ベンチマークの意味とは?企業や仕事での使い方を紹介!
ベンチマークとは何かについて知っている人はあまりいないかもしれません。ベンチマークとは何なのか?ベンチマークを理解すると何の役に立つのか?ベンチマークを通じた目標の設定や仕事の評価など、ベンチマークについて紹介していきます。
目次
意味や使い方の幅が広い?ベンチマークとは?
ベンチマークという言葉を聞いたことはありますか?普通に生活していてもあまり馴染みのないワードではないでしょうか。
私たちの日常生活というよりも、企業などビジネスの面においてベンチマークはよく用いられています。ベンチマークとは、仕事において「比較・目標・測定」に役立つツールなのです。
本稿ではそのベンチマークについて分かりやすくポイントをまとめていきたいと思います。ベンチマークをより理解することで、スキルアップに繋がります。
元は測量の分野で使われていたベンチマーク
建物を作る際には、決められた場所に築いていく必要があります。建設予定地から数メートルずれた状態で構築を始めてしまうと、設計と完成に大きな差が生まれてしまいます。この「ズレ」を生まないようにするためにも、測定には注意が欠かせません。
ベンチマークすることは、測定において大きな意味を持ちます。あらかじめ決められた地点をマークしておき、鋲を打ち込むなどして目印とします。この動かない測定のマークこそが、「ベンチマーク」なのです。
ベンチマークの元々の意味とは、このように測定において用いる基準点のことを指していました。現在では、測定に限らず、様々な場面でベンチマークは用いられています。
ベンチマークとは?分野ごとに意味が違う?
建築物を作るにあたって必要な基準点という意味を、ベンチマークは持っています。では測定以外の仕事の場面ではベンチマークはどういった意味を持っているのでしょうか。
大まかに5つの仕事分野でベンチマークの使い方を見ていきましょう。ベンチマークは、採用する企業・仕事・評価の仕方などによって活用方法は様々なのです。
日常生活でベンチマークに似たものは?
私たちの普段の生活で、ベンチマークに似た要素をもつものはあるでしょうか?
ベンチマークを基準点や目標点という意味から考えてみましょう。何か行動を始めるにあたって、成功か失敗かを決めるには基準を設ける必要があります。この基準は、事あるごとに動いてはいけません。正確な評価を害することになってしまうためです。
数週間後に控えている学力測定のテストで、自分の中での目標を定めたことのある人は多いと思います。この期末テストにおける目標づけというのも、ベンチマークと似た要素があると言えます。
学力テストとベンチマーク?
学力測定テストの多くは、60点くらいが平均になるように作られるとされています。学力に自信のある生徒であれば、80点くらいを、あまり自信のない生徒であれば平均ラインの60点を目標に設定することでしょう。
一旦決めたこの目標を、「来週試験だけど、あまり勉強できてないから10点下げようかな」と下げてしまっては、目標の意味がありません。ベンチマークするときに、この基準点・目標とした点は簡単に動かしてはいけないのです。
測量・測定などの仕事分野における専門用語として思われがちなベンチマークですが、実は日常生活でも、目標・基準を定めるという点では割と身近な考えと言えるでしょう。
ベンチマークを日常生活で役立てる
ベンチマークは、目標の設定・適切な評価に役立つという特徴を持っています。「目標と評価」というと企業や役所での仕事ばかりに目が行きがちですが、ベンチマークとは日常生活・趣味の世界でも大いに活用できる方法でもあります。
ベンチマークをどういった方向に生かしていけばいいのか、ベンチマークの詳細についてここからは触れていきたいと思います。
ベンチマークとは①投資での「指標」
投資の方法の1つとして、例えば「投資信託」があります。顧客から少額ずつ資金を集め、大きなプールとした上でまとめて運用するのが投資信託です。投資の世界でもベンチマークは用いられています。
ある投資信託で、年間8%の運用益を生むことに成功した場合を考えてみましょう。この8%という数字は、成功なのか、失敗なのか、どちらでしょうか?100万円を運用していた場合、8%の利益ということは108万円に増やすことができたということになります。
ある人は「8万円も儲かったなら成功だ」と考えますし、一方で「110万円くらいにはして欲しかったのに」と考える人もいるでしょう。投資の世界では、何%運用益を出したと言っても、基準を設けない限り、それが成功か失敗かは判断できません。
投資の評価には「基準との比較」が欠かせない
8%の運用益が結果として出た場合に、成功か失敗かを決めるには基準との比較が必要です。この基準こそがベンチマークです。
企業の投資担当グループは、投資をするにあたって何%の運用益を出すべきかの指標=ベンチマークを作っておきます。そして1年間(場合によっては数年間)運用をして、その結果とベンチマークを照らし合わせて、上手くいたかどうかを評価するのです。
企業の投資マネージャーも、仕事として投資をしています。ベンチマークすることを怠っていた場合、彼らの運用成績を正しく評価することができません。このことからも、投資においてはベンチマークする必要があるのです。
投資におけるベンチマークの使い方
ベンチマークすることの必要性を書いていきました。投資におけるベンチマークは、投資活動が終わったあとの評価にのみ使うというわけではありません。
投資とは、利益と損失との戦いです。毎日数字が揺れ動き、数字を完全にコントロールするのはプロでも困難です。期間中に投資担当者が「次はどう行動すべきか」と迷うことも少なくありません。
その際の道筋として、ベンチマークがあります。「運用益8%」を基準として掲げていたとして、今の利益が6%だった場合、もう少し増やそうという姿勢をとることができます。一方で10%既に設けている場合、より安全姿勢での行動をとることができます。
ベンチマークすることで、行動の指針としても使い方が見えてくるわけです。もしベンチマークを決めていなかったとしたら、無制限に利益を追いかけ続け、元本を割ってしまうということにもなりかねません。
リスクの大きな投資の世界でなるべく低リスクで臨むためにも、ベンチマークすることは欠かせないと言えるでしょう。ベンチマークを適切に定め、それに沿って運用することが投資担当者には必要とされているのです。
ベンチマークとは②測量での「水準点」
重なりますが、元々の由来である測量の仕事におけるベンチマークに改めて触れておきましょう。
大きなものをつくるときには、絶対に動かない「土台」が必要です。この土台=基準点がしっかりしていなければ、上にものを重ねていく際に揺れ動いてしまい、不安定な状態になってしまいます。
測量では、細すぎるくらいに正確に測ることが大切です。ちょっとしたズレが、プロジェクトを根本から崩してしまうことにもなりかねないからです。
ベンチマークすることは測量でかなり大切
あなたの住んでいる家や、日頃利用する商業施設も、正確な測定のもとで組み立てられた建物です。測量の仕事において、ベンチマークは欠かすことのできないものと言えるでしょう。
ベンチマークすることと、良い仕事はセットであると考えても良いかもしれません。デタラメな目標・基準のもとでは成果も不安定になってしまうからです。
ベンチマークとは③自動車の「基準」
自動車業界の仕事においては、「開発する自動車の基準」という意味でベンチマークするようです。既に存在している自動車のモデルそのものを目標物として意識し、それを参考に次の開発に繋げるという意味です。
自動車が生まれてから既に長い歴史が経っていますが、自動車の歴史はまさに新製品の開発の連続と言えます。市場でブームになったモデルが、その後永久にブームを保ったということは滅多にありません。
どの車が人気なのかは流行で大きく変化し、その度に自動車のベンチマークも変化してきました。新しいモデルが生まれ、売れるたびに、ベンチマークも移り変わっていくのです。
自動車をベンチマークすることで次の開発に繋げる
新製品を開発するにあたって、全くのゼロから新しいものを生み出すのは困難です。殆どの場合、既にあるものを応用したり、一部のアイデアを独自に組み替えたりしてオリジナルのものを作っていきます。
自動車の新モデル開発の仕事であれば、既に存在しているモデルを分解して分析することは多々あります。ベンチマークである車を徹底的に研究し、自分たちの次の開発へと繋げていくのです。
人気のものをひたすら研究し、次の流行を自分たちが勝ち取る。そのためにもベンチマークすることが必要なのです。自動車開発のベンチマークは、熾烈な競争の証拠と言えるでしょう。
ベンチマークとは④IT業界での「目安」
今日におけるITの進化は凄まじいものがありますが、このITの仕事においてもベンチマークは用いられています。
コンピュータのハード・ソフトがどれくらいの処理性能を持っているのかを測定するために行われるテストがあるのですが、このテストのことを「ベンチマークテスト」と呼びます。基準を評価するテスト、という意味と考えて良いでしょう。
このベンチマークテストの結果は、今後の仕事における基準として用いられるため、厳正に行われる必要があります。この評価がズレてしまうと、そのコンピュータを用いる活動で支障が生じかねません。
繊細なコンピュータだからこそベンチマークする必要がある
測量においては、正確な基準点を定めることがその後の建築・構築においてとても大切でした。ITの仕事も、これと似たところがあります。
大きな建築物は社会のインフラとして欠かせないものですが、ITのシステムも今日では劣らず大切なインフラとして捉えられています。
正確で円滑なITシステムを稼働させるためにも、基準と評価の軸となるベンチマークテストはとても大切なのです。
ベンチマークとは⑤企業マーケティング上での「目標値」
日常生活でよく用いられる「マーケティング」ですが、なんとなく意味が曖昧で取っ付きにくい印象を持っているかもしれません。
企業のマーケティング活動にも、実はベンチマーク(ベンチマーキング)が用いられているのです。この場合はどういった意味かというと、「他の企業のいいところを学ぶ」ということです。
「より良いものから学ぶ」ベンチマーク
突出した成績を残している企業や製品をベンチマーク・評価基準として意識し、「自分たちがそれを越えるには何をすればいいのか」をベンチマーク対象から学び取ろうとする行動です。
マーケティングという言葉でなくても、私たちは常日頃からこれに近い活動をしています。例えばスポーツ。身近にいる上手いプレイヤーからスキル・テクニックを盗もうと観察するはずです。
更に受験の世界では、良い成績を残している同級生がどんな勉強法をしているのかが気になり、それを真似してみようと思うかもしれません。このように、「より良いもの・人から学ぶ」のがマーケティングにおけるベンチマークの意味です。
ベンチマークは「良いもの」との比較に必要
まとめると、ベンチマークの使い方は、「今の自分よりも優れた人・ものからより良いものを学び取るということ」と言えます。
この使い方を理解しておくことによって、少しずつでも先のステップに進むことができます。ベンチマークとして企業や製品を設定しておくことで、競争に有益な使い方を見出すことができるとも言えるでしょう。
個人・企業に関わらず、ベンチマークの使い方を押さえておくことは己のスキルアップに繋がるのです。
ベンチマークの活用方法・メリット
測定や企業マーケティングなど、5つの分野でマーケティングの使い方について紹介してきました。いずれも、ベンチマークは「基準」を定め活用するために行われる、というのが主な要素です。
それでは改めて、ベンチマークすることによってどういったメリットがあるのか?について見ていきましょう。それに合わせてベンチマークの活用方法と、曖昧なベンチマークを作ることによる弊害にも触れていきます。
①ベンチマークによって目標を明確化する
投資におけるベンチマーク活用を思い出してください。運用益をたくさん上げたとしても、その数字が成功か失敗かを判断するには、事前に目標=ベンチマークを決めておく必要がありました。
このように、何かの成果を上げるために努力するにあたっては、それに伴って適切なベンチマークを掲げておかなければなりません。
ベンチマークすることによって、その目標をつくることができます。成果を出したら、その目標と比較することで適切な評価が可能となります。これがベンチマークの使い方で大切な点です。
ベンチマークによる目標がないと比較ができない!
何かに向けて努力するにあたって、参考とすべき目標を掲げておかないと、どのように動けばいいのかがわかりません。たくさんの人が集まった企業では尚の事、目標を持っておく必要があります。
現状との比較・競争する相手との比較があって初めて、企業は努力をし続けることができます。企業の競争においてベンチマークは欠かせないと言えるでしょう。
②ベンチマークによって土台を固定できる
ベンチマークは本来、測定の場で利用されてきました。何か大きなものを作るにあたって、しっかりとした土台を組み上げるためにベンチマークが必要とされてきたのです。
これまで見てきたように、ベンチマークが効果を発揮するのは「形あるもの」をつくる場合だけではありません。作戦や考え方など「無形のもの」を練るにあたってもベンチマークはとても便利です。
自分はこれからどういった行動をとるべきなのかを、ベンチマークを通じて整理し、行動の土台を作ることによって判断することができます。
しっかりした土台があれば行動に迷わない!
建築の仕事で、正確な測定をするのは何のためでしょうか?それは、次の行動に迷わないためです。きちんと順序建てられたプロセスで進めるにあたっては、磐石な測定としっかりした土台が必要です。
勉強や知的労働においても、それは同じです。ベンチマークという目標・基準を作っておけばそれに向かって努力することができます。ベンチマーク・目標のない作業は、方向性を間違えると時間の浪費にもなりかねません。
見当違いな方向に努力してしまったり、何をすればいいのかわからず迷うのは、企業において致命的です。企業がベンチマークを重視してきたのは、その大切さを理解していたからです。私たちも活用できるところでベンチマークを利用してみましょう。
③ベンチマークを通じて「模倣」から学べる
自動車でのベンチマークの使い方を思い出してください。ベンチマークすることによって、既存のモデルから参考になる技術・構造を学ぶことが出来るという内容でした。
企業は競争に勝つための新製品・新事業を欲しがっています。それを作るには、既存のものを徹底的に分析する方が楽だということを知っているので、ベンチマークを活用しているのです。
模倣するというのは「パクる」という言葉と意味的には同じですが、必ずしも悪いわけではありません。中身を完全に盗むのは問題がありますが、そのベンチマークからアイデアの一部やある技術を参考にするのであれば、それは技術の発展に繋がります。
足りないものを「比較」で明らかにする
相手が強いのは、自分より優れているものを備えているからです。ベンチマークを「模倣」し「比較」することによって、その足りないものを明らかにすることができます。
その足りないものを、ベンチマークとなる既存製品を一切参考にしなかった場合どうなるでしょうか?何もない砂漠のような環境で、解決策を見つけ出すのは困難なはずです。ベンチマークの存在は、問題解決のヒントになり得るため、比較しているのです。
比較して今の時点では劣っていても、問題点をベンチマークの製品から明らかにし、解決していけば、市場で勝つ事ができる。企業はこれを目指してベンチマーク製品との比較を続けているのです。
④ベンチマークを有効活用するには?
ベンチマークの使い方の重要性を理解していても、実際にベンチマークを活用できないと意味がありません。
ベンチマークには、「基準としてのベンチマーク」「目標としてのベンチマーク」など、ニュアンス次第で色々な活用法があります。凝り固まった使い方ではなく、どのように役立てたいかによって、それぞれ有効な使い方があるのです。
2つの例を上げて、ベンチマークの使い方の例を見ていきましょう。
例①ダイエットとベンチマーク
女性にとって、より良いスタイルを目指すのは永遠のテーマ。ダイエットはそれを実現するための手段として大切です。しかしダイエットも、ベンチマークなしでは辛い努力となりかねません。
漠然と「たくさん痩せたい」「とりあえず10キロ」と無謀なベンチマークの目標を掲げてしまうと、自分の労力に見合わない努力をすることになってしまい、苦しんでしまいます。
ベンチマークを作る際には、冷静に現状を分析することが必要です。無謀な領域のベンチマーク設定は、計画倒れに終わってしまうことがあります。
例②英語学習とベンチマーク
英語力を上げたいと思う人は多いはず。学生・社会人の英語力を評価する指標としては、英検・TOEIC・TOEFLなどが考えられます。これをベンチマークとして考えることもできます。
TOEICは990までのスコアで細かくベンチマークが設定されているため、受験者一人一人が自分にあった目標設定が可能であり、学習意欲の向上に役立っています。
もしこのベンチマークがなかったらどうなるでしょうか。漠然と「ネイティブ並に話したい」「英字新聞を読めるようにしたい」と願っても、どう勉強に取り組むべきかわかりません。ベンチマークは勉強の方向性を定めるのにも役立つのです。
⑤曖昧なベンチマークには注意!
ベンチマークの使い方を知っておくことで、モチベーションを高めたり正確な作業を行うための助けにすることができます。
しかし、とりあえずベンチマーク=基準を作っておけばいいのかというとそうではありません。自分の力量・目指すべきラインに沿った適切なベンチマークを設けないと、途中で諦めてしまうことにもなりかねません。
「目標をつくることが目標」に終わらないためにも、適切なベンチマークを作りましょう。そして、そのベンチマークの使い方を自分なりに考え、作業に役立てましょう。
ベンチマークは「評価」と「比較」がポイント!
最後に整理してみましょう。ベンチマークの使い方は色々ありますが、まとめると、ベンチマークによって「評価」したり「比較」をするための物差しであると考えられます。
企業活動や個人の努力をより良いものにするために、比較と適切な評価を行うことは欠かせません。学生・社会人いずれであっても、目標を立てて活用するという点ではベンチマークは役立つと言えます。
もし興味を持ったら、ベンチマークを自分なりに作り、そのベンチマークを活用してスキル向上に繋げてみてはどうでしょうか。