2019年01月06日公開
2019年01月06日更新
かしこみかしこみの意味とは?祝詞でのかしこみかしこみ申すの使い方も紹介
祝詞を聞くときには、特に「かしこみかしこみ」という言葉が印象に残りやすいでしょう。「かしこみかしこみ」とはどんな意味の言葉なのか、気になっている人も少なくないと思います。そこで、今回は「かしこみかしこみ」の意味や祝詞での使い方などを取り上げていきましょう。
目次
「かしこみかしこみ」ってどういうこと?
神社での祝詞や神棚へのお参りでは「かしこみかしこみ」という言葉をよく使います。その不思議な呪文のような言葉が気になったことがある人は多いでしょう。しかし、その意味をきちんと調べたことがある人は少ないと思います。
そこで、今回はその「かしこみかしこみ」の意味や祝詞での「かしこみかしこみもうす」の使い方などを詳しく紹介していきましょう。「かしこみかしこみ」という言葉に興味がある人は、しっかり確認してみてください。
「かしこみかしこみ」の意味
祝詞の中で聞くことが多い言葉「かしこみかしこみ」は、その独特の響きから印象に残りやすい言葉です。しかし、その意味を正しく知っているという人は少ないでしょう。
そこで、以下ではまず「かしこみかしこみ」の現代語での意味と宗教上の意味を確認していきたいと思います。
現代語での意味
「かしこみかしこみ」とは、「かしこまってかしこまって」という言葉を省略した言葉です。「畏む」(かしこむ)とは、「恐れ多くも」や「恐れながら」といった意味を持つ言葉とされています。
その「畏まる」を重ねた「かしこみかしこみ」は、「恐れながら謹んで」というように相手への尊敬の念を強調する言葉なのです。現代では「かしこみかしこみ」をそのまま日常の中で使うことはなく、「畏まって」という省略した形で使います。
宗教上での意味
一般的に「かしこみかしこみ」は、神様への祈りの言葉である祝詞の中で、神様への畏敬の念を示すために使われます。日本では昔から天皇や神様などの偉大な存在には、敬語を2回繰り返して畏敬の念を強調する二重敬語という敬語表現が使われてきました。
尊敬の念を示す「畏まって」という敬語を繰り返した「かしこみかしこみ」は、神様への大きな畏敬の念を示す言葉として古くから使われてきたのです。
「かしこみかしこみ」の漢字での書き方
「かしこみかしこみ」は様々な漢字で表現することができます。その漢字によって、「かしこみかしこみ」を使う場面が変わることもあるのです。そこで、以下では「かしこみかしこみ」の様々な漢字表記を取り上げていきましょう。
恐み恐み
「かしこみかしこみ」は「恐み恐み」と表記することができます。「恐み」という漢字表記にはネガティブなイメージを抱く人もいると思いますが、「恐み」とは「恐れ多くも」という意味を持つ言葉です。
そのため、「恐み恐み」とは相手に尊敬の念を示すポジティブな言葉と言えます。そんな「恐み恐み」は、祝詞の中で神様を崇拝する言葉として登場することが多いのです。
畏み畏み
「かしこみかしこみ」は一般的に「畏み畏み」と表記されます。「畏まって」や「恐れながら」といった尊敬の念を意味する「畏み」は、尊敬する相手に向かって使われることが多いでしょう。
「畏み畏み」は「恐み恐み」よりもマイナスのイメージを抱かれにくいため、あえて「畏み畏み」を祝詞に使う神社も多いとされています。
恐美恐美
「かしこみかしこみ」は「恐美恐美」と表記されることもあります。「恐美恐美」は一般的に神式の結婚式における祝詞で使われる言葉です。
神式の結婚式では、神様に婚姻を伝えるために祝詞を神主が読み上げます。その祝詞の中で神様に畏敬の念を示す挨拶として、「恐美恐美」は使われるのです。
「かしこみ」の後の「白す」とは?
「かしこみかしこみ」の直後には「白す」という言葉がよく付きます。「もうす」と読む「白す」とは、「申し上げる」や「隠し事をせずにしっかり伝える」という意味を持つ言葉です。
「白状する」という言葉がある通り、「白す」には申し上げるという意味だけでなく、清い心で嘘偽りなく申し上げるという意味もあります。神様への祈りやお願いを示す祝詞の中では、最初に「かしこみかしこみ白す」が読み上げられることが多いのです。
「かしこみかしこみ」を使う場面
「かしこみかしこみ」は神道が関係する場面でよく使われます。そこで、以下では「かしこみかしこみ」が使われる場面を紹介していきましょう。
「かしこみかしこみ」を使ってみたいという人は、ぜひ以下の使う場面をよく把握して、スマートに「かしこみかしこみ」を使ってみてください。
祝詞
祝詞には様々な種類がありますが、神社でのお祓いをする際の祝詞は「大祓詞」や「祓詞」といった種類の祝詞です。自分達の罪や穢れを払って頂きたいという願いを神様に伝える前に、神様への挨拶として「かしこみかしこみ」が使われるのです。
その祝詞の中では、「かしこみかしこみもまおす」や「かしこみかしこみももうさく」というように「かしこみかしこみ」が使われることが多いでしょう。これらの言葉は「恐れ多くも申し上げます」という意味の言葉です。
家の神棚
神棚がある家は少なくなりましたが、テレビや映画で神棚を見たことがある人はたくさんいるでしょう。その神棚へのお祈りの場面でも、「かしこみかしこみ」は使うことができます。
神棚は家を守る神様の居場所なので、毎日神様に家内安全を祈るべき場所とされているのです。その毎日の祈りの中で、「かしこみかしこみ」を使うことができます。
使い方は祝詞の中の「かしこみかしこみ」とほぼ同じなので、祝詞と同じように「かしこみかしこみ白す」と使われることが多いでしょう。
神社へのお参り
神社へのお参りでも「かしこみかしこみ」は使うことができます。神社では通常静かに手を合わせて願い事を神様に伝えますが、その際に願い事と共に「かしこみかしこみ」という言葉を声に出すと、より神様に願い事が届きやすくなるのです。
神社で「かしこみかしこみ」を使うときは、まず二礼二拍手を済ませてから願い事を言います。願い事を言い終えたら「かしこみかしこみもうす」と言って最後に一礼をして終わりです。
最後の「かしこみかしこみもうす」は「恐れ多いことですが、どうかよろしくお願いします」という意味の言葉になるので、忘れずに言うようにしましょう。
神棚への祈りや神社参拝で唱えることができる祝詞とは
祝詞には様々な種類がありますが、その中には初心者でも簡単に覚えられる祝詞もあります。そこで、以下では神棚への祈りや神社参拝で唱えることができる、簡単な祝詞を紹介していきましょう。祝詞に興味がある人は、ぜひ覚えて実際に唱えてみてください。
神社拝詞
以下で紹介する祝詞は、神社に祀られている神様に自分の願いを丁寧にお願いするための「神社拝詞」と呼ばれる祝詞です。特に神様にお願いしたいことがあるときは、ぜひ以下の祝詞を唱えながら神社を参拝してみてください。
かけまくもかけまくも畏き畏き(神社名又は祭神名) 神社の大前をかむやしろのおおまえを 拝み奉りておがろみたてまつりて 恐み恐み白くかしこみかしこみもうさく 大神等の広き厚き御恵をおおかみたちのひろきあつきみめぐみを
辱み奉りかたじけなみたてまつり 誠の道に違ふことなく まことのっみちにたがうことなく 負ひ持つ業に励ましめ給ひ おいもつわざにはげましめたまい
家門高く身健かに いえかどたかくみすこやかに 世のため人のために尽くさしめ給へとよのためひとのためにつくしたまえと 恐かしこみ恐かしこも白まをす
神棚拝詞
以下の祝詞は、神棚の前で祈る際に唱えることができる神棚拝詞と呼ばれる祝詞です。今まで家を守ってきた神様に対して、これまでの感謝の念と畏敬の念を丁寧に伝えるための祝詞とされています。家に神棚がある人は、神棚に祈るときにぜひ唱えてみてください。
此れの神床に坐すこれのかむどこにます 掛けまくも畏き天照大神かけまくもかしこきあまてらすおおかみ 産土大神等うぶすなのおおかみたち 諸々の大神等の大前にもろもろのおおかみたちのおおまえに
恐み恐みも白さくかしこみかしこみももうさく 家門高くいえかどたかく身健にみすこやかに 世の為人の為によのためひとのために 尽くさしめ給へとつくさしめたまへと 恐み恐みも白す
「かしこみかしこみ」の祝詞での使い方
「かしこみかしこみ」は祝詞の中ではどのような使い方をするのか、気になる人もいるでしょう。そこで、以下では「かしこみかしこみ」が祝詞の中でそのように使われるのか確認していきたいと思います。
祝詞の中の言葉に興味がある人は、ぜひしっかり確認してみてください。
お祓い・厄払い
神道では穢れや罪は神様の力で払うことができると考えられています。そのため、厄払いやお祓いの際に読み上げられる祝詞は、神様に「罪や穢れを祓ってください」とお願いする意味が込められているのです。
厄払いやお祓いの祝詞の中では、「かしこみかしこみ」は「恐れ多いですが神様のお力をお貸し頂きたい」という意味で使われます。
お宮参り・七五三
子供の健やかな成長を祈る行事であるお宮参りや七五三でも、神主が祝詞を読み上げることがあります。その祝詞は、神様に子供に降りかかる災難を取り除いて欲しいという願いが込められているのです。
そのため、七五三やお宮参りでの祝詞でも、「恐れながらお願いします」という意味で「かしこみかしこみ」が使われます。
地鎮祭
地鎮祭とは土木工事や建築工事を行う前に、その土地を守ってきた神様に祈りを捧げる神事です。「じちんさい」または「とこしずめのまつり」とも呼ばれるこの神事でも、祝詞が読み上げられます。
祝詞ではその土地を守る神様に、土地を利用させて頂く許可を求めるのです。そのため、地鎮祭での祝詞でも「謹んで神様にお願い申し上げます」という意味で、「かしこみかしこみもうす」が使われます。
ちなみに、一般的に地鎮祭は工事の安全を祈る儀式として認知されているので、「安全祈願祭」と呼ばれることもあるのです。
日本に古来から伝わる祝詞である「大祓詞」とは
平安時代の法令集である「延喜式」には、現在でも重要な祝詞とされている「大祓詞」の原文が載っています。「大祓詞」は古来より人の罪や穢れを祓う強力な力を持つ祝詞として、日本で大切にされてきました。
この「大祓詞」は日本神話がベースとなった内容の祝詞となっています。日本の土地を作ったとされる「ニニギノミコト」が平和に収めている日本にある罪や穢れを、この大祓詞が祓い清めるという内容になっているそうです。
また、全ての言葉に言霊という霊力が宿ると考えられている神道では、「大祓詞」には特に強力な浄化の力があると考えられています。唱えるだけでもその霊力の恩恵を受けて、運気が上がるとも考えられているのです。
そのため、運気を上げたい人は、ぜひ「大祓詞」を唱えてみてください。
「かしこみかしこみ」の使い方《例文紹介》
「かしこみかしこみ」は祝詞や神棚への祈りなどの中では、どのように使われるのでしょうか?「かしこみかしこみ」は主に神様への祈りの言葉の中で、神様に恐縮の念や畏敬の念を伝えるために使われます。
以下では、例文と共に「かしこみかしこみ」の使い方を、さらに詳しく取り上げていきましょう。
例文①かしこみかしこみもまおす
「かしこみかしこみもまおす」は「かしこみかしこみもうす」の原型となった言葉とされています。この言葉は祝詞の中で、「澄んだ心で隠し立てせずはっきり申し上げます」という意味で使われるのです。
そのため、神様に願い事を明確に伝えたいときに、この「かしこみかしこみもまおす」は使われることが多いでしょう。
例文②かしこみかしこみももうさく
「かしこみかしこみももうさく」は、祝詞の文中で「かしこみかしこみ」を使いたいときによく見られる表現です。「かしこみかしこみももうさく」は「謹んで申し上げますが、」という意味で、通常この言葉の後に願いや祈りの言葉が続きます。
祝詞の中では「かしこみかしこみ」は、基本的に文末や文頭に置かれるのです。しかし、時に「かしこみかしこみ」が文章の途中で使われることもあります。その場合は「かしこみかしこみももうさく」を使って、スムーズに祝詞が読み上げられるようにするのです。
例文③かしこみかしこみもうす
「かしこみかしこみもうす」は、祝詞の中で「恐れ多いですが隠さずにはっきり申し上げます」という意味で使われます。現代人でも比較的分かりやすい表現なので、最近の祝詞の中で使われることが多い言葉です。特に祝詞の文頭で使われることが多いでしょう。
「かしこみかしこみ」が呪いの言葉と間違われる理由
「かしこみかしこみ」とは、神様に畏敬の念を表現するポジティブな言葉です。しかし、現代ではその「かしこみかしこみ」という言葉は、呪いの言葉と勘違いされてしまうこともあるのです。
その原因は「かしこみかしこみ」の「恐み恐み」という漢字表記と考えられます。現代では「恐」という漢字には「恐怖」をイメージする人が多いでしょう。そのため「」が恐ろしい呪いの言葉と、勘違いされやすくなってしまっているのです。
「恐み恐み」の「恐」は「恐れ多い」という意味の漢字なので、「かしこみかしこみ」にネガティブな意味合いは無いことをしっかり覚えておきましょう。
「かしこみかしこみ」の意味はしっかり把握しておこう
今回は祝詞でよく使われる「かしこみかしこみ」の意味や、「かしこみかしこみもうす」の祝詞での使い方などについて詳しく見てきました。
「かしこみかしこみ」は神道が関わる行事のシーンでは、使われることが特に多い言葉です。そのため、しっかり「かしこみかしこみ」の意味を把握しておきましょう。
また、神道や神社に興味がある人は、ぜひ今回の内容を参考にして「かしこみかしこみ」を使った参拝をしてみてください。