マネーの虎の高級ハンドメイド家具屋のその後！家具職人の今現在も紹介

「マネー成立です」「ノーマネーでフィニッシュです」といった、司会者の決め台詞が強烈なインパクトを与えた『マネーの虎』。たくさんの、夢を持った志願者が番組には登場しました。

考えの甘さやいい加減な態度が、審査員たる個人投資家たちの逆鱗に触れ、厳しい言葉をぶつけられたり、叱責されたりする志願者も多かった中で、出資を勝ち取り、事業を成功させた志願者も多くいます。

中でも、最も成功した例の一人として今も語り草になっているのが、木製品製造販売会社を起こした家具職人、菊野慶吾さんです。菊野慶吾さんとあのときの家具屋さんは、現在どうなっているのでしょうか。

『マネーの虎』、正式名称『¥マネーの虎』（マネーのとら）は、俳優の吉田栄作さんが司会を務め、2001年10月から2004年3月まで、日本テレビで放送された番組です。初めは関東ローカルの深夜番組でしたが、ゴールデンタイムに昇格、パロディが流行るほど評判を呼びました。

番組内容は、起業を希望する一般人が、「虎」と呼ばれる投資家たちに自身の事業計画をプレゼンテーションし、出資を募るというもので、斬新な企画が人気を博し、イギリスの『Dragon's Den』やアメリカの『Shark Tank』など、『マネーの虎』を元にした番組が世界各国で制作されました。

『マネーの虎』には、さまざまな志願者が登場し、胸に抱いた夢や理想を実現したいと、審査員たる投資家たちを相手に熱いプレゼンテーションを繰り広げましたが、みんながみんな資金を得られるとは限りませんでした。

しかし、成功者である「虎」たちの厳しい審査で、事業計画の不備や先見性のなさを指摘され、「ノーマネー」となる志願者もいる一方で、何人もの「虎」が出資を申し出るダイヤの原石のような志願者もいました。

そんな志願者の一人が、2001年に登場し、番組開始直後に出資を名乗り出る「虎」があらわれ、その人柄と熱意から、いつもの番組の雰囲気をがらりと変えてしまい、『マネーの虎』の神回として語り継がれている、家具職人の菊野慶吾さんです。

『マネーの虎』に志願者として出演した菊野慶吾さんは、当時26歳。おとなしくて気が弱そうな家具職人の青年でした。野心をむき出しにして、ギラギラとした目をした志願者が多い『マネーの虎』において、緊張で上手く口が回らない菊野慶吾さんの姿は新鮮でした。

言葉に詰まりながら一生懸命プレゼントする菊野慶吾さんからは、人柄の良さと真剣な思いがひしひしと伝わりました。それは普段は辛辣で批判的な「虎」たちの心を動かし、怒号が飛び交うことも多い『マネーの虎』では考えられないほど、番組全体が温かい雰囲気に包まれました。

菊野慶吾さんは、家族で細々と家具屋を営んでいましたが、「手作りの家具を安価で販売する家具屋をやりたい」という希望を抱いて『マネーの虎』に出演しました。しかもその家具屋は、実際に椅子やテーブルを使ってもらえるように、カフェスタイルにしたいと考えていました。

菊野慶吾さんの家具に対する思いは深く、一つ一つ丁寧に手作りされた家具は、健康に配慮して化学塗料を使わないなど、菊野慶吾さんのこだわりが随所にあらわれており、『マネーの虎』の番組内で紹介された椅子は「虎」たちのハートをガッチリと掴みました。

菊野慶吾さんの希望出資額は500万円でしたが、3人の「虎」が、菊野慶吾さんの支援者として名乗りを上げました。しかし、菊野慶吾さんには父親が保証人になっていた約1億円もの借金がありました。

しかし、菊野慶吾さんの人柄にほれ込んだ「虎」たちは、そんなことで出資の意志を翻すことはなく、逆に「儲けて返せばいい」とエールを送りました。

普段は出資者たる「虎」たちが、志願者を選ぶ『マネーの虎』ですが、このときは菊野慶吾さんが3人の「虎」の中から支援者を選ぶという異例の事態になりました。

出資を希望したのは、堀之内九一郎氏、貞廣一鑑氏、岩井良明氏の3人でしたが、最終的に菊野慶吾さんは、「一晩中でも家具の話をしていられる」という理由で、貞廣一鑑氏に出資を依頼しました。

菊野慶吾さんを取り合う形になった「虎」たち。選ばれなかった「虎」は不機嫌になりそうなものですが、全員が菊野慶吾さんの門出に温かい拍手を送りました。

見事500万円の出資を勝ち取った菊野慶吾さん。その後、その資金を元に、家族や職人たちの協力を得ながら、カフェスタイルでのハンドメイド家具の販売を目指しました。

開店までには父親との意見の相違や、年上の職人たちとの軋轢など、困難もありましたが、それを乗り越えカフェをオープンさせました。

『マネーの虎』では、出資を得た志願者は、では、売り上げのノルマを設定する決まりになっています。菊野慶吾さんは開店日のノルマを50万円に設定。これは、『マネーの虎』史上最高額のノルマで、強気の設定に、菊野慶吾さんの家具に対する愛情と自信のほどがうかがえます。

カフェは開店前から行列ができる盛況ぶりで、たくさんの家族連れの客で賑わいました。始め家具はなかなか売れませんでしたが、徐々に子供用の椅子を中心に売れ始め、最終的には家具だけで売り上げ53万3460円を記録し、見事にノルマを達成しました。

2002年12月にカフェスタイルのハンドメイド家具屋「COUNTRY WOOD GARDEN」をオープンした菊野慶吾さん。カフェはその後も繁盛を続け、カフェスペースを拡張し、クレープやソフトクリームの販売も始めました。

菊野慶吾さんは、2003年にはネットショップをオープンし、さらに事業の幅を広げていきました。

順調に業績を伸ばした菊野慶吾さんは、2004年には資本金1000万円で、有限会社カントリーウッドガーデン（COUNTRY WOOD GARDEN）を設立しました。

カフェオープンのわずか3か月後にはネットショップをオープンさせた菊野慶吾さん。当時はまだ今ほどネット販売が盛んではありませんでしたので、先見の明があったと言わざるを得ません。

2005年には楽天市場に出店し、現在では売り上げの大部分がネット販売だと言われています。

『マネーの虎』出演をきっかけに夢を叶えた菊野慶吾さん。愛媛県にカフェを開店してから間もなく17年。あの家具屋さんは現在どうなっているのでしょうか。

菊野慶吾さんの出発点になったカフェ「COUNTRY WOOD GARDEN」。カフェで実際に使って試すことができるハンドメイド家具は評判を呼びました。

しかし、品質の良さと値段の安さが十分に知れ渡ったことでカフェはその役目を終え、本社およびショールームの移転に伴いカフェは閉店しました。

15年以上たった現在でも、相変わらず「カントリーウッドガーデン」の家具の人気は上々で、2016年には台湾に代理店を設け、海外進出も果たしました。

有限会社カントリーウッドガーデン（COUNTRY WOOD GARDEN）は、家具の製作、販売だけでなくリフォーム業にも進出し、さらに事業内容を拡大しています。

安価で実用的な手作り家具で人気を博した菊野慶吾さんですが、最大のヒット商品はミニチュアサイズの家具シリーズです。もともと家具の見本にするつもりで作ったミニチュア家具でしたが、2007年に販売を開始するとたちまち人気商品となりました。

家具職人が本気で作ったミニチュア家具は、実寸大の本物と変わらず細部まで精巧に作りこまれており、ドールやフィギュア用に買い求める人が多く、ネットショップでは即完売になるくらい人気が高いシリーズです。

『マネーの虎』に出演して一躍有名になった菊野慶吾さん。番組出演後は世間に顔と名前を知られ、批判的なことを言われることもあったそうです。

事業も、一見順風満帆なようでいて苦労の連続だったとのこと。42歳になった菊野慶吾さんは、現在どうしているのでしょうか。

朴訥として真面目な菊野慶吾さんとYoutube。なんだかそぐわない気もしますが、菊野慶吾さんのYoutubeには、モノづくりの楽しさを伝えたい、良い物を作りたいという思いが溢れています。

菊野慶吾さんは、お世辞にも話が上手とは言えませんが、人柄の良さがにじみ出てていて好感が持てます。

早くからインターネット販売に目をつけるなど、ネットの影響力をよく知っている菊野慶吾さん。Youtubeもそうですが、ツイッターでの情報発信も怠りません。家具職人らしく家具の紹介や商品情報などが多いですが、比較的頻繁に更新しています。

ネットを中心に家具の販売を続けていた菊野慶吾さんですが、「お客さんの声を直に聴きたい」との思いから、2018年に新しいショールーム兼店舗を開設、2019年2月には、愛媛県伊予市にカフェ「GO★CAFE」をオープンしました。

ランチやスイーツを楽しめる「GO★CAFE」の椅子やテーブルは、もちろん「COUNTRY WOOD GARDEN」と同じく手作りで、販売もしています。実用的な家具のほか、ミニチュア家具も展示されており、気に入ったものを買うことも、オーダーすることもできます。

成功者となっても純朴な性格は変わらない菊野慶吾さん。地道に、謙虚に、真面目に家具を作り続けています。これからも、その人柄そのもののような、ぬくもりのある家具を作り続けてくれることでしょう。今後の活躍が、ますます楽しみです。