方言「ばり」の意味!地域別の使い方|関西/九州/東北/愛媛
「方言」を使ったことがありますか?聞いたことは?戸惑ったことは、ありませんか?同じ言葉でも使い方や意味が違う、なんて面白いことが起こるのが方言です。今回は、方言の中でも「ばり」という言葉に注目します。「ばり」の成り立ちやそれぞれの意味を見ていきましょう。
目次
可愛い方言「ばり」を使っている地域が知りたい
「ばり」という方言を聞いたことがあるでしょうか?
聞いたことがある人は、ある特定の意味や使い方を思い起こしたのでは?
実は、「ばり」という方言は地域によって意味や使い方は様々なのです。今回は、そんな響きが可愛い「ばり」という方言の奥深い中身を知って、使い方までマスターしちゃいましょう。
「方言」ってややこしい!
皆さん、「英語」という教科に対してどんな印象を持って勉強されていたでしょうか?
「方言」というのは皮肉で「外国語」と言われることもあるほど、人によっては難解に感じるものです。
では、そもそも「方言」は、なぜ同じ日本語なのに意味や使い方が地域によって変化するのでしょうか?
そもそも「方言」って何?
「方言」とは、同じ意味を持つ言葉であっても地域によって様々な変遷を遂げた言葉のことを言います。
それはひとえに「言葉」と言っても、音韻であったり語尾であったり、果ては使い方にまで及びます。
「方言」は世界中にあり、各国で規範的な言語として認められたものを「標準語」と言います。
同じ国なのになぜ違う言葉を使うの?
では、なぜ皆が標準語を使用しないのか?皆が同じ言葉を使えば、私達も地域差に悩まされることはありませんよね。
それは、人が住む場所をどんどんと広げていったからです。野を超え山を超え、時代が変わると共に人間は簡単にはお互いが交流できないほど住環境として開拓を進めていきました。
その結果、東北地方や関東地方・関西地方・九州地方などその土地土地で新しい言葉が生まれていったのです。
学者をも魅了する「方言」の奥深さ
「方言周圏論」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。これは、柳田国男という民俗学者が発表した考え方で、「言語は、ある一点を基準にしてドーナツ状に広がり変遷していく」というものです。
実は「方言」とは、むやみやたらに作られた造語というわけではないのです。
昔の日本の中心は京都でした。そこから言葉がドーナツ状に広がり変わっていったので、離れた場所でも同じ言葉を使っていることも起こるという魅力が、「方言」にはあるのです。
方言「ばり」の意味と由来
ではここから、今回の本題である「ばり」という方言について触れていきましょう。
聞き慣れた方も初めて聞くという方も、その正しい意味や由来については知っているでしょうか?
方言「ばり」の意味
「ばり」という方言は、地域によって実に様々な意味を持ちます。実は、「これが正解」というものはありません。
ですが、一番メジャーな意味として知られているのは「すごい・とても」という意味です。
方言「ばり」の由来
方言「ばり」は、発祥としてはそんなに古いものではないと言われています。
言葉は日々新しいものが生まれてきていますが、その主な理由に挙げられるのが「若者言葉」です。
方言「ばり」も例外ではありません。一説には、若者が日本語に混ぜて使い始めた英語の「very」が訛ったものが多いと言われています。
方言「ばり」神戸弁での意味と使い方
では、ここからはより限定的に地域を絞って「ばり」という方言への理解を深めていきましょう。
さきほどご説明したとおり、「方言」というのは関西の京都から広がっていったという風に考えられているので、まずは関西地方にある兵庫県は神戸から兵庫県民が慣れ親しんでいる方言「神戸弁」と共に見ていきます。
神戸弁での方言「ばり」の意味
兵庫の中には、「神戸弁」というものが存在します。これは俗に言う「神戸っ子」が使うもので、関西弁の中でもいわゆる「関西人」が使うものとは違い少し間延びした語尾などが特徴です。
その兵庫県民は神戸っ子が使う「ばり」の意味がこちら。
方言 | 意味 |
ばり | とても・めっちゃ |
兵庫県民の使う「ばり」は全国的に見て一番メジャーな意味であり、この意味の「ばり」は関西発祥とも言われているので兵庫県民にとっては方言という意識は余りありません。
神戸弁での方言「ばり」の使い方《例文紹介》
では、実際に兵庫県民たちはこの「ばり」という方言をどのように使うのか、例文を交えて見てみましょう。
例文 | 訳 |
ばり雨降っとぉよー。 | とても雨が降っています。 |
ばりこまいこと言うとーね。 | めっちゃ細かいことを言ってますね。 |
このように、神戸においては「ばり」は文頭に置いて使われます。言いたいことを強調する際に、形容詞や動詞に対して使われます。
兵庫県民にとって「ばり」は親しみ深い言葉のようで、兵庫の若者が集まる場所に行くとそこかしこで聞くことが出来ます。
方言「ばり」の大阪弁での意味と使い方
では次に、関西の中で兵庫のお隣の大阪を見てみましょう。大阪にはご存知の方も多いかと思いますが、地域で広く使われている方言に「関西弁」から派生した「大阪弁」という方言があります。
大阪に住んでいない人は、大阪弁を聞いた時「きつい」と思ったことはありませんか?
大阪弁での方言「ばり」の意味
大阪弁は神戸弁のベースになっているとも言われていますが、語尾には切れがあり、それがキツく聞こえるという方も多いのが特徴です。
方言 | 意味 |
ばり | とても・めっちゃ |
意味は神戸弁と同じです。主に30代までの使用率が高い若者言葉です。
大阪弁での方言「ばり」の使い方《例文紹介》
同じ関西地方でも大阪と神戸は使い方が違うのか、例文を見ていきましょう。
例文 | 訳 |
ばりありえへん! | とてもありえないことです。 |
特に使い方の違いはありませんが、大阪では兵庫と比べると頻繁に使われる方言ではなく興奮しているときや強調の度合いが強い時に使われます。
方言「ばり」の博多弁での意味と使い方
では、関西地方から少し離れた九州地方は福岡の博多地域の場合を見てみましょう。
博多弁での方言「ばり」の意味
博多とは九州は福岡の土地ですが、皆さんは九州ラーメンで耳にすることも多いのではないかと思います。
今ではだいぶ全国区になりましたが、九州ラーメンの硬さを表す「バリカタ」という言葉を聞いたことはないでしょうか?
では、その意味を見てみましょう。
方言 | 意味 |
ばり | とても・大変 |
博多弁での方言「ばり」の使い方《例文紹介》
意味は関西地方の兵庫や大阪と大差なかった九州博多弁での「ばり」ですが、その特徴は使い方にあります。
ではまず、その方言の使い方の例文を見てみましょう。
例文 | 訳 |
体調ばばりわるばい。 | 体調がとても悪いです。 |
お気づきでしょうか?博多では「ばり」を使う際、強調した形容詞まで含めた「略語」のように使うという特徴があります。前述の「バリカタ」でも分かるように、「ばり」に続くのは2文字が一般的なようです。
方言「ばり」の長崎弁での意味と使い方
では、同じ九州地方であれば同じような使い方をするのでしょうか?
例として同じ九州地方の長崎を挙げてみようと思います。
長崎弁での方言「ばり」の意味
まずは意味から確かめてみようと思います。
長崎で使われる「ばり」の意味はこちら。
方言 | 意味 |
ばり | とても・めっちゃ |
やはりというか、意味は福岡と大差ないようです。
長崎弁での方言「ばり」の使い方《例文紹介》
では、長崎も九州地方の同士博多と同じように特徴的な使い方をするのでしょうか?
例文 | 訳 |
ばりやぜかっさー! | とてもうっとおしいですね。 |
どうやら、長崎は博多と違って「後に2文字の形容詞を付けて略語のように使う」という傾向はあまりなく、どちらかというと関西地方の方言と同じ使い方のようです。
ですが、長崎の「ばり」は博多辺りの地域から来たという説もありますので、そういう使い方をする人がいるのも確かです。
方言「ばり」の広島弁での意味と使い方
さて、ここまで関西・九州と見てきましたが、ここでそのふたつに挟まれている中国地方に目を向けてみましょう。
ここでは広島弁に触れていこうと思います。
広島弁での方言「ばり」の意味
広島弁における意味には次のものがあります。
方言 | 意味 |
ばり | とても・めっちゃ |
意味は、関西や九州と大差はないです。
ですが、広島弁での「ばり」には「段階がある」という特徴があります。段階の低い順に「ぶち」→「ぶり」→「ばり」というのを見て分かるように、「ばり」は相当強調される場合に使用されます。
広島弁での方言「ばり」の使い方《例文紹介》
例文 | 訳 |
アイツばりはぶてとるわ。 | あの人はとても拗ねています。 |
さて、今回は例文からご覧いただきましたが、ご覧になってどう思いましたか?
「ばり」には「とても」という意味があるものが多かったですが、広島弁においてはこの「とても」が「とんでもなく」というレベルの強さを持ちます。
方言「ばり」の意味と使い方【四国地方】
では、挟まれているもう一つの地域、四国地方も見てみましょう。「京言葉」という言葉を知っているでしょうか?これは、京都で近年ではあまり使われなくなった古い方言の中で生き残っている言葉を指します。
方言は徐々に複雑な変化を遂げて各方面に散らばっていきます。冒頭で説明した「言葉がドーナツ状に広がっていく中で微妙に変化を遂げる」という現象が、ひとつの方言の中で更に派生していくというイメージです。
これが、四国でも起こっているのです。その中でも一番といえるほど特徴的な愛媛の方言で見ていきます。
伊予弁での方言「ばり」の意味
四国地方にある愛媛では、「伊予弁」という方言があり、この伊予弁を大きく分けると「南予」「中予」「北予」という3つに分かれます。
「南予」は九州地方の影響を受けて変化し、「中予」は四国地方内で変化し、「北予」は近畿地方の影響を受けて変化したと言われており、一口で「愛媛の伊予弁」といっても実に複雑な方言になっています。
この愛媛は伊予弁におけるばりの意味は以下の通りで、
方言 | 意味 |
ばり | ~にでも・~にも |
他の地方では見られなかった意味を持っています。
伊予弁での方言「ばり」の使い方《例文紹介》
では、この他とは違う愛媛の「ばり」の使い方を見ていきましょう。
例文 | 訳 |
誰ばり言われんよ。 | 誰にも言ってはいけませんよ。 |
このように、今までの「ばり」が形容詞の後につく事が多かったのに対し、愛媛での「ばり」は代名詞につくことが多いのです。
強調する言葉ではないので、愛媛での「ばり」はより日常的に使われている傾向があり、愛媛においては年配の方々も使う言葉となっています。
伊予弁で「とても」は?
ここまで「ばり」という方言について見てきて、「ばり」の意味が「とても」ではなかったのは愛媛が初めてですね。
では、愛媛では「とても」という時ににどんな言葉が使われているのでしょうか?それが、こちらになります。
例文 | 訳 |
ほーとーおっとろしいわ! | とても驚きました! |
これは「相当」という言葉から派生してと言われており、意味や使い方としては関西や九州の「ばり」と似通っています。
愛媛には固有名詞やイントネーションもかなり特徴的なものが多いので、その一環と言えるかもしれません。
方言「ばり」の意味と使い方【東北地方】
今までは西日本を見てきましたが、「ばり」という方言は遠く離れた東北地方でも使われているようです。
東北地方は単語としての難解さというよりも、そのイントネーションと濁点の使い方に特徴があります。
西日本と東北地方では遠く離れているのに同じ言葉が使われているなんて言葉のロマンを感じますが、ではその意味や使い方はどうなのでしょうか?
仙台弁での方言「ばり」の意味
まずは、意味を最初に見ていきましょう。
方言 | 意味 |
ばり | ~ばかり、~だけ |
「ばり」は東北地方は宮城県仙台における方言「仙台弁」で使われていて、その意味は「~ばかり」が語源で省略されたものだと言われており、西日本の各地方でご紹介してきた「ばり」と東北地方の「ばり」はそもそもベースから違うのです。
仙台弁での方言「ばり」の使い方《例文紹介》
仙台弁での「ばり」の使い方は
例文 | 訳 |
おだっでばりいてごしゃがれるど。 | ふざけてばかりいると怒られますよ。 |
ここでのポイントは、今までのように特定の品詞にだけつくのではなく名詞や動詞など文章として成り立っていれば何にでも付けられるということです。この点でも、他の「ばり」とはまた違う方言であることが分かります。
仙台弁で「とても」は?
愛媛の伊予弁で見たように、東北仙台弁においても「とても」にあたる方言があるのか見ていきましょう。
東北の方言は濁点が多いことで知られており、仙台も例に漏れません。仙台弁で「とても」を表す方言の使い方は以下です。
例文 | 訳 |
いぎなりめんこい子だなや。 | とてもかわいい子ですね。 |
このように、東北は宮城において「とても」は「いぎなり」と言いますが、これは「いきなり」という言葉から来ていると言われています。
「いきなり」という言葉には「突然」などの意味がありますが、東北ではこの「突然」の突発的な勢いが残って「いきなり」と言われているようです。
方言はその土地の歴史
ここまで方言について触れてきましたが、いかがでしたか?
日本という世界的に見れば狭い国の中でもこれだけの違いが生まれる「方言」は、ある意味外国語よりも魔物じみていますが一部でも覚えれば話題のきっかけにもなりますし、何より「方言女子」はモテます。
ある大学教授の言葉では、「方言は親交を深めるための道具」というものまであります。こんなにかわいい言葉たち、使わなければ損ですよね。