1件につき上申書を提出した事件である。後藤良次の死刑判決が覆されることはなく、三上静男は証拠不十分につき死刑判決を言い渡されることはなかった。今現在は後藤、三上共に服役中である。

首謀者は三上静男・実行犯は後藤良次

手錠を持つ人形

元暴力団組長であった後藤良治は、三上静男を「先生」と呼び慕っていが、後藤良次は上申書殺人事件として殺人事件2件、死体遺棄事件1件を告発したが、手記の中で、いずれも事件を計画したのは三上静男であり、自分はあくまで指示通りに実行したまでであると記している。

上申書提出に至る経緯

書類の山

後藤良次は三上静男を慕い、その指示に従うことにより莫大な利益を手にしていた。「先生」こと三上静男が首謀したある殺人事件について、殺人を実行した事に対する報酬を受け取る取り決めとなっていたが、直前に別の刑事事件で逮捕されたことによりこの取り決めを三上静男に破棄された。

また三上静男が世話をしていた後藤良次の舎弟が自殺した際、舎弟の財産は三上静男により処分された。

三上静男と主従関係を結ぶことで法外に莫大な利益を手にしていた後藤良治であったが、こうした出来事が引き金となり、「先生」である三上静男を告発し、上申書殺人事件へと発展し今に至る。

上申書殺人事件の概要

判決文

後藤良次の生い立ちは凶悪犯罪歴の並ぶ壮絶なものだ。上申書殺人事件以前に「宇都宮監禁殺人事件」の首謀者及び実行犯として死刑判決が確定していた。死刑判決の上訴中、後藤良次は三上静男を「石岡市焼却事件」「北茨城市生き埋め事件」「日立市ウォッカ事件」の3つの事件につき上申書を提出した。

初公判で後藤は「私はシロです。命がけで争います」などと容疑を全面否認していた。

同時に後藤良次は三上静男を告発する内容の手記を雑誌「新潮45」に公開し、後藤良次が告発し三上静男が関与した1つの事件につき刑事事件化した。こうした一連の事件を上申書殺人事件と呼ぶようになった。

後藤良次が上申書殺人事件を告白【宇都宮監禁殺人事件】

ジャガイモの殺人

宇都宮監禁殺人事件について見ていきましょう。

宇都宮監禁殺人事件の詳細

平成12年元暴力団組長であった後藤良次は、茨城県常陸太田市の知人斎藤正二さんに激怒し、当時仲間であった小野寺宣之と共謀し自宅にて暴行を加えた。その後、両手両足を縛った状態で那珂川に投げ込み殺害した。小野寺も上申書殺人事件に関与している。

栃木県宇都宮市内のとあるマンションに住む知人の小堀展史さんの自宅に、後藤良次、小野寺宣之など合計5人が侵入し、小堀さんとその仲間4人の両手両足を縛った状態で監禁した。4人が非常に高濃度の覚醒剤を投与した為、小林潤美さんが死亡した。死因は急性薬物中毒であった。

また、残りの3人には刃物で胸など数か所を刺した後、自宅の部屋に灯油をまいて放火した。後藤らが現場から逃走した直後、被害者の男性が自ら消火した為死者はでなかったものの、3人は重軽傷を負った。

宇都宮監禁殺人事件の判決

平成15年2月24日、宇都宮地裁は後藤に死刑判決を言い渡した。平成16年7月6日に、東京高裁は一審判決を支持する意向を示し、後藤良次の控訴を棄却した。平成19年年9月28日、最高裁は後藤良次の控訴を棄却して、これによって後藤の死刑が確定した。

ここでの死刑判決は上申書殺人事件後も覆されることはなかった。尚、小野寺宣之には無期懲役が言い渡されており、今現在も服役中である。

三上静男と後藤良次が行った3つの事件

フードをかぶった影

後藤が上申書で3つの事件を告発し、そのうち2件は不起訴、1件のみ刑事事件として立件された。

石岡市焼却事件

燃える薪

平成11年年11月中旬に「先生」こと三上静男が金銭を巡るトラブルから、ネクタイを使い男性の首を絞めて殺害した。遺体は殺人現場である自宅から茨城県石岡市にある自身の会社まで運び、敷地内の焼却場で新聞紙を丸めて火を付け、廃材と共に焼却した。

被害男性については情報が少なく得られた情報は、年代は推定60歳代ということ、あとは名字しか分からなかった。遺体は完全に焼き尽くされ跡形も残っておらず、自宅住所や身元の確認さえ困難な状況であった。

この事件で三上静男は億単位の資金を手にしたとされている。後藤良次によって上申書殺人事件の一部として告発されたが、証拠不十分により不起訴となった。

北茨城市生き埋め事件

木漏れ日の林

平成11年年11月下旬、三上静男はが埼玉県大宮市(現さいたま市)の資産家の男性を水戸市の自宅駐車場で拉致して自身の所有地まで車で運んだ。その場に穴を掘り、男性を穴の中に入れて生き埋めにして殺害。男性の土地はいったん三上静男の名義に変更された上で、その後売却している。

この殺害事件における被害男性は特定されている。男性の自宅のある住民票移動の履歴や土地登記の移動も上申書に記載のある通り裏付けられた。しかし、三上静男が所有の土地で遺体が見つからなかった(証拠隠滅のため、遺体を掘り起こして別の土地に移したという説もある)。

被害男性は身寄りがなかった為、DNA鑑定しても結果的に本人と断定することがしかった。この事件で三上静男は7000万円を入手したとされている。石岡市焼却事件と同様、上申書殺人事件の一部として告発されたが、証拠不十分により不起訴となった。

日立市ウォッカ事件

ウォッカとピスタチオ

平成12年7月、三上静男はかねてより借金を抱えていたカーテン店経営者の男性(当時67歳)を日立市内の事務所で軟禁状態に置いた。この男性の殺害は、男性の妻や娘、娘婿が保険金目当てで依頼したものだった。

持病があり、糖尿病や肝硬変を患っていた被害者の病状悪化を待ち、およそ1ヶ月間にわたって大量の酒を与えた続けた。同年8月中旬に三上静男の自宅でアルコール度数の高いウォッカを無理やり飲ませ、病死に見せかけて殺害。遺体を山中の林道に運んで遺棄した。

遺体は8月15日に遺体が発見されたが、病死を装っている為、警察は事件性無しと判断し処理した。その結果、遺族は生保会社2社から合計約1億円の生命保険金を手にしたが、その大部分は三上静男、殺人を依頼した妻、娘、娘婿らによって山分けされた。上申書殺人事件として告発された3つの事件のうち、唯一刑事告訴された事件となった。

告発された3件のうち唯一告訴された事件

グラスのウォッカ

立証された唯一の事件「日立市ウォッカ事件」は、家族が三上に父の殺害を依頼し、被害者は拷問で殺害されたという衝撃的な事件だった。

唯一刑事事件化した「日立市ウォッカ事件」

小屋の鍵

上申書殺人事件を誰よりも早く知った新潮社の記者宮本太一は、後藤の手記を読み、面会を重ね取材するが、「石岡市焼却事件」、「北茨城市生き埋め事件」については証拠不十分の為立証できなかった。そして唯一告訴できたのが「日立市ウォッカ事件」であった。
 

日立市でインテリアショップを営んでいた家族は、経営が悪化し6000万円の負債を抱えていた。一家の父は生命保険に加入していたが、保険料の支払いすら困難な状況だであった為、娘の夫が知り合いの不動産会社に相談し、そこで紹介されたのが先生こと三上静男だった。

家族も共謀した凶悪な保険金殺人事件

寄り添い歩く姉妹

被害者の家族である、妻・娘・娘婿からの依頼で保険金殺人が企てられた。借金の相談という名目で父親は毎日自宅で大量の飲酒を強要され、呼吸不全で死亡した。その後、自宅で死亡した父親の遺体を山中に運び自殺に見せかけて遺棄した。

そして、妻・娘・娘婿の3人の遺族には1億円にものぼる保険金が支払われた。この父親の殺害計画は家族も同意の上で行われ、生活の為家族が父親を犠牲にしたものだった。宮本太一が取材した記事を提供すると、警察も捜査に乗り出し、上申書殺人事件として告発された3件のうち唯一立件可能な事件となった。

上申書殺人事件の関連人物

探偵と拡大鏡

上申書殺人事件に関連する主な人物は、上申書を提出した張本人である後藤良次、上申書によって告発された三上静男、後藤良次の取材を行っていた記者宮本太一である。この3人の人物像や関係性を順番に紹介していく。

元死刑囚の後藤良次

穴から指す光を見つめる少年

後藤良次の生い立ちを辿ると、これでもかという程の数え切れない犯罪歴が溢れている。14歳の少年時代より数々の犯罪に手を染め、窃盗及び暴力行為により度々少年院に収監された。16歳で暴力団組員となり、器物損壊、窃盗で再び少年院に収監。

その後も公務執行妨害・恐喝・殺人・銃刀法違反・覚せい剤取締法違反といった犯罪を繰り返していた。その生い立ちは凶悪犯そのものであった。

後藤が40歳の時、「先生」こと三上静男と出会う。三上静男の首謀する犯罪に加担し、殺人の容疑で逮捕・起訴され、44歳で死刑が確定する。47歳の時雑誌「新潮45」の記者に三上静男を告発する内容の取材を依頼し、これが後の上申書殺人事件である。

不動産ブローカーの三上静男(先生)

不動産契約の握手

上申書殺人事件の主犯格とされる男。後藤良次が死刑確定後に、自身が関わった殺人事件の主犯として三上静男を告発した。後藤良次が告発した3件の殺人事件のうち、カーテン販売会社社長殺人事件が起訴され、三上静男は求刑通り一審無期懲役が確定した。

後藤良次の三上静男に対する告発は、殺人及び強盗致死の2件の刑事事件(宇都宮監禁殺人事件)において死刑判決を受けて上告中に行われたものだった。後藤良次は3件の殺人事件で告発したにも関わらず、結果として起訴されたのは1件のみ、さらに無期懲役の判決にも後藤は不満を抱いたとされている。

新潮45記者の宮本太一

記者のノート

記者の宮本太一は、非常に正義感が強く、最後まで徹底した取材を行った。取材期間は延べ8か月にも及んだ。

後藤良次からの手紙

スケッチブックと鉛筆

後藤良次は上申書殺人事件として三上静男を告発するにあたり、雑誌「新潮45」の記者宮本太一に手紙を出した。後藤からの手紙には、自分は死刑判決を受けた際起訴された2件の殺人事件以外にも3件の殺人事件に関与しており、この3件については未だ警察は把握していないと書いてあった。

更に、3件の事件には共通する首謀者がおり、その凶悪極まりない首謀者は、今も警察に知られることもなく、普通の社会生活を送っているという衝撃的な内容であった。 

後藤良次と対面しての取材

刑務所の鉄格子

後藤良次から届いた手紙の内容についてその真偽を知るべく、宮本太一は後藤に直接会って話を聞いて取材することにした。宮本に手紙を出した当時、後藤は死刑判決を受け上告中だった。

上訴中の今、また新たな事件が発覚するのは、後藤にとってリスクが大きいにも関わらずなぜ告発するのか、宮本は後藤に尋ねた。後藤の返答は、実行犯である自分だけが死刑になるのに対し、首謀者が今も以前と変わらない普通の生活を送っている事が許せないからであると答えた。きっかけは気にかけていた舎弟が自殺に追い込まれたことだという。

三上静男はなぜこのような重大事件において後藤に口止めをしなかったのかという問いに対しては、自分が上告したからだと答えた。

3つの事件の告発は上告に不利になるのは明らかであり、生きる事への執着を捨てきれない後藤は自分を告発することはないと、三上は考えるであろうと思ったと答えた。後藤は自分の命を懸けてでも三上静男を告発する決意をしていたのだ。

記者としての使命感

新聞を読む男性の手

死刑囚が自ら、自身の犯した犯罪を新たに語るのは前代未聞であり、雑誌記者としては大スクープだった。雑誌記者という立場から見れば、願ってもないチャンスだ。しかし、宮本はこの上申書殺人事件をすぐに記事にすることはなかった。

事件が極めて凶悪であったことから、すぐには報道せず、念入りな取材を繰り返し、告発文の裏を取る為に執念を燃やした。取材期間は実に8か月にも及ぶ。最終的には警察とも連動し事件の真相究明に全力を尽くしたのだ。

数え切れない程の犯罪と殺人を犯した元暴力団組長と金の為なら手段をいとわない殺人鬼という、いわば究極の凶悪と凶悪の狭間に置かれながら、ジャーナリズムを貫き通した正義感と精神力の持ち主といえる。

後藤良次の現在

刑務所の鉄網

凶悪な犯罪を繰り返し、死刑確定後に上申書を提出するという前代未聞の行動に出た後藤良次。そのような犯罪者の生い立ちや経歴、今現在の状態などを紹介していく。

後藤良次の経歴と生い立ち

銀色の手錠

後藤良次の生い立ちは昭和33年、栃木県宇都宮市簗瀬町にて、三人兄弟の次男として生まれたところから始まる。その生い立ちは少年時代から犯してきた数多くの犯罪歴そのものである。

後藤良次は、三上静雄の計画した殺人の実行犯であり、元広域暴力団組長の男であった。人を殺す事や犯罪を犯す事をためらわず、少年時代から数々の犯罪を傘ね、暴力団の組長となった。

暴力団組長だった後藤は別の事件で懲役刑を受け、出所後に以前からの知り合いであった暴力団関係者から三上静雄を紹介された。

当初後藤は不動産について勉強する為、三上と交流を望んだ。三上静雄と後藤良治の関係はどんどんと親密化していった。後藤良治のもつ圧倒的な暴力性と三上静男の持つ犯罪能力が出会い凶悪事件が次々と生まれていくこととなった。後藤は今現在、東京拘置所に収監されている。

後藤良次の家族は?

海辺で子供を抱き上げる母親

死刑囚、後藤良次には、当時内縁の妻がいた。取材の中で意外にも家族思いな素顔が明らかになった。

内縁の妻の存在

うずくまる女性のシルエット

後藤には内縁の妻と呼べる女性が存在したが、今はその女性とは縁を切っている。上申書殺人事件についてかかれたノンフィクション小説『凶悪-ある死刑囚の告発‐』のなかで、この内縁の妻とされる女性は、後藤が殺人に関与していることを知っていたと取れる発言を繰り返す。後藤や内縁の妻にとって、殺人は日常に起こる出来事の一部であった。

後藤は告発に際し、内縁の妻を身元引き請け人を解除することで結果的に身元引受人がいない状となったが、「自分のどうしようもない人生に巻き込みたくなかった」とその時の心境を語っている。

家族思いな一面

薔薇の花束

後藤良次には意外にも家族思いな一面があった。上申書を提出するにあたり雑誌記者に告発の内容を取材させていたことから、この事件が世間を騒がせることになると予想し、長年連れ添った内縁の妻と、その母親の身元引受人指定を解除している。拘置所への面会も断り、取材記者が自宅を訪ねる事を避ける為完全に縁を切った。

死刑囚となった後藤に、親身に面会に訪れ差し入れをする内縁の妻に「他の女から差し入れが有るからいい」と嘘をついて、突き放した。今は暴力団時代の舎弟が面会や差し入れを行っているという。

三上静男の現在

棒を持ち立ちすくむ男

死の錬金術師と表現される事もある程の凶悪犯、三上静男はどのような環境で生み出されていったのか、その生い立ちや、今現在に至るまでの経緯を紹介していく。

三上静男の経歴と生い立ち

恐怖の館

「先生」こと三上静雄は、今現在65歳前後、上申書殺人事件が社会の目に晒された時は、55歳であった。不動産ブローカーを生業としていたが、とにかく三上の周りでは人が死んでいくという奇妙な現象が起こっていた。しかも亡くなる人はいずれも不審の死を遂げていくのである。

死ぬのは決まって莫大な財産を有する資産家や、多額の生命保険が掛けられている人物だった。夫や妻、親や兄弟、娘や息子、近しい親戚などが全くいない孤独な老人が狙われた。時に、その家族とも共謀し徹底的な証拠隠滅を図る。その手口は冷酷非道、用意周到であり、人の死をもって莫大な財産を手にする「死の錬金術師」との異名を持つ。今現在も無期懲役服役中である。

三上静男の性格

ネクタイを締める男性

三上静男は茨城県で無免許で不動産取引を行ういわゆる不動産ブローカーだった。上申書殺人事件の約10年程前、後藤良次は暴力事件により基礎され4年の懲役判決を受け、服役し出所したばかりの頃だった。仕事も自宅も無かった後藤が、生活を再建する為紹介されたのが不動産ブローカーという職業であり、仕事を通じて出会ったのが三上静男であっった。

後藤の告発を受け記者が三上について取材をすると、当初は三上に対する周囲の評価は後藤の証言とはかけはなれたものだった。三上は、時に顧客の個人的な相談に乗ったり、失業者対して格安の賃貸物件を紹介するなど、周囲からは人格者として認知されたいた。
 

後藤による情報と世間の評価は当初大きく食い違っていたが、上申書殺人事件として告発された3つの殺人事件及び遺体遺棄事件について調査を進める中で、後藤の告発こそが真実であると今は立証されている。

逮捕前の三上静男の様子

猫の取材

三上静男は逮捕される前日、自宅にて取材に答えている。後藤が提出した上申書については、自分は全然関係ない、全くの事実無根だとしている。上申書は読んだかという問いに対し、上申書は1年前に読んだ。

自宅にマスコミがきたり自宅の電話がしょっちゅう鳴るので体調が悪く、家族もノイローゼぎみである。裁判になっても、逃げも隠れもしないと答えていた。

後藤良次と三上静男の異常な心理

脳の仕組み

後藤良次と三上静男は共に、凶悪極まりない犯罪者であることは間違いない。しかし、この二人の犯罪を犯す上での特徴や心理には異なる。ここでは二人の違いを比較し、上申書殺人事件が起こった経緯を紹介する。

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後藤良次の犯罪の特徴・心理

脳に絡まる鎖

後藤良次の行動には犯罪者の多くに見られる「反社会性障害」の特徴が多く見られる。後藤は善悪の判断に欠ける生粋の犯罪者といえるが、その一方でサイコパスに見られる特性は持ち合わせていない。

後藤がサイコパスでないと判断する要素として、女性や子供は殺さない(サイコパスは殺す人間に見境はない)・他人に感謝する心がある(告発に協力した人物に感謝の気持ちを述べている)・家族を大切にする(告発にあたり内縁の妻や母に迷惑がかからないよう縁を切った)などが挙げられる。

三上静男の犯罪の特徴・心理

ピースの外れた脳

反社会性人格障害の後藤良次に対し、三上静男は典型的なサイコパスの特徴を呈している。まず、後藤の証言にもあるように、三上は病的な虚言癖があった。嘘をつくことに何ら抵抗がなく、良心の呵責がないのはサイコパスの典型といえる。

次に、動物の虐待である。後藤の証言から、三上の生い立ちの中で、飼っていたハトやニワトリの首を絞め殺す事を愉しんでいたことが分かる。サイコパスの典型的行為だ。

後藤が告発した上申書殺人事件の中で唯一起訴されたカーテン屋店主殺人事件では、被害者を鳥小屋に監禁し、無理矢理酒を飲ませていた。虐待や拷問に快楽を覚えるサイコパス特有の心理が垣間見える。

数々の罪のない人を金の為だけに殺したにも関わらず、ためらいもなく無罪を主張し続ける行為にも、罪悪感がないというサイコパスの特徴がはっきりと表れていると言える。

異なる心理をもつ犯罪者同士の出会い

互いへの理解

犯罪に彩られた生い立ちと経歴を持つ後藤と三上。凶暴で行動力のある後藤良次と、金のある場所を嗅ぎ付けそれを確実に手に入れる方法を考えることができる天性の犯罪者三上静男。三上が頭脳となり、それを後藤が実行する。二人が出会いこの縮図が完成することで、上申書殺人事件をはじめとする凶悪な殺人事件が次々と計画され、実行に移されていった。

三上の考える殺人計画は完全犯罪に近く、後藤の告発が無ければ世に出ることなく、三上は現在も普通の生活を続け、凶悪な殺人を繰り返していた可能性もある。

上申書殺人事件の判決は?

裁判の天秤

平成21年、上申書殺人事件はカーテン販売会社社長殺人事件についての刑事裁判を迎えた。後藤良次及び三上静男、殺人を依頼した被害者の妻・娘・娘婿それぞれの判決と裁判の時の様子を紹介する。

後藤良次は懲役20年

刑務所の檻

後藤良次被告はカーテン販売会社社長殺人容疑で起訴され、水戸地裁で懲役20年(求刑無期懲役)判決、東京高裁で被告側控訴棄却、被告側上告棄却にて判決が確定した。

三上静男は無期懲役

足枷をつけられた人形

三上静男の判決はどうなったのでしょうか。

三上静男の判決

三上静男被告はカーテン販売会社社長殺人容疑でされ水戸地裁で求刑通り一審無期懲役判決、東京高裁で被告側控訴棄却、被告側上告棄却にて判決が確定した。現在も無期懲役刑を受けている。
 

三上静男の裁判時の様子

上申書殺人事件初公判では三上の場違いな発言が異様に目立った。

殺人という重大な罪に問われている立場であるにも関わらず、「かわいそうな人は見てられません」「困った人間をかわいそうと思う」と、時に涙を流しながら大声で訴えた。いきなり「暴力団は好きじゃないんです」と大声で叫ぶなど、脈絡のない不適切な発言を繰り返し、異常な心理状態であることは、誰の目にも明らかであった。

インテリアショップ経営家族の判決

家族の手

上申書殺人事件のうちの1件、カーテン店主殺害容疑で逮捕されたのは、三上静男、実行グループである4名(後藤良次、小野寺宣之、沢村勝利、浦田大)、殺害を依頼した被害者の家族(妻、娘、娘婿)の計8名であった。

水戸地裁での初公判では、妻と娘に懲役13年(求刑懲役16年)、娘の夫であり被害者の娘婿にあたる人物には懲役15年(求刑懲役18年)が言い渡された。殺人と詐欺罪に問われ、水戸地裁で有罪判決を受けた3名は控訴を取り下げ3名全員が懲役13年で判決が確定した。3人現在も服役中である。

判決に不満を示す後藤良次?

頭を抱える男性

上申書殺人事件で、後藤良次は三上静男の無期懲役という判決に不満を抱いていた。同じ殺人という罪を犯しながら自分は死刑、三上は無期懲役という点に納得がいかなかった。

後藤は記者とのやり取りの中で、被害者の家族が懲役13年と自分より計が軽かった事に対しても不服であると答えている。

自分は言われるまま実行したまでであり報酬も受け取っていない(この時別の事件で逮捕されており、三上によって支払われるはずの報酬は支払われなかった)。にも関わらず、殺害を依頼した人物や計画した人物の方が刑が軽いのは納得できないと語っている。

上申書殺人事件を映画化した「凶悪」

アナログ映画の構造

死刑囚が余罪と首謀者を告発した前代未聞の上申書殺人事件は、書籍化するとたちまち話題となりベストセラーとなり、その後更に、書籍を原作として「凶悪」というタイトルで映画化された。

原作はノンフィクション小説『凶悪 -ある死刑囚の告発-』

眼鏡と本と鉛筆

上申書殺人事件を題材としたノンフィクション小説「凶悪-ある死刑囚の告発‐」という書籍が新潮社から出版されている。のちにこの小説を原作とした映画が公開された。

この本は後藤良次の上申書提出をきっかけに新潮45の宮本太一をはじめとする編集部が後藤への取材、告発文の裏付けを行い、警察への告発、雑誌記事の掲載までのプロセスを記した内容となっている。書籍は現在も出版され、映画はDVD化されている。

死刑囚の新たな罪の告白という常軌を逸した行動に端を発した上申書殺人事件。後藤の告発により明るみに出た、更なる殺人事件・殺人鬼の存在、金のために拷問や殺人を繰り返す残忍な手口などが詳細にわたり記されている。

後藤や三上の生い立ちやその家族、2人を取り巻く人間関係についても触れている。当時警察すら感知していなかった重大事件を追ったこの衝撃の記録の映画は世間に大きな衝撃を与えた。

三上静男(リリー・フランキー)

スーツを着て笑う骸骨

映画「凶悪」に出演した俳優陣の中で、ひときわ存在感を放っていたのが三上静男を演じたリリーフランキーである。

この映画に関して現在も特に高く評価される事が多いのがリリーフランキー演じる三上の猟奇的な姿だ。まるでリリーフランキーに殺人鬼の人格が憑依しているかのように、とにかく楽しそうに人殺しに興じる嬉々とした笑顔に戦慄が走る。

映画の中では少年のような無邪気さで次々と人を殺し、殺人で手にした金で札束の山を作る、猟奇的な異常者として描かれている。残虐、非道な殺人場面が多く登場し、上申書殺人事件とそれに関わった人物の異常さを、リリーフランキーが際立たせている。

後藤良次(ピエール瀧)

放置された拳銃

この映画の中でピエール瀧演じる後藤良次は、面倒見が良く、頼まれると断れない男だ。殺人や死体の始末ですら、頼まれたら嫌と言えない。見方によっては実直・誠実な男で、自分を裏切る者は決して許さない一面を持つ。

人を殺す事に何らためらいがなく、どんなに残忍な方法であろうと躊躇しない。映画の中でも、思わず目を逸らしたくなるような後藤の残忍な殺人シーンが多く登場する。三上の為、金の為ならどんな手段も厭わない狂気を漲らせた演技が光る。

宮本太一(山田孝之)

取材記者とカメラ

映画「凶悪」は山田孝之演じる記者宮本太一の視点で物語が進んでいく。取材中の出来事だけでなく、宮本の家族関係を描いたシーンもあり、あまりにも残虐でフィクションのように思える上申書殺人事件に現実味を持たせている。

グロテスクで暴力的なシーンが多いので苦手な方は注意

黄色いコーンと人形

映画の中では実際の上申書殺人事件に忠実に、殺人の場面や、被害者を拷問する場面がリアルに描かれている。映画館で公開された際は、あまりの過激な内容に見るに堪えず途中で席を立つ人の姿も見られた程だった。グロテスクな描写の多い映画の苦手な方は、視聴する際は注意した方がよさそうだ。

狂気と凶悪が生み出した殺人事件の数々

警察の包囲網

上申書殺人事件は日本に大きな衝撃を与え、後藤や三上の動向は大きな注目を集めた。世間の関心を映すように相次いで書籍化・映画化され、日本の犯罪史に残る重大事件となった。

死刑囚後藤良次の執念

赤い手形

上申書殺人事件は前代未聞の出来事の連続だ。事件について知れば知る程、後藤や三上をはじめ、関連した人物たちの異常性が浮かび上がってくる。

死刑囚である後藤が上告中にも関わらず上申書を提出することによって三上を告発する事は同時に、後藤自身の余罪を自白する事になる。かつて「先生」と呼び慕っていた人物への、命に代えてでも三上を告発するという尋常ではない怒りが感じられる。

上申書殺人事件の狂気

不気味な男の影

上申書殺人事件で際立つのは、人の命を金に換える事になんの疑問や躊躇も感じない、犯人たちの非人道的な行動だ。後藤や三上の狂気は、二人の生い立ちに記される数え切れない犯罪歴からも伺える。

何の罪もない老人を残虐極まりない拷問で死に追いやり、巨額の生命保険を手にする為、妻や娘をはじめとする家族が殺害を依頼することさえあった。その極悪非道な手口は狂気の沙汰であり、計画をした三上静男、実行に移した後藤良次の心理の凶悪性が表れている。

上申書殺人事件から生まれた作品

英語の書物

記者の宮本はこの事件の常軌を逸した凶悪性にいち早く気付き、雑誌でスクープ記事を書くことより事件の真相究明を優先させた。その取材への執念は最終的に警察をも動かし、この凶悪事件が暴かれたのだ。

雑誌に記事が連載された後に出版されたルポタージュは、メディアでは報道されなかった上申書殺人事件の詳細、犯人や関係者の家族、自宅での様子などを知る事ができる書物となっている。

また、書籍を基に上申書殺人事件を映像化した映画「凶悪」は俳優陣の鬼気迫る演技が光る完成度の高い作品であり、今現在も事件を知ることのできる貴重な作品だ。

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