2020年03月13日公開
2020年03月13日更新
名前に使えない漢字一覧!人名に相応しくない漢字とは?
名前に使える漢字は法律で定められています。また、名前として相応しくない場合は出生届を受理してもらえない場合もあります。子供の名前に使えない漢字は、意外とたくさんあるのです。具体例を挙げて、名前に使えない漢字や相応しくない漢字についてご説明します。

目次
子供の名前に使える漢字は決まっています
日本には戸籍という制度があり、夫婦及び子を単位として「個人の氏名、生年月日、父母との続柄や配偶者関係など」が管理されています。そのため、子供が生まれた場合、出産日を含めて14日以内に出生届を出さなければなりません。
通常、出生届には生まれた子供の氏名を記載します。名前に使える文字は「平仮名、片仮名、常用漢字、人名用漢字」であると、法律で定められています。ただし仮名の場合、変体仮名は使えません。
戸籍課の職員が出生届の内容をチェックし、不備があると受理されません。名前に使えない漢字があった場合も、受理してもらえません。また名前に使える漢字でも、名前として相応しくないと判断された場合は拒否されるケースもあります。
逆に、書き間違いにより望んでいない略字や旧字体で登録されてしまうこともあります。異体字として登録されている略字や旧字体もあるからです。漢字については、常用漢字表と戸籍法施行規則別表第二を確認し、字体も含めて名前を検討する必要があります。
なお、戸籍法施行規則別表第二に納められている漢字は、人名用漢字と呼ばれています。ここでも、今後は人名用漢字と表記します。
名前に使えない漢字は意外と多い!
諸橋轍次(もろはしてつじ)氏という漢字の研究者が「大漢和辞典」を編集されました。巻1が発行されたのが1955年(昭和30年)で、全10巻の刊行が完結したのは1977年(昭和52年)という超大作で、そこに納められている漢字の数は約5万字です。
1994年には、約8万5千字が収納された「中華字海」という辞典が中国で出版されました。さらにコンピュータの世界では2001年に「超漢字4」という多文字を扱うBTRON仕様のOSが出現し、約18万字を扱っていました。
そこから考えると、名前に使える漢字の数はとても少ないことが分かります。しかも、「子の福祉を害するような名前を付けることは、命名権の濫用である」とされ、名前として認められないことまで考慮すると、名前に使えない漢字はかなり多いことになります。
名前に使えない漢字とは?
では、まず法律に定められている範囲での名前に使えない漢字の定義を確認していきましょう。
常用平易な文字でない漢字
戸籍法には「子の名には、常用平易な文字を用いなければならない」と定められています。そして「常用平易な文字の範囲は、法務省令でこれを定める」とも書かれています。この定められている範囲が、平仮名、片仮名、常用漢字、人名用漢字なのです。
つまり、この範囲から逸脱している文字を名前として使うことはできません。これが子供に名前を付ける際の大原則となります。
異体字登録されていない略字や旧字体
言葉が時代とともに変わっていくように、漢字も時と共に変わっていきます。漢字の場合、意味と音がほぼ同じで字体のみ変化したものがあり、これを異体字と呼びます。異体字は、放っておくと時間の経過と共に再現なく増えていきます。
すべての異体字を認めてしまうと、現実的には困ったことになってしまいますので、政府が「正字」として認めた字体だけを名前に使えるように定めた結果が、前述の名前に使える漢字なのです。
人名用漢字の中には一部の異体字(略字や旧字体など)が登録されています。これらの異体字を名前に使うことはできますが、それ以外の異体字は、名前に使えない漢字となります。常用漢字や人名用漢字は、時々改訂されますので注意が必要です。
苗字では使えるが名前では使えない漢字
実は、苗字と名前とでは使える漢字の数が異なります。苗字は先祖代々受け継がれているので、常用平易な文字に限定できないのは仕方がないことだと言えるでしょう。有名な牛丼屋に使われている吉(つちヨシ:口の上が土)の字もその一例です。
それでも、戸籍の電産化に伴い、戸籍統一文字(漢字5万5271字、非漢字773字)が整備され、使える漢字が制限されました。名前に使える漢字に加え、大漢和辞典などに掲載されている正字と俗字をベースに構成されています。
名前に使えない漢字一覧
では、具体的に名前に使えない漢字を見ていくことにしましょう。
名前に使えない漢字はどれくらいある?
名前に使える漢字の数は、常用漢字が2136字(2010年改訂)と人名用漢字が862字(2015年改訂)の合わせて2998字です。諸橋轍次氏が編集した大漢和辞典を母数だと考えても、名前に使えない漢字は4万字以上あることになります。
名前に使わない方が良い漢字まで含めるととてつもない数になりますので、ここでは、ごく代表的なものを例示することにします。
名前に使えない漢字の例
下記のような名前は女の子向けにつけたくなりますが、次の漢字は使えません。
あい:瞹・僾・噯・璦/あき:穐/あざみ:薊/あずき:荅/あかざ:藜/あや:綵
また、意外に思う方も多いかもしれませんが、下記の漢字も使えません。
き:杞/きょう:夾/けい:珪/なつめ:棗/はる:玻璃(水晶を意味しますが「玻」が使えません)/ばら:薔薇(両方の漢字とも使えません)/めい:茗/りょう:繚
名前に使わないほうがいい漢字の特徴
命名権の濫用が適用されたことで印象的なのは、1990年代に騒がれた「悪魔ちゃん」ではないでしょうか。「悪」も「魔」も、漢字としては名前に使える漢字です。しかし、前述の「命名権の濫用」の観点から受理されず、一時世間を騒がせました。
このように、漢字としては名前に使えるとされているものの、実際には名前に使えない、または使わない方が良い漢字にはどのようなものがあるのかについて、考えてみましょう。
戦闘や争いを象徴する漢字
多くの人は、戦争や争い事を好みません。そのため、子供の名前にも戦闘や争い事を象徴するような漢字を使うのは避けるべきでしょう。特に男の子には、元気で強い子に育って欲しいという希望を込めたいかもしれませんが、よく考えた方が良いでしょう。
次に挙げるのは、いずれも名前に使える漢字ですが、避けた方が良い、または組み合わせる漢字に気をつけるべき漢字だと言えるでしょう。
戦・闘・軍・兵・銃・刀・刃・争・暴
縁起の悪い漢字
生まれてくる子には、幸せな一生を過ごしてもらいたいと願うものです。そのため、名前に使う漢字にも、縁起の悪いものは避けた方が良いでしょう。具体的に挙げると次のような漢字です。
祟・慍・幽・霊・呪・縛・死・亜・了・終・厄・凶・悪・魔
祟と慍は名前に使えない漢字です。それ以外は、漢字としては使えますが、避けた方が良い、または組み合わせる漢字に気をつけるべき漢字です。
家族と同じ名前
漢字には何の問題がなくても、親・兄弟・姉妹と同じ名前はつけられません。漢字がそっくりそのまま同じであるとか、読み方が同じであるという名前は避けるようにしましょう。
名前に使えない漢字かどうか調べる方法
最後に、実際に子供に名前を付ける際に、考えた漢字が名前に使える漢字かどうかを調べるための方法について、ご紹介します。出生届を受理してもらえず慌てるなどということがないよう、事前によく調べた上で命名するようにしましょう。
名前に使える文字を把握する
まずは、名前に使える文字を正しく把握しておくことが大切です。そのためには、常用漢字表と人名用漢字表(戸籍法施行規則別表第二)を確認します。これらは、法務省のホームページに「子の名に使える漢字」として掲載されています。
なお、同じく法務省のホームページに戸籍統一文字情報を検索できるページがあります。「読み」と共に、検索条件として「常用漢字」と「人名用漢字」も指定して検索することで、名前に使える漢字を検索することができます。
命名支援サイトを利用して最終確認を行う
インターネット上には、命名支援サイトがたくさん存在しています。それらのサイトでは、名前に使えるか使えないかだけではなく、使えるけれども避けた方が良い漢字かどうかまで判定してくれます。
名前の候補を絞り込んだら、最後にこういったサイトを利用して最終確認することをおすすめします。
後悔しない名前を付けるために
名前は、その子にとって一生涯付き合っていくものです。どんなに音の響きが良くても、あまり好ましくない意味のある漢字は使いたくありません。後から分かっても、名前は簡単に変更できるものではありません。命名する前に、十分に検討することが大切です。
今回ご紹介した内容を参考にして、ご両親も、そして名付けられたお子さまご本人も後悔しない、素敵な名前をつけて頂けたら幸いです。漢字は、音だけではなく漢字そのもに意味のある文字が多いので、よく検討して素敵な名前をみつけてください。