方言「やけん」の意味は?地域別の使い方|九州/広島/愛媛
語尾に付けると可愛いと人気の「やけん」という方言。九州の福岡や大分、四国の愛媛などで使われています。今回は、方言「やけん」の地域別の意味や使い方についてご紹介していきます。また、「やけん」とよく似た広島で有名な方言「じゃけん」についても触れていきます。
目次
語尾につけると可愛い方言「やけん」を使う地域は?
方言を使う女子が可愛いと人気です。例えば告白シーンでも、ただ「好きです」と言われるのでなく、「好きやねん」「好きっちゃ」など方言で言われたらと想像してみてください。どことなく親しみやすく、より可愛らしい印象を持つはずです。
方言の中でも、今回ご紹介するのは「やけん」です。よく語尾に付けて「〜やけん」と使われているのを、メディアなどでも耳にしたことがあるでしょう。
メジャーな可愛い方言である「やけん」ですが、使われている地域は主に九州、四国地方です。その中でも、地域によっては使われていなかったり、別の表現がされていたりと、様々あります。今回は九州の福岡・大分・長崎、四国の愛媛・香川での「やけん」をご紹介していきます。また、主に広島で使われる似た方言「じゃけん」にも触れていきます。
方言「やけん」の意味と由来
日本の方言としてはメジャーな「やけん」ですが、はっきりとした意味はご存知でしょうか。九州や四国で使われる「やけん」の意味、そして由来をご紹介します。
方言「やけん」の意味
「やけん」の主な意味は、「だから」です。主に語尾や文頭に付け「〜だから」という理由や原因を表す助詞として使います。
また、語尾に付けて「〜です」「〜だ」といった意味の使い方をされる地域もあります。多くの場合は、「〜だから」というニュアンスを含むことになります。つまり「まだ朝5時やけん」と言うと、「まだ朝5時です」という意味に「まだ朝5時だから(早い)」というニュアンスを含むのです。
疑問形で「やけん?」という使い方をすることもできます。このときは「だから?」「どういうこと?」という意味になります。
方言「やけん」の由来
実は「やけん」のはっきりとした由来は分かっていません。「やけん」がよく使われているのは、主に九州、四国地方ですので、その一帯が由来となっていると思われます。
方言「けん」と「やけん」の違い
「やけん」の各地域での意味をご紹介する前に、方言「けん」についてご紹介しましょう。「けん」は「やけん」を話す地域、主に九州や四国では同様に使われます。意味は「〜から」という接続助詞で、語尾に付けて「〜ます」となり、「やけん」とほぼ同じような意味を持ちます。例文で違いを見てみましょう。
けん | 早く起きるけん | 早く起きるから |
やけん | 早起きやけん | 早起きだから |
違いがお分かりいただけたでしょうか。「けん」の前に付くのは、動詞や形容詞で、「やけん」の前に付くのは、名詞などです。これは、使っていれば感覚として自然と理解できるでしょう。「やけん」と同様「けん」も覚えて、使ってみてください。
方言「やけん」の福岡での意味と使い方
九州・福岡の方言と言えば、可愛いと有名なのが博多弁です。メディアでも取り上げられやすい、可愛らしい方言です。しかし福岡にはそれだけではなく、多くの種類の方言があります。
福岡県の方言は、3つの地域によって種類が分けられています。北九州市を中心とした東部方言、福岡市が中心の西部方言、久留米や柳川などが中心の南部方言の3つです。
博多弁は、西部方言に入ります。実は博多弁が話されるのは、福岡市周辺だけとごく一部なのです。同じ福岡県内でも、各地域により特徴的な方言が話されています。
福岡での方言「やけん」の意味
「やけん」は福岡で広く使われる方言ですが、東部方言では最後の「ん」が抜け「やけ」という使い方をすることが多いです。今回は、福岡の中でもメジャーな博多弁の「やけん」をご紹介します。
やけん | ~だから、~なので |
やけん | ~です |
文頭や語尾に付け、理由や原因を表す助詞として使います。「〜です」という意味もありますが、「〜だから」というニュアンスが含まれます。
福岡での方言「やけん」の使い方《例文紹介》
明日5時出発やけん、ばり早起きするばい | 明日5時出発だから、すごく早起きします |
あなたを好いとうよ、ばり素敵やけん | あなたを好きよ、とても素敵だから |
1つ目の例文の「やけん」は「〜だから」という意味で使っています。博多弁で有名な「ばい」は、語尾に付けるだけでまさに博多っぽさが滲み出る代表格の方言です。「ばり」は、とても、すごくという意味です。ラーメンで「ばりかた」と言ったりもするので、馴染みがあるでしょう。
2つ目の例文は告白の言葉です。告白シーンで有名な博多弁「好いとうよ」が可愛らしいです。「好きやけん」も可愛いですが、博多弁ならではのこちらの方言もグッときます。
方言「やけん」の大分での意味と使い方
ちょっぴり乱暴でキツイ印象があるけれど、実は可愛いと有名なのが九州・大分の方言です。語尾に「ちゃ」「ちゅ」「ちょ」などを付けるのが有名です。大分で話される方言は、そのまま大分弁と言います。
大分県は九州地方ですが、アクセントは中国地方や四国地方と同じく「外輪東京式アクセント」のため、標準語に割と近く、東京でも馴染みやすいものです。
一括りに大分弁と言っても、地方によって言葉がかなり違います。地域によって東北海岸方言、南部海岸方言、西部方言、北部方言、南部方言と5つの種類に分けられていますが、その中でも日田や中津で使われる西部方言は、独特で特徴的なものとして扱われています。
大分での方言「やけん」の意味
「やけん」は大分全域で使われます。もともとは「じゃけん」という言葉が使われていましたが、徐々に「やけん」が広まり浸透したと言われています。
やけん | 〜だから、〜なので |
やけん | 〜です(断定) |
「やけん」の使い方は、ほぼ福岡と同じです。語尾や文頭に付け「〜だから」という意味で使います。また、大分では「〜です」と言い切る断定表現という使い方もします。
大分での方言「やけん」の使い方《例文紹介》
明日は5時出発やけん、しんけん早起きするっちゃ | 明日は5時出発だから、すごく早起きします |
あなたのこと、しんけん好きやけん | あなたのことがすごく好きです |
大分弁の可愛らしさと言えば、やはり語尾に「ちゃ」「ちゅ」「ちょ」が付くことでしょう。一般的に男らしい乱暴なイメージのある大分弁ですが、語尾を可愛らしくするだけで、グッとイメージがアップします。
例文2つ目は、告白の言葉です。「しんけん」はすごく、という意味の方言で、断定の意味の「やけん」と合わせることで、一途さや誠実さを表す言葉になっています。
また、「好きです」を「好きやに」というのもメジャーな表現です。
方言「やけん」の長崎での意味と使い方
九州・長崎には、地域によって数多くの方言が存在します。「長崎弁」の他に大村弁、諫早弁、島原弁、佐世保弁、五島弁、壱岐弁などたくさんです。このうち五島、壱岐などの地域の方言は、他の地域とは少しイントネーションが異なり、これらの地域以外の方言をまとめて長崎弁と呼んでいます。
一般的な長崎弁は、ほんわかしていて可愛らしいと言われています。スピードがゆっくりで、のんびりした話し方をするからでしょう。有名な方言のやりとりに「とっとっと?(その席とってるの?)」「とっとっと(とってるよ)」というものがあります。なんだか聞いているだけでほっこりしてしまいます。
長崎での方言「やけん」の意味
「やけん」は長崎で広く使われますが、一部では「じゃけん」「やけんが」なども使われます。今回は一般的な長崎弁の「やけん」をご紹介します。
やけん | 〜だから、〜なので |
使い方としては他の地域とほぼ同じで、原因や理由を表す助詞として使います。
長崎での方言「やけん」の使い方《例文紹介》
明日5時出発やけん、早起きするばい | 明日5時出発だから、早起きします |
やけん、あなたのこと好いとっとって | だから、あなたのことが好きなんだってば |
長崎弁では、語尾に「ばい」を付けることがあります。事実や気持ちを表すときに使いますが、ニュアンスとしては強い意志を柔らかく伝えるときに使います。似ている長崎弁「~たい」は、もっと強く相手を説得するようなニュアンスを持っています。
2つ目の例文は、可愛い長崎弁での告白の言葉です。「好きばい」という言い方もできますが、「好いとっと」という方言でさらに可愛らしいイメージになりました。
方言「やけん」の愛媛での意味と使い方
四国・愛媛の方言は、3つの地方に分かれています。松山市を中心とした地域の中予、八幡浜市や宇和島市中心の南予、西条市や四国中央市中心の東予です。
愛媛の代表的な方言として知られる伊予弁は、中予・南予で話されています。イントネーションが関西弁と似ているため、関西弁と間違えられることも多いです。
これら3つの方言は、特徴が全く異なります。例えば南予の方言はのんびりゆっくりと聞こえるのに対し、東与は強めに聞こえます。確かに伊予弁は、南与の特徴と同じく、のんびりとした可愛らしいイメージがあるでしょう。同じ愛媛県内でも、聞き取りにくく馴染みにくいほどの違いがあるのです。
愛媛での方言「やけん」の意味
「やけん」は愛媛全域で使われる代表的な方言です。ただし、愛媛中心部あたりでは「じゃけん」が使われることもあります。今回は、愛媛のメジャーな方言、伊予弁の「やけん」をご紹介します。
やけん | 〜だから、〜なので |
やけん | 〜です(強調) |
愛媛での「やけん」の使い方は、福岡とほぼ同じです。理由や原因を表す「〜だから」という意味で使います。また、語尾に付けて強調を表す使い方もあります。
愛媛での方言「やけん」の使い方《例文紹介》
明日は5時出発やけん、早起きするんよ | 明日は5時出発だから、早起きします |
めっちゃ好きやけん、付き合ってくれん? | とても好きです、付き合ってくれませんか? |
伊予弁は、のんびり女の子らしいイントネーションが可愛いと人気の方言です。特に語尾に特徴があり、標準語に語尾だけ伊予弁を付けても、とても可愛いんです。1つ目の例文の語尾「〜んよ」は、可愛い語尾の代表格です。
2つ目の例文は、伊予弁の可愛い告白の言葉です。「付き合ってくれん?」と、少しカジュアルで柔らかな感じが可愛いです。ここでの「やけん」は「〜だから」という意味と共に、強調の意味も持っています。
伊予弁の特徴的な語尾としては、もう一つ「〜わい」というのもあります。
方言「やけん」の香川での意味と使い方
四国・香川の方言は、讃岐弁と言います。讃岐弁は2つの地域に分けられます。高松市やさぬき市など東部の東讃弁と、丸亀市や観音寺市など西部の西讃弁です。東西の中間にあたる坂出市などの中讃地域では、それらの中間の方言が使われています。
香川県は日本で一番小さい県というだけあって、2つの方言は語彙に独自性はあるものの、大きな違いはありません。大きな違いは語尾で、例えば東讃弁は語尾に「の」、西讃弁は語尾に「な」を付けるのが一般的です。
ちなみに小豆島では、独特の小豆島弁を話します。
香川での方言「やけん」の意味
「やけん」は香川県全域で使われますが、小豆島弁では話されません。また、西讃弁では「やけに」と言ったり、東讃弁では「やきん」と言ったりする場合もあります。今回は一般的な讃岐弁の「やけん」をご紹介します。
やけん | ~だから、~なので |
福岡での使い方とほぼ同じで、文頭や語尾に付け、理由や原因を表す助詞となります。
香川での方言「やけん」の使い方《例文紹介》
明日5時起きやけん、ほんまえらいわ | 明日は5時起きだから、ほんとにしんどいわ |
あなたのことが好きやけん、付き合うてください | あなたのことが好きだから、付き合ってください |
「えらい」とは、讃岐弁で疲れる、しんどいという意味です。香川の人に「えらい」と言われた場合は、勘違いしてしまわないよう注意です。そんな讃岐弁ですが、若い人を中心に徐々に消えつつあり、標準語が浸透してきているとのことです。
方言「やけん」と似ている「じゃけん」の使い方~広島編~
「やけん」とよく似ている言葉に「じゃけん」があります。「じゃけん」は主に中国四国地方で使われています。前述した福岡や大分など、一部の九州地方でも使われているのですが、今や圧倒的に「やけん」が広まるようになったとされています。
「じゃけん」は今、特に中国・広島を中心に使われています。広島弁と言えば「じゃけん」、と連想する人も多いでしょう。広島では、「じゃけん」と同様「じゃけえ」もよく使われます。映画や広島出身の芸能人などの影響で、「じゃけん」「じゃけえ」は広島、というイメージが広まっています。
広島での「じゃけん」の意味は「やけん」と同じで「〜だから」という接続助詞として使われます。次の例文のように、語尾に「〜けん」をセットで付ける使い方が多いです。
明日は5時起きじゃけん、早よ寝ないけん | 明日は5時起きだから、早く寝なきゃいけない |
方言「やけん」と似ている「じゃけん」の使い方~島根編~
広島のお隣・島根でも、広島と同じく「じゃけん」が使われています。
島根の方言は、地域によって出雲弁、石見弁、隠岐方言の3つの種類に分けられます。この中でも出雲弁は、東北のズーズー弁に似ているため、キツめの東北訛りのように聞こえます。ズーズー弁(のような方言)が話されるのは、西日本ではこの出雲地域だけなのですが、由来は不明とのことです。不思議なものです。
島根での「じゃけん」の使い方は、「やけん」と同様「〜だから」という接続助詞で使われます。また、広島と同様、「じゃけん」と共に「じゃけえ」もよく使われる方言です。
明日は5時起きじゃけん、ちょっこししわいわ | 明日は5時起きだから、ちょっとしんどいわ |
可愛い方言「やけん」を使ってみよう
今、方言はメディアでも可愛いと取り上げられ、注目を集めています。ひと昔前までは、方言をかっこ悪いと感じ、方言を隠して標準語にしようとする若者がたくさんいたものです。けれど、今は違います。むしろ標準語の人が方言に憧れを感じ、真似するような時代になりました。
日本のいろいろな地域に行ったら、ぜひその土地の方言に触れてみましょう。そして、可愛い方言を積極的に使ってみてはいかがでしょうか。