虚勢の意味とは?虚勢を張る人の心理や特徴
虚勢を張るという表現、誰しも一度は目や耳にしたことがあるかと思います。しかし、虚勢とはなんなのか。その意味や特徴をあらためて考えてみると、難しいものです。この記事では、虚勢を張る人の心理や特徴、意味、対処法など、具体的な例を挙げながら紹介していきます。
目次
虚勢ばかり張っている人を理解できない!
我々は日々の暮らしや仕事などの際、周囲との付き合いにおいて「虚勢を張る」人と接する機会が多かれ少なかれあるのではないあるのではないでしょうか。その人の心理とはどういったものなのか、理解できないことも多いのではないかと思います。
また、自分が「虚勢を張る」行為をしてしまい、後から後悔することもあるかもしれません。どうしてそういった行為をしてしまうのか、その特徴や心理とはどういうものなのか、そもそも虚勢とはなんなのか、以下でお伝えしていきます。
「虚勢」の意味とは?
本項では、まず「虚勢」という言葉とはどういったものであるのか。その意味をまず、説明していきます。
「虚勢」とは、一言で言ってしまうならば、実力を伴わないなどといった、中身のない見せかけだけの勢い、威勢を意味します。近い意味の語では、空威張り、空元気などがあります。
「虚」がつく語とは
「虚」とは打ち消しの意味で使われることがとても多い語です。「虚」を一文字で表すと、からっぽ、何もないことを意味し、転じて嘘や偽りを指しています。反対語は「実(じつ)」です。
つまり「虚勢」とは勢いや威勢を「虚」が打ち消しており、実のない、偽りのといった意味が付与された語で、よい意味ではまず用いられません。また、前述した近い意味の語の空元気、空威張りの「空」もからっぽを意味しています。
この他、「虚」とは他の語に付随した場合に、嘘・偽りなどの意味が付されるため、たいていよい意味では使われないといった特徴があります。
「虚勢」の類語
「虚勢」の特徴をより深く知っていただくため、ここでは近い意味で使われる類語を紹介します。前述したとおり、これらも「虚勢」同様あまりよい意味では用いられないため、使用には注意が必要です。
虚飾
実質が伴わない、見せかけだけの飾りやうぬぼれを指します。英語では「Vanity」といい、虚飾の他、次項の虚栄心のことも意味します。
「Vanity」は古くは、単に無価値であることを意味していましたが、現在のキリスト教世界においては神を自らとなぞらえる悪しき自己崇拝と考えられており、七つの大罪の一つである傲慢の一例とも言われる語です。
哲学的にも、ニーチェなど多くの専門家がこの語に関して、言葉を残しています。
虚栄心
自分を実質以上に見せかけようとする心です。見栄を張りたがる心理が大きい人などは「虚栄心が強い」などと言われたりすることがあります。
一般に、やたらと虚勢を張りたがる人などはこう呼ばれることがよくあり、虚勢や見栄、うぬぼれなどが強い特徴の、思い上がった心理と受け止められがちです。
見栄
「見える」を語源とする語で、本来は見た目や外見を指す語です。転じて人目を気にし、実質よりも外面をよく見せようとする態度、心理を意味します。
「見栄を張る」と言った場合「虚勢を張る」と近い意味で用いられます。詳しくは後述しますので、そちらをご参照ください。
「虚勢」の使い方
この項では、「虚勢」という語の使い方を説明していきます。前述したように、内面に乏しく、見せかけの威勢を用いる様子を例文を交えて説明させていただきます。
「虚勢」を使った例文
以下では「虚勢」という語の使い方を例文を用いて説明します。例文は、青空文庫所収の古典文学からの出典させていただきました。
例文①心の中で虚勢みたいに呟く言葉は、子供よりも親が大事
昭和初期の文豪、太宰治の「桜桃」からの出典です。父がぜいたく品である桜桃(さくらんぼ)を子供たちに食べさせず、自分一人でまずそうに食べている場面です。
虚勢のように心の中で「子供よりも親が大事」と呟くことで、その逆の心理と罪悪感を示唆しているように解釈することができます。
例文②器用に煙草の輪を吹き出すことで、虚勢を張っていると
昭和初期の作家、織田作之助の「夜光虫」からの出典です。スリの少年、豹吉(ひょうきち)が大人の釣り人に話しかけられ、煙草をこれ見よがしにたしなむことで、虚勢を張って強がっている場面です。
例文③不安から、虚勢を張ってけなしてしまいます
大正~昭和初期のプロレタリア文学作家、宮本百合子の「C先生への手紙」からの出典です。前文に「所謂男らしい欠点を多大に持った人は、こちらの女性に対して、彼の持つ、哀れむべき尊厳を犯される」とあります。
C先生との書簡において、婦人観を語る場面です。男性的な欠点を持つ保守的な婦人観の女性に対し、尊厳を保つため、虚勢を張ってけなしてしまうという一文です。
虚勢を張る原因とは?
ここまでは、「虚勢」という語の意味や使い方に触れてきました。ここからは、実社会において「虚勢を張る」人の特徴や心理といった内面に触れていきます。
ではまず、その「虚勢を張る」原因とはなんなのか、いくつか例を挙げながら掘り下げていきます。
負けず嫌いが行き過ぎた結果
負けず嫌いといった心理は、本来必ずしも悪いものではないですが、行き過ぎてしまうと虚勢を張ることにつながってしまいます。
自らを高めるために、前向きな心理で物事に臨むのは決して悪いことではありません。しかし、虚勢を張って自分をより大きく見せようとすると、周囲からはよい感情を持たれないでしょう。
自信のなさを隠すため
自らの中身の乏しさを棚にあげ、相手をこき下ろすような虚勢の張り方は、自身の信頼のなさの裏返しである場合があります。
自分の中で自信のないことを自覚しつつも、それを隠そうとするため他者をこき下ろして、相対的に自分を上げようとする心理です。
相手より優位に立ちたい心理から
前述した自信のなさとは逆に、自らに対し根拠の乏しい自信を持っている場合の多くがこのケースに当たります。
負けず嫌いにも近いものがありますが、こちらの場合負けないために何かをしているかというと、怠っていることが多くあります。
口が達者で、揚げ足取りがうまいため、相手の落ち度を見逃さないのが特徴です。後述しますが、インターネットで近年よく見られる「マウント」という表現がよく似合うケースです。
虚勢を張る人の心理
この項では、「虚勢を張る」人の心理を探っていきます。我々の周囲の「虚勢を張る」人たちや、もしかして自分の行動や心理に当てはまる部分があるかもしれません。
そういった心理を理解することで、「虚勢を張る」人に優しく接することもできるかもしれませんし、自分に当てはまる場合は、自らを見直すきっかけにつながるかもしれません。
マウントを取りたい
特に努力もせず、相手より優位に立ちたいというのがこの場合です。マウントとは相手にまたがることを意味する「Mount」が語源で、近年インターネットでよく目にするようになったスラングです。
相手の些細な落ち度を見逃さず、ほんの少しでも自分が優れていることがあれば、それを誇示するという行為が主だったもので、相手をこき下ろすことで相対的に自分を優位に立たせたいという心理から表出しています。
本当は内面に自信が持てない
自信のなさが「虚構を張る」心理につながることもあります。この場合ですと、自らの内面の乏しさを自覚しており、その乏しさを隠すために虚勢を張り、相手をおとしめることが多いようです。
また、本人がその自分の自信のなさに自覚があるかないかという差はあるにせよ、前項で述べた「マウント」を取りがちな人達と同様に、自らの内面を偽るという点においては共通しています。
相手に心を開いていない
周りの人たちとなじめず、心を許していない場合に、警戒心から虚勢や強がりを言って、自分を大きく見せようとする場合がこちらです。
相手に弱みを見せたくなくて、つい虚勢を張ってしまうというのがこの場合ですが、日常的にこれでは気が張って疲れてしまい毎日が苦しくなってしまうでしょう。
そういう人が身近にいたら、優しく声をかけてみるのもいいかもしれません。親しくなってみると、気が合うかもしれませんし、警戒心からの虚勢も減るのではないでしょうか。
虚勢を張る人の特徴
ここでは、「虚勢を張る」人の悪しき特徴を数点、例を挙げて紹介します。これらは少々ならば害のないものですが、頻繁にこういった特徴が出てしまった場合、周囲を嫌な気持ちにさせてしまうかもしれませんし、嫌われてしまうかもしれません。
周囲にだけではなく、我々もこういった例のようなことのないよう、自分にも目を向けて気をつけておきたいものです。
自慢話をしがち
「虚勢を張る」人の特徴として、話の内容の大半が自慢話になりがちというものがあります。漫画のドラえもんの登場人物であるスネ夫を例に挙げると分かりやすいかもしれません。
スネ夫の例では、裕福であることを自慢し、自らの存在を大きく見せようと虚勢を張る人物として作中では描かれています。現実に目を向けてみると、漫画ほど露骨ではないにせよ、自慢することで充足を得ようとする人物をしばしば見かけます。
話の内容が大げさである
前述の自慢話にも通じることですが「虚勢を張る」人の特徴として、話の内容が実際よりも大げさになりがちです。
自慢話のみならず、話を膨らませすぎて、結果的に嘘をつくことにもなりかねません。そして、そういった人は周囲から見ると滑稽に見えるものです。
他者には厳しく当たる
また、虚勢を張りがちな人は、他者に対して厳しく当たる特徴を持つことがしばしばあります。
例えばそういった人は、努力して何かを成し遂げたことやその人物に対して、それの価値を否定するようなことを言って、周囲を白けさせたりします。
要は自分ではなく、他者が持ちあげられるのが面白くないため、虚勢を張って相手をおとしめ、自らを上に見せたいのでしょう。その自覚なしにそういった虚勢を張っている人も中にはいるかもしれません。
自分には甘い
前述の他者に厳しいという特徴に付随しがちなものとして、自分に甘いというものが挙げられます。
例えば自分以外の人の苦労や努力を認められないにも関わらず、自らに対する評価が実際よりも高く、他者の功労に対し、自分でもできると思いがちであるのが特徴です。
年かさの方にしばしば見られる、昔の苦労自慢からの若者批判などはその一例でしょう。
虚勢を張る人との上手な付き合い方
では、虚勢を張ることによって、周囲を不快にさせる人物にはどう接すればよいのでしょうか。ここでは、その例をいくつか挙げて紹介します。
無視しない程度に放っておく
虚勢を張る人は、自分の話を聞いてもらえる相手がいると、ますます増長します。そこで、そういった人の話をほどほどに聞き流すことによって、虚勢から身を守るのです。
無視とは言わないまでも、通り一遍の空返事をしておけば、虚勢を張る人も諦めてしまうでしょう。
ほめちぎって虚勢を自覚させる
虚勢を張る人は、その行為の虚しさには無自覚です。そこで、そういった人の虚勢に対して過剰にほめてみるのも、一つの方法です。
始めのうちは、そういった人もほめられてご満悦かもしれませんが、そのうち過剰な称賛を浴びることで、実際の自分の中身の乏しさを自覚し、虚勢を張ることをやめてしまうでしょう。
真っ向から指摘する
あまりに虚勢が強く、周囲の迷惑になってしまっている場合には、上記したようにやんわりとした方法ではなく、直接虚勢を張る本人に意見するのも手です。
本人は虚勢を張っていることに無自覚かもしれませんし、言われて初めてそれに気づき、やめてくれる可能性もあります。
こういった相手に意見をするのは、非常に勇気のいることかもしれません。人格否定をせず、虚勢を張っているという行為をやめてもらえるように、慎重に話すようにしましょう。
誰かに頼んで注意してもらう
上記したように、自分からたしなめるのが難しい場合、例えば職場の先輩の虚勢を張る行為に困ってしまった場合、上司などの第三者に頼るのがよいでしょう。
その場合、虚勢を張る人ではなく、虚勢を張る行為に困っていると伝えるとよいでしょう。「罪を憎んで人を憎まず」とも言いますし、注意することで虚勢をやめてもらえるならば、それで解決ということでよいのではないでしょうか。
「虚勢を張る」と「見栄を張る」の違いは?
「虚勢を張る」とよく似た表現で「見栄を張る」という表現があります。どちらも実際の自分以上に他者によく見られようとする行為です。
虚勢の「虚」という字は前述したように、偽りという意味もあります。それと比較して見栄の場合は「見える」が語源であるため、虚勢という語が内面の伴わさに比重を置いた表現であることに対し、見栄は外面をより取り繕うといった違いがあるようです。
似た意味の言葉ですが、「虚勢を張る」の方が表現として強く否定的な意味を持つようなので、使い分ける際には気をつけることが肝心です。
虚勢も心がけ次第でプラスになる
ここまで、虚勢という語に対し様々な考察をさせていただきました。多くはネガティブな面について述べましたが、虚勢は何も悪い面ばかりではないということも、ここで述べさせていただきます。
例えば、今の自分の力で入学が難しい難関校への受験があったとします。そういったときに、嘘でも自分を鼓舞させるため、強い言葉が必要なときがあります。それがたとえ、現段階では虚勢に過ぎなかったにしても、その言葉を頼りに、なりたい自分を目指せばよいのです。
そういった意味で、虚勢も心がけ次第ではプラスに働くものなのです。