2019年05月09日公開
2019年05月09日更新
マックス・ヘッドルーム事件とは?有名な電波ジャック事件を徹底解説
マックス・ヘッドルーム事件をご存じでしょうか。マックス・ヘッドルーム事件は1987年に起こった電波ジャック事件で、史上最大の電波ジャック事件とも言われ、未だ犯人が見つかっていません。今回はそんなマックス・ヘッドルーム事件について解説していきます。
目次
アメリカで起きたマックス・ヘッドルーム事件とは?
世界には数多くの未解決事件がありますが、今回ご紹介するマックス・ヘッドルーム事件ほど、沢山の人を巻き込んだ未解決事件も珍しいのではないでしょうか。
マックス・ヘッドルーム事件は、アメリカで1987年に起きたテレビ放送電波ジャック事件です。“史上最大の電波ジャック事件”として今も話題に上りますが、事件から30年経った現在でもその犯人や手口が謎のままである、とても奇妙な事件です。
この電波ジャックはイリノイ州シカゴの放送局で1987年11月22日の同日中に2度起こり、番組を視聴していた人々や放送関係者を驚かせました。
マックス・ヘッドルーム事件(シカゴ9ch)の概要
それではここで、マックス・ヘッドルーム事件の概要をご説明していきたいと思います。マックス・ヘッドルーム事件は1987年11月22日の午後9時16分と、午後11時45分頃の2度にわたって起こっています。
まず、午後9時16分より電波ジャックが起こった第一のマックス・ヘッドルーム事件についてこちらでは解説していきたいと思います。
生放送中に画面が真っ暗に
電波ジャックが発生したのは、WGN-TV (シカゴ9ch)で午後9時より放送されていた「The Nine O"Clock News」というニュース番組の放送中でのことでした。
ニュース番組では、スポーツコーナーでナショナル・フットボールの試合について報道されているところでした。シカゴ・ベアーズがデトロイト・ライオンズに本拠地シカゴで30対10で勝利した、という内容を放送している途中で突然画面が真っ暗になりました。
その後約10秒間、テレビ画面は真っ暗のまま、無音状態が続きます。これだけでも視聴者は驚き、重大な放送事故と言える状況ですが、テレビ画面はさらにもっと奇妙な状態を映し出すことになります。
マックス・ヘッドルームを模した男が登場
真っ暗な画面が切り替わった先は、元あったニュース番組ではなく、マックス・ヘッドルームという、テレビ番組のキャラクターのラバーマスクをかぶり、ブラウンのスーツを着た人物の映像でした。
金属シャッターの様な波打った背景は回転する様に動き、その前でマックス・ヘッドルームの格好をした人物は笑っている様に揺れ続けました。
笑い声は聞こえず、背景の金属の板が回転する音なのか、金属がこすれる様な音が定期的に響くだけで非常に不気味な状態が約15秒間続きました。この音は、マックス・ヘッドルームの元ネタである番組の効果音を真似たものと言われています。
その後再び暗転し、約8秒ほど真っ暗な画面が続いた後、画面は元のニュース番組に戻りました。当番組でスポーツキャスターをしていたダン・ローンが「正直、何が起こったかあなた方は不思議でしょうが、ハハハ、私もです。」とコメントを残してニュースを続けました。
ゴールデンタイムの生放送のニュース番組中に起こったこの電波ジャックは多くの人の目に触れ、シカゴ中を震撼させました。
上に、当時の実際の動画を掲載していますのでご覧ください。
マックス・ヘッドルーム事件(シカゴ11ch)の概要
多くの人を混乱させ、放送局への問い合わせが殺到したニュース番組中の電波ジャックでしたが、マックス・ヘッドルーム事件はそれだけでは終わりませんでした。
1回目の電波ジャックから約2時間30分後に再び、別のチャンネルであるシカゴ11chにてマックス・ヘッドルームのラバーマスクをかぶった男が現れたのです。
そして今回は長時間の電波ジャックが行われ、約90秒に渡りマックス・ヘッドルームの男が話したり、やりたい放題行います。こちらでは、2度目のマックス・ヘッドルーム事件の概要をお伝えします。音声が不鮮明なので、様々な解釈がされている為、一例としてご紹介します。
ドラマ放送中に電波ジャック
2度目のマックス・ヘッドルーム事件は、午後11時45分にシカゴ11chで起こりました。イギリス制作の人気ドラマ、「ドクター・フー」のシーズン15の第1話、「Horror of Fang Rock」の放送中のことでした。
前回は長時間画面が暗転していましたが、今回は画面が切り替わるといきなりマックス・ヘッドルームのラバーマスクをかぶった男が現れます。そして前回は背景音しか聞こえませんでしたが、今回のマックス・ヘッドルームの男は話し出します。
話し出した男の声はエフェクトがかかっていて高い奇妙な声になっており、話すこと以外に1回目の電波ジャックと大きく違うのは、彼がアクティブに動き出すことでした。
約90秒に渡りマスクの男がやりたい放題
前回とはうって変って、電波ジャックが行われていた90秒間、男はやりたい放題でした。まず「もうたくさんだ!奴はめちゃくちゃマヌケだよ」といって笑い出し、「俺はチャック・スワーキーよりマシだぜ」と言います。
チャック・スワーキーとは、1回目に電波ジャックしたシカゴ9chの有力者のことで、彼について「リベラル野郎め」と暴言をはきます。そしてペプシコーラの缶を取り出し、“Catch the wave(波に乗ろうぜ)”と言います。
この“Catch the wave”という文句は、当時マックス・ヘッドルームがイメージキャラクターをつとめていたコカ・コーラのキャッチコピーでした。コカ・コーラのイメージキャラクターなのにペプシ・コーラを持っているところが何とも皮肉です。
その後、2曲の歌を1フレーズずつ歌ったりハミングし、「俺は“X”がまだ見えている」と言います。これは2曲目にテーマソングをハミングしたアニメについての発言です。
そして「俺の痔が!」と訴え、少し暴れます。その後、「俺は偉大な傑作を生みだした。マヌケな世界の偉大な新聞のためにな!」と言います。この、新聞とはシカゴに本社を置くトロンくという新聞社を指していると言われます。
その後、手袋を取り出し、「俺の兄弟はこれと別のをつけているんだ…けどこれは汚いんだよ!足跡がついてるんだ!」と言って手袋を投げ出します。そしてその後、なんと画面が切り替わり、さらに異様な光景が繰り広げられます。
謎の女性も登場
切り替わった画面では、先程までかぶっていたマックス・ヘッドルームのラバーマスクを手に持って画面に向け、ズボンを下ろして自分の尻を横に向けた状態の男が映し出されました。
何故か尻をむけた側にはメイド服を着てハエたたきをもった女性が立っており、男が「奴らはどこにいるんだ?奴らは俺を捕まえにくるぞ…」と言うと、女性が「かがみなさい、ビッチが!」と言って男の尻をハエたたきで叩きます。
男はうめき、「とめてくれ!」という言葉の直後に電波ジャックは終わり、もとのドラマ画面に戻ります。実際の動画を掲載しますのでご覧ください。
そもそもマックス・ヘッドルームとは?
マックス・ヘッドルーム事件にて男がかぶっていたマックス・ヘッドルームというキャラクターですが、そもそもどういったキャラクターなのでしょうか。
マックス・ヘッドルームはCGキャラクターであり、1984年よりイギリスの「チャンネル4」で放送された音楽番組の司会者として登場しました。その後、コカ・コーラのCMキャラクターとして起用された後、アメリカでマックス・ヘッドルームを主人公にしたテレビドラマが放送されました。
コカ・コーラ100周年イメージキャラクターに起用されたのちテレビドラマになり、日本でもドラマの吹き替え版が放映されて当時爆発的人気のあった山田邦子が真似てCM出演する等、大変な人気でしたが、ドラマは視聴率がふるわず打ち切りになってしまいました。
なぜ男は電波ジャックすることができたのか?
ますます人々に混乱をもたらせ、翌日のニュースはこの話題でもちきりになったマックス・ヘッドルーム事件ですが、男はどうして電波ジャックをすることができたのでしょうか。
掲載されている動画で見るとシュールで笑える映像に思えるかもしれませんが、これが予告なく突然見ていた番組の途中で映し出されたらものすごい恐怖心を抱いたり、混乱したりしてしまうでしょう。
当然ですが、当時事件発生すぐに捜査が始まりました。しかしマックス・ヘッドルーム事件は30年経った今でも未解決事件のままです。なぜマックス・ヘッドルームの男は電波ジャックに成功したのでしょうか。
FCCとFBIが捜査
アメリカの電波放送に責任を持つ連邦通信委員会(通称FCC)とFBIはただちに捜査をはじめました。
放送局では放送対象地域に広範囲に電波を送る為、自社の高層ビル上から各地の送信機に電波を送ることのできるスタジオ送信機リンクというシステムを設置していました。
FCCとFBIによる捜査の結果、マックス・ヘッドルーム事件の犯人はそのスタジオ送信機リンクが放つ電波よりも強い出力の信号を送信機に浴びせ、電波ジャックを成功させたことがわかりました。
犯人は放送技術者と断定
FBIは、その方法が可能な者は放送技術者に違いない、と断定しましたが、確かな証拠をつかむことができず、犯人の特定・逮捕はかないませんでした。
マックス・ヘッドルーム事件で捜査報告書をまとめたFBIのマイケル・マルコス氏は、マックス・ヘッドルーム事件は殺人事件でもなく、おおきな損害が出た事件でもないため、捜査へのサポートが少なかったとのべています。
多くの人を驚かせた事件ではありますが、大きな被害が出ていなかったことが現在も未解決事件なままの原因のひとつと言えるでしょう。
男の目的は?正体は誰?
とても不可解で不気味なマックス・ヘッドルーム事件ですが、映像でマックス・ヘッドルームのラバーマスクをかぶっていた男は一体何の目的で事件を起こし、どんな人物なのでしょうか。
FBIが捜査するも、長い間未解決事件のままの事件ですが、マックス・ヘッドルーム事件が発生してから実に23年も経った2010年に有力な証言があらわれます。
こちらでは、2010年にされたマックス・ヘッドルーム事件に関する有力な証言の内容とその中で語られる犯人像をご紹介します。
2010年に有力な証言
有力な証言がされたのは、ウェブサイトへのリンクを収集し、コメントをつけることのできるredditというソーシャルブックマークサイトでした。ハンドルネームをボウイ・J・ポーグとするプログラマーの証言の体験談がマックス・ヘッドルーム事件の真犯人についてと思われる内容だったのです。
事件発生当時オタク少年だったボウイ・J・ボーグは地元のハッカーが集う集会に参加していたと言います。そしてその集会で出会ったKとJという兄弟との出会いを鮮明に覚えているそうです。
犯人はKとJの兄弟か!?
兄であるKは社交的な性格で、電話会社で働いており、弟のJは色眼鏡をかけた変わった格好をしており内向的ですが、電波や電子工学に関する知識た大変豊富だったと語られます。
マックス・ヘッドルーム事件が起こった1987年11月22日にそのKとJ宅でハッカーの集会が行われ、その時にJの周りの大勢の人が集まっており、後でKに事情を聞くと、「今夜遅くまで11チャンネルを見ておくんだよ。」と告げられたそうです。
そしてその晩11チャンネルのドクター・フー放送中の電波ジャック事件を見たボウイ・J・ボーグは、その事件の犯人がKとJであることを確信しました。
マックス・ヘッドルーム事件は未解決のまま
マックス・ヘッドルーム事件の犯人はKとJなのでしょうか。そして、ボウイ・J・ボーグの証言は本当なのでしょうか。インターネット上の書き込みなのでその証言が本当なのか、KとJは実在するのか、わかりませんが、事件より23年経って初めての有力な証言に世間は驚きました。
事件当時13歳で、実際にマックス・ヘッドルーム事件を視聴していたクラシック・シカゴテレビ・ミュージアムの創立者であるリック・クライン氏は、現在もWEB上でマックス・ヘッドルーム事件の犯人捜しを続けています。
リック・クライン氏は、例えボウイ・J・ボーグの証言がネット上の不確かな情報だとしても、より有力な証言がどこかから引き出されるかもしれない、と新たな証言を大歓迎しました。
未だに事件に対する関心は大きい
被害が少なかったということでFBIによる大々的な捜査はされなかったマックス・ヘッドルーム事件ですが、多くの人を混乱させたこの事件に対する関心は未だとても大きく、話題性があります。
リック・クライン氏がマックス・ヘッドルーム事件の録画をyoutubeにアップロードしたところ、200万回以上の再生数をはじきだし、事件をリアルタイムで見ていなかった人も大きな関心を寄せるものであることが証明されました。
血の流れない未解決事件
アメリカの大規模な未解決事件と聞くと殺人事件を思い浮かべる人も多いと思いますが、マックス・ヘッドルーム事件は大規模で多くの人が巻き込まれた事件であっても人が死ぬことはない、血の流れない事件でした。
当時の混乱や放送局の責任問題はすごいものであったかもしれませんが、現在、マックス・ヘッドルーム事件の動画を見るとシュールで面白く感じてしまう部分もあります。
未解決事件にはこういう種類のものもあることを知っていただけると幸いです。