「湊」という漢字の名前の意味や由来！男の子と女の子の名前も紹介

「湊」というこの字は、2004年度から人名漢字として使用できるようになりました。そこから人気が上がり、明治安田生命の発表する人気名前ランキング2012～2015年では、一文字で表す湊(ソウ、ミナト)が男の子の名前で5位前後にランクインしました。

男の子では湊「ミナト」の他に、「ソウ」の響きがよく使われています。湊太(ソウタ)、湊真(ソウマ)、湊一郎(ソウイチロウ)あたりがよく見られます。女の子でも「ミナト」の一文字使用があり、湊子(ミナコ)や湊美(ミナミ)といった、女の子らしい字が使われています。

上古に遡(さかのぼ)ると湊(みなと)の意味は水の門でした。『古事記』や『日本書紀』では、水門(みなと)と書かれた記述があります。

古代では津(つ)、泊(とまり)などと呼ばれる船着き場であり、また、入江、内湖(うちうみ)、潟(がた)、砂州(さす)、砂嘴(さし)などの地形の意味でもありました。古代末期からは、天然の地形を利用して港湾施設がつくられ、その水上部が港、陸上部が湊と区別されました。

近世からは、港湾施設と周囲の町割りを合わせ、湊と呼ばれるようになりました。港町の意味となった湊には、梶取(かじとり:操船責任者)、船頭(せんどう:船をこぐ人、和船の長)が住み、水運と連結する陸送に従事する馬借(ばしゃく:馬で荷物を運ぶ輸送業者)なども住みつきました。それら家族と、その生活を支える異業種も多く定住しました。

字から見る湊の由来としては、まず右の部首「奏」に注目します。この字は元々、会意(かいい)文字でした。 裂いた獣の象形を真ん中に置き、それを挟むように両手の象形が置かれる複雑な形をしていました。全体としては、ある物を両手で寄せつつ推し進める事を表し、そこから、差し上げることを意味する「奏」という漢字が成立しました。

左の「氵」さんずいは水を意味するので、水と「秦」の集めて差し出すを合わせれば、湊は「水の集合するところ」という意味になります。

より、具体的な意味をみていきましょう。
 

湊は「さんずい」に「かなでる」で12画数です。字の構造としては重なるような平行線が多く、まさに水を一カ所に湛(たた)えあふれている、さざ波のように見えます。画数は多いのに目にうるさくないのは、整理された直線性ゆえでしょう。

軽薄にならず、お硬くならず。この辺りのデザインセンスが、見た目を意識する最近の親たちから人気を博している秘訣なのでしょう。

なんといっても水、「さんずい」に港の意味ですから。付随して船舶などのイメージもあります。水や水辺といって思い浮かべる季節は、やはり夏。夏休みの海は広く自由です。色は何といっても青。真っ青な空には白い雲が浮かび、鏡のような海には白いヨットが浮かぶ。どこまでもつづく青い海と青い空、白い三角形と白い雲。

――と、ここまでくれば、親たちが自分の子ども時代を思い浮かべ、とくに男の子に、自らの仕事や重責からの解放感を託すのは道理といえます。

上記のイメージからそのまま降りて来れば、やはり舟ではないでしょうか。なによりヨットは自ら舵を取り、手足となって世界のどこへでも連れて行ってくれます。むかしから、冒険といえば舟なのです。それ以外の乗り物は、物理的にも歴史的にも無意味です。

タイタニックではなくヨット。小舟で太平洋ひとりぼっち。しかし、大きな船なら海賊になります。海賊には仲間がつきもの。港の求心力で友達100人できるかな?

しかし今の時代、そのような冒険は男の子といえども求められていません。だから舟とはならず港なのでしょう。港のような安心感で人を吸い寄せるコミュ力と、海賊から毒気を取り払った仲間意識。こうくればなるほど、さわやかな青で開放的、かつ安定を求める現代の需要とマッチしています。

湊、港といえば荒波を乗り越えたどり着く寄港地であり、我が家に帰って来たという安心感があります。出発点と考えれば、いずれ旅立つ船舶の修理や造船のための母体(ドック)となります。中継基地としては、人や積荷を受け渡す寄せ場、船の補給基地でもあります。総じて、場所を提供しているのです。

むやみに動き回らずとも向こうからやって来る、そんな場所としての魅力(みりょく)。やって来ては離れ、また来ては離れていく。そのような無碍(むげ)で人を縛らない場所＝ヤドカリの住まいのような存在。親としては、出来れば、そこに立つような者のように生まれて来て欲しいのかもしれませんね。

例えていうなら、人をまどろみで縛らぬ良港としてのキルケ―であり、航海中に危険をそっと耳打ちしてくれるセイレーンのような。

名前は親が子どもに送る最初のプレゼントです。でも、相手は生まれて来たばかり。好みが分かりませんから、あなたが見立てるしかありません。こうであって欲しいという、ささやかな祈りを託すのと、自分の能力では出来なかった願望を押しつけるのとでは、だいぶ違います。親に許されているのは、前者のささやかなエゴまでのようです。

どんなに良い名前を思いついたとしても、名字との相性が悪ければ何にもなりません。名字と名前を通しての意味、音声としての語感、字面の美醜、すべて合わせて総合的に考慮しなければ台無しです。

わかりやすさに勝る表現はありません。案外見落としているのが、自分が何を子に託したいのか理解していないことです。それを確認した上で、他人に最も端的に伝わる言葉を選びましょう。

意味だけではなく、響きも重要です。現代では、響きの方にこそ、重きを置く人が大勢いるかと思われます。その場合も上と同じことです。

他人は自分が考えていることの、十分の一ほどしか理解してくれないボンクラだと思ってください。人は自分にとって必然性のないことに注意力を傾けたりしません。それはお互いさまです。独創的なアイデアに行き着くまでの経路をすっとばし、数個の字面だけ読んでも、あなたのメッセージは伝わりません。的を絞り、枝葉を払い落す勇気が必要です。

湊のつく男の子の名前、漢字二文字を表にしました。以下が代表的なものです。表は左から右へ人気順に並べてあります。一目見てわかるように、一時足して「みなと」より、「そう」とつく名が圧倒的に多いようです。キレの良い響きが好まれたらでしょうか。
 

三文字の上位は少々古めかしいというか、クラッシク(普遍的)なもので占められています。それらを過ぎて「みなと」読みの辺りに来ると、名前でしか読まぬような「名のり」が増えます。
 

女子の漢字二文字の読み方はバラけていて、めずらしく湊が後ろにつく場合があります。
 

ぱっと見ただけで、男子の三文字と比べると、漢字とひらがなの字数が同数の対になっているのが分かります。ここから伺(うかが)えるのは、女子の場合は二文字も含め、全体的に音声重視の傾向が強いということです。
 

湊の字は2004年から使用が認められたせいか、芸能人には若年者しかいませんでした。まだ、かけだしなので知名度は低いようです。本名ではない芸名でもヒットしなかったのは、やはり人の意識には、模倣や親しみ、可能性といった太い近道が不可欠だからでしょう。

篠原湊大(しのはら そうた)。2008年8月9日生まれ、出身地は埼玉県。2015年、小学一年生のときにモデルオーディションで準グランプリを獲得しました。2018年のアニメ映画「ちいさな英雄〜カニとタマゴと透明人間〜」でシュン役の声優を務め、一躍注目されることになりました。

柏木湊太(かしわぎ そうた)。1995年1月7日、北海道出身。2015年に二つのミュージカル「ちっちゃな英雄～ヒーロー」、「青春鉄道」に出演しました。同年の映画「お江戸のキャンディ」では、牡丹役を演じました。

翌2016年には舞台「美男高校地球防衛部LOVE」に出演。同年、映画「バニラボーイ」では生徒役を演じ、日本テレビドラマ「HiGH&LOW～THE STORY OF S.W.O.R.D.～」に出演しました。

湊あかね（みなと あかね)。彼女はモデルであり、prediaのメインボーカルです。1990年3月20日生まれ、神奈川県出身 。15歳の時に渋谷センター街でスカウトされました。

モデル活動を続ける中、2010年に第1回「ガールズボウラーオーディション」審査員特別賞を受賞しました。東京都ボウリング親善大使「Lovebowlers」の一員でもあります。その後、大人アイドルprediaのメンバーとなり活躍中。

湊かなえ(みなと かなえ)。彼女は芸能人ではなく作家です。1973年生まれ広島県の因島出身、武庫川女子大学家政学部被服学科卒業。2007年第35回創作ラジオドラマ大賞を『答えは、昼間の月』で受賞しました。同年に第29回小説推理新人賞を『聖職者』で受賞して、小説家デビューを果たしました。趣味は登山だそうです。

「湊」には、水が切っても切れない感じ漂います。その意味とはまず、水自体の合流場所でありました。それから、船や人の集まる物流と交流の港町となりました。現代では、水と都市、開放的な自然とビジネスの二つを顏を持つ、ちょっと贅沢な印象が世間受けしているようです。

港は中継地(オアシス)です。今は昔のシルクロードは廃れ、今や世界中どこの国でもハートランド(内陸部)より沿岸部の方が豊かです。イジワルな言い方をすれば、水辺の湊の意味とは、耕さずして交わりの富を享受する一方、人との深い交流を便利にオンオフできる狡さも兼ねそろえている、ともなります。

リッチで無責任、シャンパンのように軽やかで社交的、田舎くさくないイメージ。しかし、港は舟ではありません。あくまで土地であって、自ら動くことは出来ないのです。それゆえ、そこには確かに安心感がありますが、きわどい立地ゆえの人災天災の脆(もろ)さもあるのをお忘れなく。