バーターの意味とは?よく聞く業界用語の使い方を解説!
テレビでよく耳にするバーターという言葉。どういう意味で使われているのでしょうか。テレビ業界におけるバーターの意味と、ビジネス業界でのバーターの意味とは違いがあります。漠然と意味がわかっているつもりになっている業界用語。正しい意味と使い方とは。
目次
バーターという業界用語はどんな感じで使うの?
特定の業界でのみ通じる言葉を業界用語といいます。テレビ業界のみならず、いろいろな業界で特殊な業界用語がありますが、テレビ業界の業界用語がとくに注目されるのは、それだけ一般人が耳にする機会が多いからです。
テレビで頻繁に使われる言葉は、いつの間にか社会全体に広がっていきます。日本語としては意味不明な業界用語が、いつのまにか一般人の間でも当たり前のように使われているのがその証です。
バーターという言葉もテレビでよく耳にする業界用語の一つです。会話の流れや番組の雰囲気から、何となく理解しているつもりになっているかもしれませんが、バーターとはどういうことなのか、正確な意味や語源、使い方を知っている人は意外と少ないようです。
からかったりいじったりするシーンで耳にすることが多い、バーターという言葉。ベテラン芸能人が若手の芸能人にからかい気味に話を振ったり、新人芸能人がへりくだって使うこともあります。
バラエティ番組で、「おまえバーターだろう」とか、「バーターで出させてもらいました」というような使い方をしているのをよく目にします。
ビジネスのシーンでも、バーターという言葉は頻繁に使われます。取引の際に、「では、バーターで」と持ちかけられることは珍しいことではありません。
バーター取引は商習慣として世界中に根強く残っており、メリットもあればデメリットもあります。バーターは不公平な取引をうみやすいので、常にウィンウィンの関係を心がける必要があります。
バーターの語源
バラエティ番組を見ていると、バーターという言葉をしょっちゅう耳にします。いまさら説明が必要だとは思わないかもしれませんが、もしかしたら間違った意味でとらえているかもしれません。
もともと業界用語は仲間内だけで通じればいいように考えられています。バーターという言葉は、一般的にもビジネスでも使われる言葉ですから、常識で判断していると思わぬ勘違いをしてしまうかもしれません。
遊び心満載のテレビ業界の業界用語は、わかりにくいものも多いです。バーターの語源から、テレビ業界の業界用語であるバーターの意味と、商取引におけるビジネスの世界でのバーターの意味を探ってみましょう。
テレビ業界でのバーターの語源
英語のbarter(バーター)が語源だと思っている人が多いかもしれませんが、テレビ業界で使われているバーターの語源は、実は英語ではありません。
テレビではよく、芸能人が「ハワイ」を「ワイハ」といったり、「よろしく」を「しくよろ」といったりと、語順を入れ替えたり、逆さまにしたりと、独特の言葉の使い方をしています。
バーターの語源もこうした業界用語の使い方の例に倣っており、もともとはまとめるという意味の「束」をひっくり返したものです。日本語の「束(たば)」を逆さから読んで「ばた」、それが英語っぽく発音されて「バーター」となりました。
しかし、最近では本来の英語のバーターの意味で、バーターという言葉を使うことも増えてきました。番組の宣伝や映画の告知をする代わりにバラエティ番組に出演するというのも立派なバーターです。
注意してテレビを見ていると、明らかに英語のバーターの意味で、バーターという言葉を使っている人もいます。抱き合わせ自体を交換条件と解釈することもできますので、テレビ業界におけるバーターという言葉には二つの語源があると考えるのが妥当です。
ビジネスシーンでのバーターの語源
ビジネスにおいては、英語の「barter(バーター)」がそのものズバリの語源です。英語のバーターには、物々交換だけでなく、サービスや情報、自由といった、形のないものとの交換の意味も含まれます。
ビジネスでのバーター取引とは、金銭決済を必要としない取引を指します。個人や企業間の取引のみならず、国家規模でのバーター取引も成立し、それらはバーター貿易と呼ばれます。
バーターの意味とは《芸能界編》
テレビで耳にするバーターという言葉の意味を、勘違いしていた人も多いのではないでしょうか。テレビ業界の業界用語であるバーターの語源が「束」だとわかると、意味も自ずと明らかにいなります。
テレビ番組の中でのバーター意味とは、抱き合わせ、芸能人のセット売りです。番組でバーターという言葉を耳にしたら、誰と誰がバーター(セット)になっているのか、想像してみるのも面白そうです。
売出し中の若手芸能人を出演させるためのバーター
プロダクション側としては、まだ知名度は低いけれど将来有望な新人や若手をどんどんテレビに出演させて、世間の注目を集めたいところです。
とはいうものの、テレビ番組の制作者側としては、視聴者の関心を引くだけの話題性がなければ新人や若手を起用するのはためらいがあります。
そこで、人気、知名度とも申し分ないハイスペック芸能人とセットでなら出演OKということになります。今後ブレイクしそうな新人や若手を売り出す方法としての意味が、バーターにはあります。
人気芸能人に番組に出演してもらうためのバーター
テレビの番組制作者側が、人気の高い芸能人にぜひ番組に出てもらいたいと考えるのは当たり前です。どこの局も考えることは同じですから、当然人気のある芸能人は奪い合いになります。
そこで、プロダクション側は、あまり仕事がない、売れていない所属の芸能人とセットでなら出演してもいいですよというような条件を出します。この場合のバーターとは、抱き合わせ条件付き取引の意味になります。
有名芸能人の番組に出演させてもらうためのバーター
あまり人気のない芸能人の場合、何とかしてテレビでの露出を増やし、世間での認知度を上げることが成功への第一歩になります。とはいっても自力でテレビ出演を果たすなら、そこそこの人気者でなくてはテレビ局は納得しません。
そこで、引く手あまたの人気芸能人のお供のような形で番組に出演させてもらうバーター出演という方法が編み出されました。この場合は、おまけという意味でバーターという言葉を使うことになります。
交換条件としてのバーター
新しいドラマが始まる直前には、ドラマや映画以外ではあまりお目にかかれない人気のある芸能人が、あちらこちらのクイズ番組やバラエティ番組、情報番組に顔を出します。
ドラマの宣伝をするのが目的ですが、番組としてはせっかく出演してもらえるのなら、なるべく視聴者の注目を集めるようにといろいろな企画をします。
あまり得意そうではないスポーツにチャレンジしたり、口下手なのに一生懸命会話を盛り上げようとするのは番組出演がドラマの宣伝のバーターだからといえるでしょう。これは、本来のバーターの意味に則った交換条件付きのバーターです。
バーターの意味とは《ビジネス編》
テレビ業界ではバーターとはセット販売ですが、ビジネスでは金銭が介入しない取引という意味です。
「これ、バーターで」といわれたとき、テレビ業界でいうところのバーターと、ビジネスの取引でのバーターとは全く意味が違うということを念頭に置いておかないと、大失敗をしてしまう可能性もあります。
バーター取引とは物々交換を基本とした取引のこと
バーター取引の基本的な形は、物々交換です。金銭の授受が発生しないので、お互いが必要な物を持っている場合は簡潔で有効な商取引の手法です。
とはいえ、取引相手との間に立場や規模の格差があると、不利な取引を強いられることもあります。バター取引を持ちかける際は足元を見られないように、同等の対価のものとの交換を心がけなくてはなりません。
ただし、そのときは不利になっても、後々利益を生む可能性がある取引なら、目をつぶって交渉に応じる場合もあります。
バーター取引は交換条件付きの取引
金銭決済が行われない商取引がバーター取引なので、必ずしも物々交換でなくてはならないというわけではありません。見返りに金銭以外の何かを要求することは全てバーター取引にあたります。
交換条件が妥当なものであり、当事者同士が納得の上であれば取引は成立しますが、中にはどう見てもアンバランスな取引もあり、金銭という公正な価値基準を用いないバーター取引は、当事者間の信頼関係によるところが大きいといえます。
バーターの使い方《芸能界編》
業界用語として一般にも認知度が高いバーターという言葉。番組の中では笑いのいのネタのように使われることが多いですが、バーターされた芸能人は必ずしも同時に番組に出演するとは限りませんから、視聴者がしらないだけで、テレビの裏側でも頻繁に使われています。
バーターという言葉は、当然のことながら、使う人やシチュエーションによって、微妙に感じ方も変わります。芸能界でよくある使い方をご紹介します。
新人を売り出したいプロダクションと番組制作者
ブレイクしそうな新人は、ばんばんテレビに出演させて知名度アップを計りたいところです。そこで、プロダクションは、「今度うちで力を入れたいB(新人)ですが、番組に出演させてもらえませんか。A(人気芸能人)とバーターではどうでしょう」と売り込みをかけます。
番組制作者側としては新人の出演には気乗りしなくても、人気芸能人が出演してくれるなら、と「じゃあ、バーターということで」と了承することになります。
この場合は、新人もいずれ人気芸能人に成長することが期待できるので、バーターを受け入れるメリットは番組制作者側にも十分にあります。Bを青田買いできるお得感のあるバーター取引です。
人気芸能人に番組に出演してほしい番組制作者とプロダクション
番組制作者側が、どうしても特定の芸能人に番組に出演してもらいたい場合は、パワーバランスはプロダクション側に傾きます。
番組制作者側が「Aさんに出演してもらいたい」とお願いすると、プロダクションは「Aは忙しくて」とかなんとかかんとか理由をつけて出演を渋ります。
「そこをなんとか」と番組側が下手に出たところで、プロダクションは、「C(売れていない芸能人)とバーターでよければ考えますよ」と少々無茶な条件を突きつけます。
番組側がどうしてもAの出演を諦められないなら、「バーターでけっこうです」と条件を飲まざるを得ません。優良物件に瑕疵物件を押し付けるタイプのバーターで、プロダクション側がやや有利な取引といえます。
とはいえ、売れていない芸能人が突如として大ブレイクする可能性もあるので、番組側に全くメリットがないわけではありません。
テレビ番組に出演したい芸能人の場合
自分一人の力ではテレビ番組に出演することができない芸能人がテレビに出演するためには、人気のある芸能人にくっついて番組に出演するのが一番簡単な方法です。
芸能人はプロダクションに対して、「バーターでいいのでテレビに出演させてください」と申し入れておきます。出演した際には、周りの芸能人から「バーターだよね」といじられることもあります。
ともすれば悲壮感が漂うパターンのバーターですが、最近ではバーターであることをネタにして話題を集める芸能人もいるように、成功するためには、どんなことでもチャンスに変える情熱が必要です。
バーターの使い方《ビジネス編》
貨幣制度が確立する以前は、物々交換が取引の基本でした。今でもその慣習は世界中に残っています。ビジネスパーソンなら、いつどこで遭遇しても不思議はないバーター取引。具体的にシュミレーションして不利益を被らないように、心構えをしておきましょう。
取引先との販売交渉で
信頼関係が築けている取引先が相手で、バーター取引の実績があるなら、そんなに構えなくても大丈夫です。「わが社のこの商品を買ってください」「わかりました。その代わりにバーターということで弊社のこの商品を買ってください」という流れで商談は成立します。
もしくは、「この商品を貴社の商品とバーターでお願いしたいのですが」と持ちかける場合もあるかもしれません。
お互いが必要としているものが、不公平感なく交換できるなら全く問題はありません。継続的に良好な取引ができる相手なら、「今回はこれでいいですが、次回はお願いします」と、不公平を回収することもできます。
新規の売り込みに際して
金銭決済が絡まないバーター取引は、新規の受注に有効に働く場合があります。新規開拓で売り込みをかけると、「貴社とは取引の実績がないから初回はうちの商品とバーターでどうでしょう」とやんわり打診される場合があります。
相手企業が優良で、自社に必要な商品やサービスが充実していれば、バーター取引も有効な取引手段の一つです。とはいえ、即断即決は禁物です。バーター取引は信頼関係が築けていることが前提です。新規の場合はより慎重に決断する必要があります。
強い立場の取引先からの要求
一番厄介なのが、明らかに立場が上の取引先からのバーター取引の提案です。多くの場合、バーター取引を持ちかけたほうが圧倒的に有利です。「貴社の商品が欲しいので、弊社のこれとバーターにして欲しい」と自社製品を決め打ちで提示してきます。
必要でもない商品を押し付けられたり、対価として納得できない商品を持ってきたり、不公平感を生みやすいのがこのタイプのバーター取引です。
バーターを一般人が使うには?
テレビでよく聞く言葉は使ってみたくなるものですが、業界人ぶって使おうとすると恥をかくこともあります。ビジネスパーソンなら商取引とは違った使い方には違和感があるかもしれません。一般人がバーターを格好よく使いこなすコツとは?
一般人が上手に使うためのポイント
業界用語としてだけでなく、一般社会にも深く浸透しているバーターという言葉ですが、テレビで使われるバーターの意味と、ビジネスで使われるバーターの意味とは違いがあります。
さらに、テレビの世界では、ひとまとめという意味の束を語源とするバーターと、交換条件付き取引という意味の英語を語源とするバーターとが混在しています。
英語を学んだ人の多くは、バーターという言葉を聞くと、物々交換という意味を真っ先に思い浮かべるでしょう。おそらくテレビでバーターという言葉を耳にした人は、英語のバーターの意味だと感じるはずです。
テレビであまり有名ではない芸能人が、「バーター出演」といっているのを聞いて、抱き合わせだという意味だとわかる人は少ないかもしれません。漠然と、なにかの交換条件で出演しているのだなと理解するでしょう。
実力があっての出演ではないという点を面白おかしく演出するという意味では、抱き合わせでも、交換条件でも大した違いはありません。そのせいで、バーターという言葉に、なんとなくあやふやな感じを抱きながらも、納得して笑ってしまえるのでしょう。
一般人がバーターという言葉を使う場合は、条件付き取引という意味を念頭において使う方がスマートです。よほど芸能界に精通した相手との会話でない限り、バーターの語源が束だというところから説明しないと意味が通じません。
業界人ぶってセット売りの意味で使うと、間違って解釈される可能性が大きいです。
一般人が使うバーターのセリフ例
物々交換や条件付きの取引なら日常茶飯事です。友人同士で、恋人と、家族の間やバイト先、職場でバーターという言葉を使うなら、条件付き取引の意味で使うと違和感がありません。
取引を持ちかける相手によって、高圧的な態度に出たり、下手に出たりと、いろいろな使い方ができます。
友人同士の会話でのバーターの使い方
仲のいい友人同士だと物の貸し借りや頼みごとをする機会は多いです。交換条件で取引を持ちかけることもあります。「宿題写させて」「パフェでバーターね」などという使い方がサラッと出来たら格好いいです。
一方的に頼みごとをされると躊躇してしまいますが、バーターなら気持ちよく引き受けることができます。
恋人との会話でのバーターの使い方
恋人の浮気が発覚したときなどは、こちらに有利な条件でバーター取引を持ちかけることができます。物々交換ではなく、感情と物品の交換です。「許すけど指輪でバーターね」とか、「バーターの条件を飲むんだったら許す」という使い方ができます。
バイト先や職場でのバーターの使い方
仕事を代わってもらったり、急に休みを取ったりして迷惑をかけたときは、「代わりにこれはやっておきます」とバーター取引を持ちかけると、後々の人間関係がうまくいきます。
ただ、「急に頼んで悪いんだけど、この仕事とあの仕事バーターでお願い」というような使い方をした場合、もし相手がテレビ業界で主流の使い方を意識していたら、感情を害することは間違いないでしょう。
一般の人がバーターという言葉を使うときは、相手がバーターの意味をどのように理解しているか、確認してから使うようにしたほうがいいかもしれません。
バーター以外の業界用語もチェック
業界用語は変わった言葉が多く、ちょっと考えただけでは意味がわからないものもありますが、聞いているだけでも楽しいです。
バーター以外にも業界用語はたくさんあり、テレビ業界の業界用語は、テレビで耳にすることも多いです。他にはどんな業界用語があるのでしょうか。いろいろな業界の業界用語をチェックしてみましょう。
日常生活で活用できる言葉もあるかもしれません。人より早く業界用語を使いこなせたら、人気者になれるかもしれません。
芸能界の業界用語
芸能界の業界用語は、独特で使い方も特徴的です。有名なのは銀座をザギンといったり、寿司を「シースー」といったりと、言葉を入れ替えたり、二音の単語は反対から発音することです。テレビでよく耳にする業界用語は、使い方や意味を調べてみると面白いです。
芸能用語①ツェーマン
新しい戦隊もののヒーローの名前?何か特殊な能力を持った人?業界用語のツェーマンは、初めて聞いた人にはさっぱり意味がわかりません。
マンは英語のman(人)のことではなく、一、十、百、千、万のマン、日本語です。問題はツェーですが、日本語で思い当たる言葉はありません。勘がいい人ならドイツ語だとピンとくるかもしれません。ツェーはドイツ語でアルファベットのCのことです。
ドレミの音階表記をアルファベットになおすと、CDEFGAHとなり、C(ツェー)が一番初めになります。つまりツェーは1をあらわし、ツェーマンとは、1万円という意味です。
同じようにしてアルファベットをドイツ語読みし、音階に当てはめていけば、アーマン(A)は6万円、ハーマン(H)は7万円という意味になります。
ゲーセンという言葉を聞くと、ほとんどの人はゲームセンターを思い浮かべるでしょうが、アルファベット音階の五番目のゲー(G)と千で、5千円を意味します。
芸能用語②マイウー
グルメ番組を見ていると必ずといっていいほど聞こえてくる言葉の一つが、「うまい」という意味のマイウーです。ぽっちゃり系のタレントが、食レポで連呼して有名になりました。
単語の語順を入れ替えるテレビ業界ではお馴染みの方法で作られた業界用語なので、意味も簡単にわかります。
小さな子どもや年配者が使っているのを聞いたことがある人も多いかもしれません。ここまで浸透すると、日常生活で一般人が使ってもほとんど違和感がありません。もはや業界用語というより若者言葉、流行り言葉といってもいいかもしれません。
芸能用語③てっぺん
初めて聞く人には意味がわかりにくい業界用語です。「昨日の収録がてっぺん超えちゃって」とか、「てっぺんまでに終了します」という使い方をします。
てっぺんとは真夜中の12時を意味します。12時になると時計の針がてっぺんに来ることが由来ですが、昼の12時はなぜかてっぺんとはいいません。
芸能用語④トラ
もし、テレビ業界で働くことになって、「トラ集めて」といわれたらどうしますか?動物園に問い合わせたり、動物プロダクションに掛け合ったりする必要はありません。
トラとはエキストラという意味で、ドラマやCMなどで名前のない役を務めるその他大勢のことです。「売れていないときはトラばっかりやっていました」という芸能人の告白を聞くことも多いです。
人気のある芸能人が出演する映画やドラマのトラが募集されると、あっという間にものすごい数の希望者が殺到します。
また、予算が少なかったり、エキストラを集めている時間がなかったりした場合は、スタッフや番組関係者がエキストラを務めることがありますが、その場合のエキストラのことは、内トラといいます。
芸能用語⑤あごあしまくら
あごとは食事代のこと、あしは交通費、まくらは宿泊費を意味します。ばらばらで使うこともありますが、地方ロケの際などは、「あごあしまくら」とまとめて使うこともあります。
一般社会でも交通費のことを足代といったりするので、足の意味はピンと来る人も多いかもしれません。普通名詞が独特の意味を持つタイプの業界用語は、知らない人にはまったく意味がわかりません。
ビジネス界の業界用語
テレビ業界だけでなく、いろいろな業界ごとに業界用語が存在します。聞いただけで由来や意味がわかるものもあれば、部外者にはちんぷんかんぷんで全く意味がわからないものもあります。
業界用語がわかれば、専門家っぽくて格好いいですし、内緒のつもりで話している内容が理解できて面白いです。ビジネスの世界でも証券業界の業界用語の意味は、経済番組や経済新聞などで目にする機会も多いので、知っておいて損はないです。
ビジネス用語①行って来い
証券業界で「行って来い」といえば、株価が上がったり下がったりした後、もとの水準に戻ることを意味します。「行って来いで助かった」とか、「行って来いだから慌てるな」といった使い方をします。
「行って来いだな」といわれて、どこに行くの?お使い?とうろたえてはいけません。
ビジネス用語②寄りと引け
寄りとは場の始まりを意味し、引けとは場が閉じることを意味します。場とは株式や債券の取引を成立させる市場のことです。株式市場は午前と午後の二回開き、それぞれ前場、後場といい、午前と午後、市場が開くときを寄り付きといいます。
市場が閉じるときは場が引けるといいますが、午前の市場が閉じることを前引け、午後の市場が閉じることを大引けといいます。
経済ニュースでは、「寄り付きから一貫して」とか、「後場の引けにかけて」という使い方をしているのをよく耳にします。
ビジネス用語③のれん
のれんといえば、店頭にかかげるお店のシンボルですが、ビジネス用語では企業の持つブランド力やノウハウ、従業員の経験値など、金銭ではあらわせない価値のことを意味します。
企業買収のシーンなどでよく出てくる言葉です。のれんは長い時間をかけて蓄積された企業の財産ですから、新興企業が手に入れるのは並大抵ではありません。業績が振るわない老舗企業を買収することで、時間をかけずにのれんを手に入れることができます。
「本体よりのれんが欲しい」、「のれんには価値がある」といった使い方をします。証券業界だけでなく、広くビジネスの世界で使われる言葉です。
ビジネス用語④出会い
出会いといっても色っぽい話ではありません。証券業界で「出会い」といえば、人ではなく株のことです。売りと買い、値段の折り合いがつき相場が成立することを指します。売買の注文が集まり、取引が成立すると、「出会う」、「出会いがつく」といいます。
「出会い難」といえば、売りと買いの注文の株価が大きく乖離していたり、株数が合わなかったりして取引が成立しないことを意味します。人間関係に置き換えてみても、条件が合わない、職場に異性が少ないなど、同じような出会い難は身近に感じられます。
テレビの業界用語の由来
いろいろな業界用語がありますが、テレビ業界の業界用語は特徴的です。テレビ業界では、第二次世界大戦後、アメリカの進駐軍の基地に出入りしていたジャズバンドのメンバーが仲間内で使っていた、ズージャ語と呼ばれる言葉が引き継がれています。
1万円を意味するツェーマンも、ズージャ語です。お金の隠語にドイツ語のアルファベットが使われているのは、ジャズバンドのメンバーがギャラをあらわすために使っていたズージャ語の名残りです。
音楽家にとってアルファベット音階は、「あいうえお」と同じくらい身近ですから、ギャラのことを話すときに、他の人に意味がわからないように、アーマン、ハーマン、ゲーセンなどと、ドイツ語を交えた隠語を編み出しました。
飯を「シーメ」といったり、ギターを「ターギ」といったりする、倒語と呼ばれる言葉をひっくり返す方法も、音楽のジャズ業界で使われていた隠語が広まったものです。
もともとは他人に意味を悟られないようにと考え出された隠語ですが、テレビ業界では、仲間意識を高めるためや、遊び心のような意味合いも持っています。
業界用語の使い方の注意点
「マイウー」ぐらい耳慣れていると、日常生活で使っても違和感はありませんが、ほとんど意味を知られていないようなテレビの業界用語を、一般人が使うのは難しいです。
とくに、ツェーマンのような、なんのことだか意味を推測するのも難しい業界用語を使うのは、嫌味な感じがしないでもありません。ズージャ語は、テレビ業界ではほとんどギャグのように使われているので、一般人が真似をしても面白くありません。
有名で意味がはっきりしている業界用語は、普通の会話で使ってもやぶさかではありませんが、ちょっと耳にしただけの聞きかじりの知識で業界用語を使うのはやめましょう。
将来その業界に身をおこうと考えているなら、会話に取り入れてみてもいいかもしれませんが、よく意味を知りもしないで、得意げに業界用語を連発すると、その業界に詳しいのかと誤解されて、思わぬ恥をかきかねません。
業界用語は、自分が使うより、意味を知ることのほうが面白いです。飲食業界では、「兄」は古いもの、「弟」は新しいものを意味します。店員が「兄から出して」といっていたら、古いものが出てくるという意味です。
タクシーに乗ったとき、運転無線から「大事な忘れ物があります」と聞こえてきたら、タクシー強盗や大きな事件に巻き込まれたという意味です。知って楽しい業界用語、調べる価値はありますよ。